2023年アニメ映画感想・2月

はじめに


 劇場公開された新作アニメ映画のレビュー。ちなみに1月は一本も観ていないので感想文はない。
 スコアは10点満点。9点は歴代アニメ映画の中でもかなり面白い。8点はとりあえず観るべき秀作で、7点は通常料金でも元が取れる佳作。6点は割引価格なら満足できる。5点は暇潰しにはよいが、人を誘うべきでない。4点は駄作。サブスクなら我慢できる。3点は無料なら観てもよく、2点は仕事なら観るというレベル。1点は最悪で、もう言葉にならない。だが、あまりにダメ過ぎて逆にいいこともあり、それは0点とする。評価の目安はこのようだが、筆者は大体の映画なら楽しんで観れるので、5点以下は殆どない。

金の国 水の国


 7点。とても普通の架空歴史ロマンス。Wikipediaだと、ジャンルがファンタジーになっているが、魔法なんて一欠片も出てこないので、そういうのを期待するとガッカリするだろう。直した方がよい。
 「ロミオとジュリエット」に、東西ドイツの対立を足し合わせたような設定。あの壁はベルリンの壁なのである。金の国と水の国は仲が悪いが、戦争を回避するために、金の国から国一番の美女を嫁に出し、水の国から国一番の賢者を婿に出すという風習がある。だが、両国はそれらの人間を出し惜しみ、あまり可愛くないサーラと賢いんだか何だかわからないナランバヤルが結婚する羽目になる。以上が本作の導入である。正直、ここが最も面白く、後は陰謀がブレンドされた王道ラブロマンスなので、展開に意外性はない。新規性は中東と中華を舞台にした点と、主人公が美男美女でない点だが、後者については作中でそう言われているだけで、絵を見た限りだと、そんなに整ってないようには見えない。筋は奇麗にまとまっていると思うが、タイトルに反して水の国は影が薄く、殆ど金の国の国内問題を解決するだけで話が終わってしまう。もうちょっと両国を行き来したらよかったのに。映画の内容的には、「金の国の恋」とした方がしっくりくる。
 それにしても、ラストが、被害妄想的な父親のお悩みを解決するというのは、予想できなかった。末尾の点から全体を見回してみると、家族の再生と「青い鳥」がテーマの一つだったと言え、恋愛モノと家族モノが混成していると言えるだろう。ただ、その二つが有機的に繋がっている印象はあまり受けず、それぞれに関係するドラマが別々に進行していた感じ。
 金の国は明らかにオスマン帝国がモデルだが、宮都の参照元は恐らくイスタンブールではない。イスタンブールはアナトリア西端に位置し、黒海と地中海に面する海港都市なのだが、本作にそんな描写はない。水不足な上、四方が砂漠となると、バグダットかイスファハーンが近いか。しかし、建造物はイスタンブールをベースとしているように思える。オスマン帝国の宰相はウラマーから選定されていたが、本作では、教養がない人間でもなれる。トップダウンの人事システムはイスパニア帝国などに見られるが、大抵の国では旅芸人やマッサージ師が政治に関与できることはない。レオポルディーネは欧州系の容姿をしているが、オスマンでも、スルタン妃に欧州の王侯貴族が選ばれていたため、それに則っていよう。
 水の国のモデルは、族長の服装から清王朝と考えられる。王朝のトップが皇帝ではなく、族長と呼ばれるのは、清朝帝室が遊牧民たる女真族の、愛新覚羅氏だからである。族長が僻地の学者を知っているのは変だが、ナランバヤル父が科挙の合格者、すなわち進士であったなら、一応説明がつく。進士なら殿試で皇帝と顔を合わせるし、ある程度出世すれば、側近として政治を担うからだ。となると、ナランバヤル父は政争に負けて地方に流された、ということになるが、真実は如何に。

アイカツ! 10th STORY 未来へのSTARWAY


 6点。タイトルの通り、アイカツ無印の記念作品で、大人になったいちご達のその後を描く作品。ファンムービーとしては7点くらいの出来だが、単独作品としてみると予備知識必須な分、スコアは下がる。
 成長して将来の行く末に迷う物語かと思っていたら、別に壁にぶち当たったわけでもなく、キャリアの停滞に危機感を覚えたわけでもないという、お仕事モノとしては何とも微妙な話になっていた。基本的に、卒業後は忙しくなって会う時間が減って寂しいとか、進む道が分かれてしまっているので孤独感があるとか、そんなような話だったと思うが、初代メンバー同士は、らいちも含め度々会っているみたいで、そうですかー、という感想にしかならない。仕事はそれなりに充実しているようだから、悩みがあるのは分かるけれど、あまり切実な感じがしない。成人を対象としているのだから、もう少し現実的な話の方がよかった。それぞれの得意分野を確立した三人が集まって、ソレイユ再始動するところは良かった。
 ライブが少なかったのも個人的には不満点で、特に卒業ライブをラストに持って来る意図は分からなかった。過ぎ去りし日の、楽しい思い出を描いたということ? 個人的には、復活したソレイユのライブで締めてほしかったのだが。また、キャラ毎に待遇差が激しい。ソレイユの面々と、レジェンド・美月、ユリカ様、一ノ瀬あたりは成人後の話にも絡んできたが、ぽわぽわプリリンや第二世代はほぼ出番がなく、ドリームアカデミーなんか完全に忘れられていた。ファンムービーなのだから、メイン級のキャラには触れてほしいところ。個人的にはユリカがいたから、別にいいんだけど、それはそれとしても地下の太陽さんには出てほしかった。

