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『洞窟の奥はお子さまランチ』

足元のぬかるむ道を抜け、コウモリの群れを振り払って進んだ洞窟の奥で私はそのお子さまランチと出会った。
何てことだ、信じられない。こんな凄いものがこの世に存在してよいのだろうか。
私の口内に涎が溢れる。
しかも、これが食べられないなんて!
「出来には満足していただけましたかな?」
脇にグラマラスな美女を従えた老人が言う。
私は激しく縦に首を振った。何せこの老人は伝説の食品サンプル職人なのだ。
「それはそれは、久しぶりに腕を奮った甲斐がありました」
老人はにこやかだ。だが、私の意識は既に横の美女の方に向いていた。
「ところで、こちらの方はお弟子さんですか?それとも娘さん?」
「どちらでもありませんよ。私が作った物です」
「では、精巧なロボットか何か?」
「私が作ったのですから当然、食品サンプルですよ」
「食品……サンプル?これが?」
私の頭に無数の”?”が浮かび上がった。
「どうです。むしゃぶりつきたくなる、いい女でしょう?」

(了)

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洞窟の奥にあるお子さまランチが食べられるもののわけはないというところから発想しました。
どうでもいいことですが、ネタを考えているあいだ、ずっと嘉門達夫の「ゆけゆけ川口浩」が流れていました。

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