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92歳 三石巌のどうぞお先に 37

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


薬物代謝

活性酸素をだすのが発がん物質

 活性酸素、活性酸素って目にウロコができるほどやかましくいって、発がん物質の話はどこかへいったんじゃないか、それでいいのかなんて、キミはじりじりしてるんじゃなにのかね。
 ボクだってそう思っているんだが、常識の壁をやぶりたいところがあるんだ。それがだいじだから、もう少しがまんしてほしい。
 なるほど、発がん物質っていわれているものはヤマほどある。AF2、おこげ、トリハロメタン、農薬、食品添加物、アフラトキシン、キク科植物の花のハチミツ・・・。このほかにもキミの知っているやつがあるだろう。
 AF2はトウフの防腐剤で、だいぶまえに市民運動に騒がれて禁止になったシロモノだ。おこげの発がん物質はトリプルP、グルPのふたつで、国立がんセンターが十六億円の税金をつぎこんでみつけたシロモノだ。トリハロメタンは水道水にふくまれているといって問題になるシロモノだ。
 AF2の発がん性はとても弱く、口にはいったところで何ということもないシロモノだときいている。“理科離れ”の市民運動のからさわぎだと思うんだが・・・。
 トリプルPもグルPも含有量が少なすぎて、毎日一〇〇トンのおこげを食わなければ、がんができないっていう研究結果がでている。
 含有量が不足のため問題にならないものはわんさとある。トリハロメタンもその例なんだ。何もビクビクして水道の水をのむことはない。水道水をいじくる装置がいろいろあるようだが、理科離れ好みのへりくつが多いようだ。マユにツバをつけての思案どころだな。
 活性酸素はどこへいったかってキミはきたいしたんじゃないかな。これはかんたんな関係だ。発がん物質とは活性酸素をだすもののことなんだ。
 医者のくすりでも、AF2でも、トリプルPでも排ガスのベンツピレンでも、からだにはいればゲドク(解毒)される。ゲドクのプロセスで活性酸素がでてくる。ゲドクといったって、毒をけすんじゃなくて、なかに毒をつくるやつがあるんだな。これが発がん物質ってことさ。
 そういうわけだから、学術用語じゃ解毒なんていわずに「薬物代謝」っていうことになっている。薬物代謝のプロセスのなかで、活性酸素をつくるものが発がん物質ってことになる。きちんとした話は、井戸端会議用語じゃむりだってことが、そろそろわかってもらえるんじゃなかろうか。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


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