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マティス展に行ったのですが・・・

5月27日まで国立新美術館で開かれているマティス<自由なフォルム>展。

黒川紀章氏によるこの建物自体、1日ゆったりとこの中で過ごしたいと思える魅力的な建築物です。でも結局、いつも(と言っても数回の来館ですが)数時間展示を観て帰るということになってしまう。今回も2時間ほどをあてて出かけました。

高い吹き抜けの建物に入り、お目当ての2階企画展示室<マティス展>へ向かう途中通り過ぎようとした別の展示室。二つの展示室を大きく使い<春陽展>というのをやっていました。出入口からちらっと見えた大きな絵画たちに「ん?」と立ち止まり、「むむ?」「なんか素敵」と、私は後戻りし予定外にその<春陽展>に吸い込まれて行きました。

入った瞬間、目の前の絵画にくぎ付けになりました。

畠山昌子作「on the planet 2024-1」(ミクストメディア)

縦194×横2101のビッグな作品。「おおーっ・・」としばし佇み、木漏れ日を浴びている心地に。この優しい眩しさ、透明感、臨場感、そして心地よさ・・・「凄い、これ『絵』?」と、近づいたり離れたり、またぐっと近づいてジーっと見てみたり。そのまま、たたたたっと奥のスペースに引き込まれ、ただただ「おーっ」「わーっ」と心の中で感嘆の声を上げながら、まるで花から花へと飛ぶチョウチョ、いえミツバチのごとく飛び回っている私でした。こうした美術品における詳細は、私には上手く言葉に出来ないのでホントに「おーっ」とか「うわーっ」とかしかコメントできず。でも、こんな心持になった展覧会はもう何年も前に上野で開催された東山魁夷展以来です。あの時も私の心は「お~っ」と作品から作品へ飛び回り、「凄ーい、欲しい!」って思ったものでした。

全てが大型の作品で、当たり前ですが作家によって全く異なる画と技法、そしてどれもこれも素晴らしいのです。

藤田多門作「実り101」(油彩)

この作品はF130号(1940×1620mmくらい)。一目観たとき「レリーフ?」と思ったほどの立体感。夕方の明るさに似た眩しい背景にブドウや葉っぱが浮き出ているんです。「ん?」と近づくと油彩だったのでまたびっくり。完全に2次元なのかぁ。なんでこんな風に見えるんだろう・・・?ここでも離れたり近づいたり。なんとまぁ・・・。
私は全く絵を描かないし、油絵具も触ったことがないのですが、素人考えでぽってりとした濃厚な油絵具でこんな透明感や光が描けるの?とまたまた感嘆。


加藤助八作「北の春」(油彩)
少しアップに

こちらはS60号(1303×1303mmくらい)。タイトルと画から馬の出産期を迎えた北海道、と想像し見つめていました。実はこの絵、途中に設置されたポストカード売り場で先に見て、「この絵はどこ?」と探したものです。カードから連想し、実物を観たときに想像を超える<光感>というのか<透明感>というのか、光で描かれたリアル、というのか、やはり心は感嘆の声をあげました。「欲しい!」


坂田和之作「大地の景」(油彩)

117×187mmの作品。シンプルな構図ですが実物を観ると上半分の黄昏(私は黄昏と解釈した)の空の色や下半分の大地の深い緑がスゴイ。やはり<光>を感じました。

本当に「いい!」という絵画がいっぱいで、広い展示ブースを私は一人、鼻息荒く飛び回り、今になってちょっと冷静に考えると「もうちょっと優雅に鑑賞してもいいんじゃない?」と少々反省も。

もっともっと長い時間、沢山の絵画たちと向き合っていたかったのですが、時間も押していたし、折角来て<マティス>を観ないわけにもいかず、留まりたい気持ち半ばで切り上げ<春陽展>を後にしました。


近頃、美術館でも撮影が許されているんですね。ありがたい。
ついでに、失礼を重々承知で、ポストカードを何枚か購入しましたが、それよりも私が撮った画の方がまだ光感(というのか?)、透明感、実物感がある気がして。家族に説明するのにも、最初は「これがね」と言いながらカードを見せるのですが、「いや、これよりも私が撮った方がもっと近い」とわざわざデジカメの画面を見せたりして。カードは、それはそれは綺麗な印刷で、出来るだけ忠実に表現しようとしているのでしょうが、どうも<ベタ感>があって違和感が。いずれにしても、実物を目の前にしたときの感触には程遠いものに。

過去の芸術を維持していくことの重要さと同様、現在、同じ時代に生きる表現者たちの芸術性をも見つめて行くことが大切だと実感した次第です。同時代だからこその共感も覚えますし。加えて言えば、時代を越えて遺る芸術は作者のみならずその時代、その表現を受け入れたリアルタイム・オーディエンスの心情や諸々を投影しているので、それら全てを含めて<偉大なる表現・芸術>となると思います。つまり、誠におこがましいですが、現存の作家の作品と共存し、遭遇して「いい!」と感動する我々も作品の一端になるんじゃないかと考えるわけです。

住空間と経済的な余裕を持ち合わせていたなら「これください」「これもください」と言って買い付けているところです。季節や気分に合わせて絵を掛け替え、日常で見つめて行かれたらどんなに素敵で豊かでしょう。

この感動をまだ湯気冷めやらぬホットなうちに言いたくて、ここに書きました。

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最後に、魂の入った、一筆一筆描かれた作品と作者に対し、素人の私が安易に撮影した画像アップの失礼をお許し頂きたいと思います。




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