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泡ギリス 令和の世では蟻となる

 泡ギリス――霊長目ヒト科バブル属キリギリス族――諸氏が前世紀末期に泡踊りマハラジャぶいぶいをしていた頃には、まさかの定年延長、年金実質目減り(もしくは出ないかも)な時代がくるとは夢にも思っていなかったろう。中高年になって慌てて蟻生活にギアチェンジを強いられるのは、若くないだけキツいだろう。実のところ、バブル時代でも蟻だった人はたくさんいる。むしろ、蟻の方が多かったろう。泡ギリスは目立つから、メディアが取り上げやすい。泡時代に蟻だった人は、やっぱり今も蟻である。そして、この先も蟻である。
 するってぇと、やっぱり日本人は、どう転がっても蟻んこなのね。という考えに容易に行き着くが、蟻が続けられる――できる・・・仕事がある――だけ、まだマシかもしれない。どうしたって身体は経年劣化で往年のように蟻んこできなくなってくる。トップ画像のように老人となっても「24時間働けますか?」

 人手不足だから、選ばなければ仕事はあるのね。でも、老体にできる仕事は限られている。だが、老体に向けられている仕事は、老体ではキツい「K」仕事が多い。その道のベテランだって、老体にはキツいだろう仕事だ。無理がある。だから、ミスも事故も多発する。

 それに老体でも個体差がある。若くても個体差があるが、年を経るごとに個体ごとの状態にバラツキが出てくる。足腰はまだ大丈夫だが、思考力が……。頭はしっかりしているが、体力が……。そして、その度合いにもそれぞれ差があって、一概には推し量れない。80歳で歯は全部自前、せんべいもバリバリ、スルメもガシガシっていう人もいれば、還暦を待たずに総入れ歯、噛めんライダーにチェンジ、せんべいもスルメも噛めませんっていう人もいる。
 「働け老人!」と言われて「おう! まかしちゃれ!」とバリバリ働ける人ばかりではないということだ。

 昔、田舎のある会社働いていたとき、55歳間近のおっさんが「やっぱ、55が近くなるとしんどいわ~、以前のようにはいかんわ~。昔の定年が55ってのは正しいわ~」とぼやいていた。社内では、その辺りの年頃のおっさんは得てしてこんな調子で、40代の人が改善案を出しても、「このままでいいよ。俺、もう定年カウントダウンだから~」って感じでやる気なし。
 それから数年、数十年ぐらいで人類の身体が劇的に変化(進化)しているとは思えんから、官民一致で「老人、働くべし」と発破かけてるけれど、あまり老人に期待しるぎるのもいかがなものかと……。
 昔、男女雇用均等法嗜好直後に、「女性の力を活用」とかいって家事をしたことのないお嬢様軍団に洗濯機の開発を任せて、実用性のない摩訶不思議なシロモノを出してきた大手家電メーカーがあったが、それを思い出すよ。
 老人の特性をきちんと鑑みた上で、個別対応せんとうまく使えないと違うやろか。……いっそ、老人をサイボーグ化できりゃいいがの(無理)。

 ところで、泡ギリスだが、こいつら使える老人だろうか。自分も泡世代だが、いやだからこそ訝しんでいる。
 日本がこんな体たらくに陥ったのは、バブルが消えた後に世界の潮流を見て、産業構造を変えることができなかったからだという話を読み、思わず頷いた。
 この産業構造を変えるなりアップデートするなりしなければならなかった時代に、社会の中核を担い、変革を促す役割をするお年頃だったのが泡世代。
 某長期政権が「観光立国」言い出したときには、耳を疑ったわ。観光産業が悪いってわけじゃないけれど、景気や政情に大きく左右される一番不安定な産業じゃないか。基幹に据える産業じゃないだろ。むしろ、他の産業や基幹産業が安定してこそ、発展できる産業だ。
 泡消えて、経済も社会もヤバげだけど、抜本的解決は難しいし、下々はもっとよくわからんだろうから見目の良いイメージ戦略と数字のマジックで目くらまししとけばOKなにおいが当時からぷんぷんしていた。
 ま、「上湯スープの世界」しかしらない人たち、あるいは「上湯スープ」を飲むことしか考えていなくて、それがどうやって作られるのか知ろうともしない人たち――まさにバブラーだな――には、それが思考の限界だったんだろうな。上澄みを自分が飲むことしか考えておらず、上澄みを飲み続ける世が続くことしかイメージできないからそうなる。
 バブル世代のすぐ上の世代はどことなく影が薄いが、そのまた上の全共闘世代は、ハカイダーであった。破壊することしかしなかったなんて陰口がある。それに合わせて言うと、泡世代は消費することしかしなかったバカイダー――そう、確かタロットカードで棒に刺した小さな風呂敷包み(確か)を肩に「ふんふーん♪」と地に足がついてないふわふわした足取りで歩いている『おバカ』とかいうカードがあったと記憶しているがそんな感じ――であった。

 愚痴っぽくなった。話も逸れまくった。

 結局、何を言いたいかっていうと、バブル世代の泡ギリスも蟻んこにならなければならない時代が来た。しかし、意識の変革も、寄る年波の身体の衰えも越えて、ニュースタンダードな社会でやっていけんのか? 大丈夫か、お前ら……ってこと。あっ、自分もッスね……。
(※本当に文章が無駄に長い。これを書いてるヤツこそ意識改革とリスキングが必要だな。自覚しろよ!)

(余談)
 ロシアとウクライナに目が向いているところで、中東で火が上がりました。ヤバいっすね。ほんと、身体も意識も覚束ない老人ばかりで、日本は大丈夫なんだろうか……。

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