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卵 軽くないですか

卵 軽くないですか

「加藤さん、おはようございます」
「店長 おはようございます」
「加藤さん、先日、お客様から、最近、卵軽くなっていませんかと意見をいただいたんだけど」
 加藤さんは、仕入れ先の品質管理も行っていたので、卵などにも詳しかったのです。
 卵は、殻付きの重量で区分され、Lサイズの卵は正味(殻なし)約60g、殻つきのままでは64g〜70g未満です。Mサイズの卵は正味 約50g、殻つきでは58g〜64g未満です。サイズは、LL、L、M、MS、S、SSに区分され、6g刻みで区分されています。
 夏になり、外気温が上がってくると、鶏も水ばかり飲み、餌を食べなくなってしまいます。
 そうすると、産卵する卵の重量が軽くなってしまうのです。
 例えば、M玉が、58g~64gとすると、10個入りのパックの時に、すべての卵が58gだと、580gになり、すべて64gだと640gになり、60gの差がでてしまうのです。
 お菓子などを作るときに、卵を割って重量を量ると、夏の卵は軽いと感じてしまうのです。
 しかも、卵の重量を量るのは、パックするときに計るので、卵を保管している間に、中身が蒸発し、軽くなってしまうこともあるのです。
 加藤さんが経験したパック工場では、夏にM玉の特売の注文が入った時に、鶏が産む卵の重量が軽くなってしまい、どうしても特売の数量がそろわなかった時に、M玉の下限を58gでは無く、57gに設定し、選別ラインを稼働していた工場があったのです。
 なぜ、加藤さんが気がついたかと言うと、ヨコシマスーパーでは、ヨコシマスーパーとの納品の約束を守らない行為に気がつき、上司に話しても、内容が改まらないときには、連絡していいとする、コールセンターを定めていたのです。
 仕入れ先の工場の掲示板、休憩室のピンク電話の所などに、コールセンターの電話番号と、メールアドレスを掲示していたのです。
 毎年行う、仕入れ先の集会の時にも、毎年、連絡先のシールを配布し、工場監査の時には、シールが貼ってあるかを確認していたのです。
 ある夏に、「M玉の下限重量を57gにしている」との通報があったのです。
 加藤さんは、納品されたパックの重量を量り、56gの物もあったのですが、パックされた後の重量が軽いと、製造責任者に伝えても、「約束は、パックする前に計った重量です」とか。「計量法である程度は誤差が認められている」とか、反論される事が予想されていたので、製造工程を確認する事にしたのです。
 ヨコシマスーパーでは、納品先に、商品を製造するときの記録を事前に約束した項目を付けるようにしていたのです。更に、工場に監査に行くときは、抜き打ちで行く事も契約書に記載していたのです。
 加藤さんの品質管理のチームは、売り場を管理するチームと、仕入れ先の工場管理を監査するチームに分かれていたのですが、加藤さんは、もともと、食品工場の経験があったので、コールセンターに情報が上がって来た場合は、加藤さんが、工場に行くことが多かったのです。
 加藤さんは、工場が8時から稼働する工場であれば、一時間前には、行くようにしていたのです。朝一番の工場を見ることで、いろいろな管理状況を掴む事が出来たのです。
 まず、工場に入り、作業着を手配してもらいます。朝一番に行っても、管理の方がいるはずなので、「作業着を準備してもらえますか」と言って、作業着に着替え、現場の確認をします。
 今回は、卵の洗卵選別器の設定を確認するだけなので、現場の方に、洗卵選別器の設定のパネルを見せてもらい、写真を撮るだけで、現場の確認は終了したのです。
 ヨコシマスーパーとパック工場の間では、何時産卵した卵を使用した、パックした卵の重量の分布図の保管を約束していたので、事務所で、過去、一ヶ月の帳票を準備してもらったのです。
 コールセンターに連絡が来る工場は、大体、責任者は、定時の8時ぴったりにくる物です。
 加藤さんが、7時に訪問した時点で、連絡が行ったようですが、責任者は、速くくることは無かったのです。
 洗卵選別器の設定は、今朝の時点でも57gになっていました。
 過去、一ヶ月の帳票もすべて、57gになっていました。
 責任者に、写真と、帳票を見せると、「バイヤーから数量を揃えるように言われたから」と定番のいいわけをしたのです。
 卵の表示には、鶏卵規格取引要綱に基づく卵重計量責任者の名前を記載することが求められています。この工場の責任者の名前は、まさに、工場責任者だったのです。
 加藤さんは、事実だけを確認し、報告書をまとめ提出しました。もちろん、コメントには、今後の取引は出来ない旨を記載したのです。
 卵は、10個入ってすべてをM玉、L玉に揃える商品は、夏場には、数量を揃える事が難しくなります。
 卵10個で560g~580g と言った表示にすることで、無理なく、数量を揃える事が出来るのです。
 責任者自ら、約束を守らな工場は、納品先として、信頼出来ないと言うことで、この卵工場との契約は無くなったのです。

あくまでも仮定のお話です。

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