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92歳 三石巌のどうぞお先に 24

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


植物のスカベンジャー

活性酸素の種類と環境により多種

 やさいといってもいいが、植物ってものがスカベンジャー(成人病や老化の元凶とされる活性酸素をしまつしてくれる物質の総称)をいろいろもっていることを、キミはどう思う。紫外線のことはとっくに書いたが、この問題はそれだけじゃかたづかないはずだ。
 だけど、ヒントはもうだしてある。ベータカロチンが油のなかの活性酸素にたいしてスカベンジャーになっていることだ。
 活性酸素は水のなかにもあるばあいもある。ミルクのような水と油のまじった乳化液にあるばあいもある。それに、活性酸素ってやつは種類がいくつもあるんだ。おもなものは四種類だがね。
 どんな活性酸素がどんな環境にあるかで、スカベンジャーはきまってくる。手ごわいばあいには、いく種類かのスカベンジャーがチームを組んでリレー式にはたらくことがあるだろう。といってもこれはボクの意見じゃない。宮尾興平(聖マリアンナ医科大非常勤講師)っていうえらい人の意見だ。
 こうなると、それぞれの植物が、フラボノイドだの、カロチノイドだの、ポリフェノールだの、ビタミンCだの、ビタミンEだのと何十種類ものスカベンジャーをもっている理由がわかるってもんだ。人間さまはそれをごっそりもらって使っているってことさ。これはボクのことだがね。
 ここでカロチノイドってことばをだしたから、ちょっと説明しておこう。これはカロチンのなかまの意味だ。カロチンにはアルファカロチン、ベータカロチン、ガンマカロチンの三つの種類がある。どれも体内でビタミンAに変わることができる。それをいちばんらくらくやってのけるのがベータカロチンなんだ。それでとくにもてはやされるってわけさ。スカベンジャーとしてのはたらきはアルファやガンマのほうがつよいって話だ。ニンジンよりミカンのほうがつよいってことさ。
 まえにキサントフィルっていうスカベンジャーを紹介しておいた。これもカロチノイドのなかまにはいる。卵のきみの色、サケの卵や肉の色、これはキサントフィルの色だ。さかなは白身より赤身のほうがいいわけだ。
 キミはヒトの寿命がほかの動物よりながいってことを知っているだろう。これは、ほかの動物がカロチノイドをすっかりビタミンAに変えちまうからなんだ。スカベンジャーとしてカロチノイドを使わないのがまずいんだな。寿命をちぢめる犯人は活性酸素なんだからな。ここにはボクの意見がはいっている。
 ビタミンAもスカベンジャーだけれど、はたらきかける相手の種類がかぎられている。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


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