毛利蘭ってケアテイカーじゃない?

 きっかけは好きな芸人のyoutubeで「毛利蘭より灰原哀派」という話が出たからであった。曰く、蘭の魅力が分からないと。それを聞いて、中学生以来コナンを見ていない自分も当時灰原哀の方が好きであったことを思い出した。当時の自分も確かに蘭に魅力を感じていなかった。哀の悲しみを抱えながら微笑む表情や、一見他人を批判するような態度をとるように見えて自分を二の次にして動く性格がぐっと来たのかもしれない。あと見た目が好み。声も好み。
 しかし、蘭にはそこまで魅力がなかっただろうか?という訳で、サンデーのアプリで200話程度無料であったこともあり、かなり久々にコナンを読んでみることにしたのであった。

 蘭については知らない人はいないだろうと思いながら簡単に説明する。主人公であるコナン(工藤新一)の幼馴染で、迷探偵毛利小五郎の娘、高校2年生である。コナンの正体を知らずに小五郎・蘭・コナンで同居しており、母親である妃絵里とは別居中である。空手の達人で、犯人に襲われそうになったところを返り討ちにする展開はもはや名物である。ちなみに自分は200話までしか今のところ読んでいないので、これらの設定は現在変わっているのかもしれない。風の噂では新一から告白を受けて晴れて恋人同士になったらしい(まだ付き合ってなかったのかよ…)。

 ウン十年コナンを読んでいなかった自分の覚えている情報はこんなところであった。そうして一から読み直したのだが…一番最初に思ったのは蘭の髪って最初とがっていなかったんだ…ということである。当初はただのウェーブで盛り上がった形に書かれているがだんだんと鋭利になっていき、皆さんおなじみ三角のとがり具合に変化する。この経過を見ることができただけでも、読み直した価値があったというものである。

 次に思ったのは、最初は人が死んだときに蘭って泣いていたんだ…ということである。そ、そうだよね。普通は人が死んだら悲しんだり辛くなったりするもんね…あれだけ事件に遭遇していたら正直感情鈍麻するよね…だんだん心がマヒしてしまったんだ…この経過を確認できただけでも、読み直した価値はあったといえる。

 そしてこれが一番重要なのだが、蘭パワフルすぎじゃね?ということを思った。それは身体能力に限ったことではなく、何話だったか忘れたが、例えば事件を解決して21時を過ぎたころ「夜遅くなっちゃったね。これから急いでご飯作るね」と小五郎とコナンに言うのである。自分はすでに成人しているが、21時にもなれば疲れていて絶対に他人の飯など作りたくない。「だりいから買って食べよ。いやなら自分で作れ」で終わりである。蘭は違う。いやな顔せず自分が作りますと平気で言うのである。いい子すぎんか?というか、冷静になって考えてみると、蘭は高校2年生である。毎日夕飯を作っているの偉すぎる。そして毛利小五郎(父)と妃絵里(母)の間に入って何とか仲を取り持とうと画策する。皆さんお気づきだろうか。

 蘭ってケアテイカーじゃないだろうか…

 言い方が悪いが、小五郎も絵里も自分の気持ちに対して素直に喧嘩をする。蘭の前でもする。蘭は「まあまあ」と言って二人の気持ちを近づけるように働きかける。つまり、蘭がいるからこそ、両親は安心して自己表現できるのである。蘭ありきの関係性なのである。自分が子どもの頃は見逃してしまっていたが、なんだかよく考えると闇深くないだろうか…
 しかし、毛利家の雰囲気はカラッとしている。陰鬱さがない。それは少年漫画を成立させるために必要なことである。ドロドロしていたら青年誌に移行しなければいけない。そのカラッとした雰囲気は蘭が必要以上に心配したり悲嘆したり怒ったりしないことで成り立っているように思う。高校二年生で、母は別居しており父と会えば喧嘩ばかり、家庭における母親の役割をこなし、家庭における明るい雰囲気を作り、周りでは殺人事件が頻回に起こる。このような人物が現実にいたら、その者は十中八九、精神科を受診しているのではないか。

 自分が子どもの頃、蘭にはまらなかった訳がなんとなく分かってきた。蘭は高値の花なのである。蘭は心を通わせた母親と彼氏の不在を(表面上は)物ともせず、明るくふるまっている。心が弱っていない、つまり、つけ入る隙が無いのである。しかも心に決めた彼氏がいるので、絶対にこちらになびくことはない。蘭の丹力はすさまじいと思う。常人では心折れそうなことを平気でやっている。スーパーウーマンすぎて、身近なものに感じられない。そのため、子どもながら理由なく嫌煙してしまったのではないか。自分とは違う存在すぎて、共感が出来ないのである。
 一方で、大人になった今蘭を見ると、魅力的な女性だと思う。上に挙げたように、よくこの状況で気を狂わずいられるなと思うし、周囲に気を配るいい子だと思う。

 今回、蘭という人間を現実に当てはめて考えてみると、かなりご苦労された方であるということが分かった。外野がへらへらしながら批評していいような人では無いとも思った。しかし、こうして架空の人間を現実に当てはめて考えてみるということ自体が大人の悪い遊びでありナンセンスであるとも思う。名探偵コナンは架空の登場人物による架空のストーリーだからこそ、登場人物を自由に好きだとか嫌いだとか言えるし、ストーリーを安心して楽しめるのである。
 名探偵コナンという作品は、とても面白い。トリックを毎回考えるだけでも大変なのに、ストーリーも飽きさせず、魅力的なキャラクターが沢山いる。しかも100巻以上出しており、よく青山先生はネタが尽きないなと感心してしまう。今回アプリで200話読んだが、続きが気になってしまった。夏休みに購入して続きを読みたいと思う。

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