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ボロブドゥールの夜明け
世界三代仏教遺跡というものがありまして、誰が決めたかわからないけど、ミャンマーのバガンとカンボジアのアンコールワット、そしてこのインドネシアのボロブドゥールがそれに当たるそうです。
初めの二つは過去に行った事があったので、残りの一つを見に行こうと思いたったのが、2ヶ月前。
ANAマイルのローシーズンに狙いを定めたら、去る2023年5月の後半となりました。
自分の事。
35歳、既婚、娘2人。
ワンオペを引き受け、旦那を海外に解き放ってくれる寛大な神様こと、奥様に感謝。
ボロブドゥール遺跡のあるジョグジャカルタという街までは日本からの直行便はなく、羽田からジャカルタまで7時間、ジャカルタから国内線に乗って1時間と乗り継いで行かなくてはいけません。
遺跡はジョグジャカルタの中心部から車で1時間程。ちなみに呼称。現地ではジョグジャで通用するそうな。
じょぐじゃ、言い慣れないし、聞き慣れない。
世界には濁点と小さなヤ行だけの都市名って他にもあるんでしょうけど、なんかこの音の並びは最後まで慣れませんでした。
今回は目当ての遺跡まで空港からタクシーで直接向かいました。
運転手さんは、よく日に焼けた30代の男性。
「英語がうまくなくてごめんなさい。」
とこちらに侘びながら、どうにかコミュニケーションを取ろうとしてくれる心優しい方でした。
「いいえ、こちらの英語もへっぽこです。」
ガイドブックによると、ボロブドゥールの周辺にはホテルが点在していて、どれかに宿を取って、日中に探索したり、朝日と共に遺跡を眺めるツアーに参加するのが定番とのこと。
今回はたくさんあるホテルの中でも、唯一遺跡の敷地内にあるマノハラリゾートというホテルに滞在しました。
「何があっても無事で帰ってきなさい」
という家族の言葉を胸に、
今回の旅のテーマを
「食費、宿泊費はケチらない。お土産費はケチる。」
に定めておりましたので、真ん中より少しよい位のホテルを取ったのでした。
ホテルにチェックインした後すぐに、翌朝の朝日のツアーの予約をして、遺跡に向かいたいと継げると、ゴルフのカートみたいな乗り物でおじさんスタッフが迎えにきてくれました。
1.2分で到着し、入り口で入場の手続きをして、遺跡へ。
時刻は正午すぎ。気温は30度を越えていて、ホテルの部屋に置いてあった水のペットボトル2本を御守り替わりに奥へと進みます。
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メインの通りに出て、遠目にボロブドゥールが見えた時はその存在感に圧倒されました。
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4つの回廊からなるボロブドゥール遺跡。
頂上への道は急な石段のみ。
へとへとになっている欧米のおばさま、走り回っている現地の学生(恐らく遠足?)とすれ違ったりしながら頂上へと上がります。
ふーっと一息。
頂上からは見晴らしがよく、仏塔に囲まれながらジャワ島の森林を見渡す事ができました。
所々から、料理をしているのか、煙が細く上がっているところがあり、あんな山奥にも人が住んでいるのかと、少し驚きました。
遠目には山道なんて見当たらなかったので。
一通り見終わってから翌朝に備え、早めに就寝。
翌朝、4時に起き、ホテルのロビーへ。
最近は団体でのツアーは行っていないらしく、まだ朝の暗い中、ホテルの玄関には自分と、ヘルメットを2個手にしたホテルのスタッフのみ。
人数の少なさに面食らっていると、ヘルメットを渡され、バイクの後ろに乗れとのこと。
「これはプライベートツアーさ。しっかりつかまって。」
と言われ、少々驚きながらもバイクの後ろに飛び乗りました。バイクの二人乗りって何年振りだろうかと思いながら、スタッフの方の腰を掴みました。
朝日に当たるボロブドゥール遺跡が見える、ストゥンブの丘というところまでは、バイクで20分ほど。安全運転でお願いしますとは伝えたものの、カーブでもあまり減速しないコーナリングには、早く仕事を終わらせたい二度寝根性を感じました。
亜熱帯といえど、朝は少し冷え込み、バイクに当たる風が冷たかったのを覚えています。
ストゥンブの丘の麓から頂上までは徒歩で10分程。暗い坂道を登っていると、遠くから聞こえてくるのは、イスラム教のお祈りの声。
それもそのはず人口の90%近くがムスリムのインドネシア。
日中にもこのお祈りの声は拡声器を通して聞こえてきます。
宗教の違いが醸し出す異国情緒は、思いの外大きいのかもしれません。
仏教徒が多い国が溢れるアジア周辺において、インドネシアは近場で異国を感じるにはもってこいなのかなと思います。
さて、まだ暗い中頂上に到着し、ひたすら朝日が登ってくるのを待ちます。
5時半頃にはオレンジから紫のグラデーションが綺麗に浮かび上がってきます。
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6時頃には、はっきりと球体の太陽がのぼってくるのが見え、靄がかかったジャワ島の森林地帯を照らし始めました。
遠目に見えるボロブドゥール遺跡。
9世紀に建てられ、その後1000年もの間発見されず森の中で眠っていたとされています。
1000年間人知れずこの朝焼けに照らされて、在りし日の王朝の隆盛を示していたのかと思うと、時の流れの普遍性を感じずにはいられません。
孤独だっただろうな、ボロブドゥールさん。
寂しかっただろうな、ボロブドゥールさん。
あ、百年の孤独っていう焼酎があったなーとぼんやり考えていると、朝食の煙が方々から立ち上がり始めました。人々の生活が今日もまた始まります。
この後、首都ジャカルタに戻り2日間を観光して過ごし、家族の待つ東京へと戻りました。
遺跡に何を感じるのか、遺跡に行って写真を撮って何になるのか、お金と時間をかけて、家族に迷惑をかけてまで何の為に行くのか。
きっと答えは人それぞれだと思うのですが、個人的には、日常を彩る何かを分けてもらう為かなと思っています。
インドネシアと東京の時差は2時間。
東京で出勤する8時ごろボロブドゥールには朝日が当たります。
インドネシアから帰ってきてからは、少しの懐かしさとあの朝日の風景を思い出しながら、通勤の電車から街へと飲み込まれていく自分がいます。
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