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しんしんと ふるやしばれる しばられる

 雪が降る音を「しんしん……」と表現しますが、実際には無音だと思っている人が多いと思います。
 でも、雪降る音があるのを雪国の人間は知っています。
ぼた雪、粉雪、綿雪、細雪、凍(氷)雪……降る雪の形状や状態によって、音も違います。
 ぼた雪や綿雪なんかだと「もさもさ……」に近く、粉雪や細雪なんて細かい粒だと「しんしん……」に近い感じです。「みしみし……」という感じの音は水分が多く、なおかつ硬さもある締まった雪です。
 ただ、これは私個人の「音」の感じ方であって、他の人はまた違った音の感じ方があるかもしれません。
 雪降る音は、禅問答のようでようですが、音であって音でない。超音波でもないけれど、それに近い音でもあるかもしれません。人間の聴覚ではとらえれない音をとらえる生き物が人の言葉に当てはめて、雪降る音を表現したら全然違う表現をするかもしれません。

 温暖化が騒がれるより前、随分と昔にどこかで読んだのですが、北極圏の近くに住むある民族には、雪の状態に関して数十もの言葉があるということです。いや、「あった」ということです。自然に密着した暮らしをしてきたその民族も、次第に近現代の町化した暮らしをするようになってきて、使われなくなっていた雪に関する固有の言葉が増えてきて、失なわれた言葉があるそうです。
 温暖化が進んだ今では、きっと更に多くの雪に関する言葉が消えてしまっているように思います。

 この記事のタイトルをオールひらがなで書いていますが、読んだ人がそれぞれのイメージで感じを連想してくれればいいなと思っています。
例えば
「しんしん」を「深々」
「ふるや」を「降るや」、「降る夜」または「古家ふるや
「しばれる」は「凍れる」
「しばられる」を「縛られる」

 本日から明日、明後日と日本列島は大寒波に見舞われて、大雪の恐れのある地域では外出の自粛も呼びかけられています。
 生物の頂点に立っているかのような人類は地、上のすべてをコントロールしているかのような気がしてしまいがちですが、自然の猛威には、自分たちの日ごろの行動にも縛りを掛けねばならない。いや、縛りをかけられてしまう。忘れていた人類のひ弱さを再認識してしまうようです。

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