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【第3回】小説を創る 「ネームプロット」

自由記述


「いいかい? これと、これで「た」」
「た?」
「そう。それで……、これと、これと、これで……」
「ふうん」
「いいかい。これはね、秘密のクエストだよ」
「くえすと?」
「そう、パパと君だけしか知らない、秘密の冒険」
「冒険!」

「どうしてこんなことするの?」
「そうだなあ。パパの願いを叶えるためかな」
「パパの? わたしは?」
「パパが、君とする約束を守るためなんだ」
「約束?」
「そう、今はまだ言えないけどね……」



「君に好きな人ができたら、こうやって手を繋ぐんだよ」
「こう?」
「そうだよ」


「あなたの言っていることは、分かる」

「もう止めなさい」
「どうして、お母さんは、お父さんのこと知りたくないの?」
「止めなさい」
「どうして……」
「止めなさいって言ってるでしょう!」


 5がつ27日
 きょうは、パパとカレーくえすとをしました。
 カレーをつくってママにたべてもらうためです。
 パパとざいりょうをかいにいきました。
 パパは、わたしのリュックにはいって、ひつようなものをおしえてくれました。
 いえにかえりました。
 おこめをあらいました。
 おにくに、しおとコショウをかけました。
 やさいをきりました。
 いろいろしました。
 なべをかきまぜました。
 そのとき、「おいしくなあれ」というと、おいしくなるとパパがおしえてくれたので、「おいしくなあれ」といいました。おわり


 7月18日
 きょうは、パパとゆうえんちくえすとをしました。
 このあいだの、ひみつのくえすとをじょうずにできたので、ごほうびです。


「いいかい! 約束する!」
「嫌だあ! 行っちゃ嫌だあ!」
「大丈夫だ! パパは必ず戻ってくる!」
「うわあぁ! ひっく……、なんで行っちゃうの……」
「……!」


「パパとカレーを作ろうか?」
「カレーくえすとだね」
「クエスト?」
「ゲームに出てくるの。冒険するの」
「そうか……、うんいいね! じゃあ、パパとカレークエストだ!」
「カレーくえすといえぃ!」

「カレーが美味しくなる歌を作ります」
「うん」
「おまえが作るんだよ」
「えぇ、むずかしいよ」
「大丈夫、パパが手伝ってあげる。大切なのは、おまえが自分で考えた言葉で作ることなんだ」
「そんなんだ」
「じゃあ、早速、「た」ではじまる食べ物、なあんだ?」
「……たまご!」
「いいね!」
「じぁ、その後にランランランとか、リズムをつけてご覧」
「うーん、たまごさん、えっさっさ、とか?」
「いいね! おまえは最高だ」

「じゃあ、最後に、「え」で始まるおまじない、なぁんだ? 気合の入ったやつ頼むよ」
「……! えい! おいしくなあれ!」
「完璧だ!」
「えへへ……」


「おいっす……」
「おはよー」
「なに、おまえまた「クエスト」やってんの」
「うっさいな……」
「ん? なになに、今日は秘密のクエストです……、猫岩に登って……、指でなぞります……。ああ、これうちの神社だわ」
「なに?」
「いやだから、猫岩ってうちのご神体だもん」
「はぁ? 月読命でしょ、あんたのところ」
「いやいや、ご存知でない? これは神社あるあるなんだって」
「どういうこと?」
「神社に複数のご神体があるなんて珍しくないの。あの出雲大社だって、メジャーな大国主命を祀っている体だけど、本当は別の神様を祀るために、建てられたからな」
「嘘でしょ……」

「ちょっとあんた! その猫岩ってやつ見せなさいよ!」
「分かったから落ち着けって……。今度さぁ、日蝕があるじゃん」
「ん、なんか聞いたことがある」
「その日、うちの神社で「月渡祭り」をやるんだけど、その時、猫岩を公開するしきたりなんだ。だから……」
「見れるの!」
「だから落ち着けって……。聞いて驚くなよ、お触りもありだぜ」
「マジか……」

「もっと早くいいなさいよ」
「いや、俺はてっきり知ってるもんだと……、ほれ」


*以降、記事を改めずに、本記事を順次、更新予定。


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