【小説】豊と正の、珍道中9

ー悪夢ー

豊は悪夢を見た、最初はいい夢だった。お花畑を歩いていた。いい香りがして、気分良くなってきた。それは昔テレビでやっていた、臨死体験みたいだった。急に恐怖にかられた。半ばあきらめて
「オレ死んじまうのか…ろくな人生じゃなかったな…べつにいっか…」
そう言うと咲いている花が空中に浮かんでいった。そして花が鼻に変わった。
「何これ!」
そう思うと、鼻は鼻水をたらしはじめた、その量もどんどん増えて鼻水の大雨になった。
「うぇ!きたねー!オレは怠け者だから地獄に行くのか!」
そう言うと目が覚めた。
「旅の疲れで悪夢でも見たのか…」
また悪夢を見るのが怖くなったが、眠くてまた寝た。また夢を見た。小学生に戻っていて、産婦人科にいた。看護師さんが
「もうすぐ赤ちゃん生まれるよー!」
と言っていた。
「そうかオレにも、ついに弟か妹が生まれるんだ!」
そう思っていたら、看護師さんが
「豊くーん!おじいさんが、生まれたよ!」
「えー!」
と豊は叫び、顔が爺さんで体が赤ん坊の爺さんが生まれた。
「バカな…そんなバカな…」
そうつぶやき、看護師さんが
「亡くなったお爺さんの魂が、お母さんのお腹のなかに宿っちゃったみたいだね…」
と言ったところで目が覚めて朝になっていた。
「夢か…ろくな夢を見ないな…」
そうつぶやき、正を起こして朝食を食べた。

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