佐々木と宮野-卒業編-


 4点。テレビ放送でよかっただろ、と劇場で何度ツッコんだことか。この作品はそもそもテレビ・シリーズから不味かったので、期待してなかったのだが、案の定といった感じである。BLアニメなので、ゲイを扱っているようで扱っていない、一種の女性向けポルノである。因みにこれの男版が百合アニメということになる。
 映画はテレビからの続き物であり、その時点で個人的には少しゲンナリするのだが(予習が面倒なため)、これは映画自体もあまりいいとは思えなかった。大学受験と卒業の話が出てくるけれど、遠方に行くわけではなく、切迫したものが感じられない。いや、確かに学校で会う機会は減るのだけれど、そもそも学年が違うわけだし、元からそんな頻繁に会っていたっけ? という感じ。高校は、学年が違うとあまり会わないものだし。これが遠距離恋愛になるのなら、多少ドラマになりそうだが、日常系の延長戦だったので、わざわざ劇場で観る程のものとは思えなかった。
 台詞が説明口調だったり、反射で突っ込んだ割にやたらと長尺の台詞だったりと、日常会話を観ていると考えるなら、言葉のやり取りに違和感を覚える箇所が多い。また、モノローグは文字ならいいが、音声にすると冷めてしまうところがある。自分の気持がどうで相手の気持ちはどうなのか、とそんな頻繁に思案するものなんだろうか? 大抵の場合、ボーっとしてウダウダしているもので、有意な思考なんて殆どしないように思うのだが、音声にすると、そこのリアリティのなさが文字より目立ってしまう気がする。それを解消するには、台詞に工夫を凝らすか、表情で視聴者に悟らせるか、どちらをした方がいいと感じる。原作つきだと、その辺りの改変が難しいかもしれないけれど。因みに、絵は普通より少し下くらいのレベル。
 記憶が曖昧だが、半澤兄弟の話が出てきたのは本作だったはず。突然カミングアウトされたことに対する驚きや、それを受け入れられない半澤の情緒はもっと掘り下げてもいいと思ったが、メインじゃないため流されたのは少し残念だった。

BLUE GIANT


 8点。非常によかった。年の初めにこんな映画が来てしまって、後続の映画は大変だなあ、と思う。ジャズ・フリークの宮本大が友人二人とバンドを組み、SO BLUEという国内屈指のジャズ・ステージでライブすることを目指す話。宮本が上京したところから映画は始まるが、原作はその前に地元・仙台でのストーリーがあるらしい。漫画は読んでいないが、映画を観た限りだと東京篇だけでまとまっているため、仙台篇はいれなくて正解だったろう。
 話はよくある立身出世もので、まるでジャンプのように友情・努力・勝利の展開がリフレインされる。青年漫画なのだが、題材が大人向けなだけで、物語の構成的には、少年漫画で連載されていてもおかしくない。ベタな分、破綻もなく、娯楽ものとしては悪くなかった。
 ジャズを掘り下げる作品なのかと思いきや、蘊蓄は全くなく、キャラクターの成長と人間関係に焦点が当てられている。こういうコアな素材(ジャズはコアというのかは微妙だが)を扱うのなら、それなりに知識を披歴してほしいタイプなので、もっとぺダンティックな方が好みだった。
 立身出世ものとは言うものの、沢辺と玉田には課題を乗り越えるドラマがある一方、宮本にそういう点は殆どない。彼は病的なほどジャズに入れ込んでおり、メンタルも鬼のように強靭なため、とても十人並みではない。要するに一種の天才、狂人なのであり、「バクマン」の新妻レイジや「修羅の門」の陸奥九十九に近しい存在である。こういう人物を使ったドラマは設計し辛く、実際、印象に残るエピソードを残しているのは脇役の、沢辺と玉田だったりする。
 宮本には際立ったドラマがないものの、代わりに卓越した演奏シーンが用意されており、このライブパートこそ本作の白眉と言える。音楽モノで演奏の秀抜さを示すのは難しく、ただ上手い演奏をしただけでは、素人である視聴者に良し悪しを分からせることはできない。それに対して本作は、演奏の感じを抽象的な映像表現で見せる、という戦略をとっており、これが非常にハマっていて格好いい。CGは粗いし、キャラの表現も優れているとは思わないが、ライブパートの色彩的豊かさ、音楽と映像のシンクロ、躍動感は抜群で、細田守と肩を並べるのではないかとも思われる。音楽も素晴らしいし、劇場で観るに値する作品と言える。

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