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エモーショナルエクスペリエンスベイスドメディスンは本当にクソなのか

プレミアムエクソソーム点滴という13万円の生理食塩水が炎上しています。
詐欺師・人殺し・教祖様・頭お花畑などマトモな医療を行なっている医師からコメントがあったりなかったりしています。
その批判に対し、渦中の美容外科医は「エビデンスベイスドメディスンがなんだ、こちとらエモーショナルエクスペリエンスだ」と明言が飛び出ました。
Z世代研修医の私としては正直どちらの意見も分かります。
エビデンスの無い生食を投与し悪性疾患や神経疾患の方から13万むしり取るのは心が痛みます。
患者さんが効くと言えば効いているんだ、顧客が満足しているからほっといてくれ!と言う経営者的な視点も分からない訳ではありません。

今回は大真面目にemotional experience based medicineについて考えました。
結論から言うと皆がありがたがっているevidenceもそんな大したことはないけど、堂々と効かない点滴を効くと言うのもヤバいよね、と思いました。

evidence based medicineとは何か

教科書的にはEBMには5つのステップがあり、今回強調したいステップは患者への適応です。
・エビデンス
・患者を取り巻く環境
・患者の嗜好
・医者の経験
これらを総合してどのような治療をしていくか決めていきます。

本当に治療することが正しいのか?

一旦プレエクから離れて感染症の話をさせて下さい。

溶連菌に抗菌薬投与する?

溶連菌感染症疑いの患者に対し抗菌薬加療を行うかどうかと言うあるあるな臨床疑問があります。
抗菌薬加療を行うと治癒が早くなったり、合併症が防げたりします。
しかし、抗菌薬を処方せずとも自然軽快したり、合併症が起こらなかったりします。
さらに抗菌薬を内服することで下痢、発疹が出たり、耐性菌が問題になったりもします。
ここで重要になるのが治療閾値と言う考え方です。
治療閾値が検査閾値を越えると治療介入を行います。
治療閾値Txは以下のような式で求められます。

NNT:number needed to treat
NNH:number needed to harm
P(H):患者が副作用がどれだけ嫌か
副作用が気にならない人は1/10
P(T):患者がどれだけ治療を望むか
積極的に治療してほしい人は9/10

この式は先ほど述べた患者への適応を数式で表したEBMの実践を掘り下げたものです。
さてこの式を溶連菌感染症患者に当てはめていくわけですが、centor criteria満点でも事前確率は51%です。
こんなカスみたいな事前確率だと検査陽性であろうと陰性であろうと検査結果は全く当てにならず、NNTとかNNHは全く計算上考慮に値しません。
結局は医者の経験と患者の希望で治療を行うことになります。
溶連菌感染症疑いではエビデンスがマネジメントに与える影響は小さいと言うことが分かります。

エビデンスの無い点滴は毒にも薬にもならない?

さあプレミアムエクソソームについて話していきましょう
利益性に関してはプラセボ効果以外は期待できなそうです。
有害性に関しては点滴刺入の感染リスク、標準治療を受けない不利益が思いつきます。
美容点滴に関してNNTやNNHを記した論文は発見できませんでした(笑)
標準治療も受けようと思えば受けれる、感染リスクもそこまで大したことないと考え、毒にも薬にもならないと考えるのであればNNT/NNH=1と捉えても差し支えないかもしれません。
となるとevidence basedな感染症診療もemotional experienceな美容診療も結局変わらん!ってなっちゃいます。

evidenceは正義、美容は悪?

evidenceが無いと美容診療をこき下ろす一方で、しょうもないevidenceに基づいて保険診療を行なっているのはハッキリ言って恥ずかしいです。先生方の日常診療は本当にevidence basedですか?
だからと言って科学的根拠がない点滴を効果ありますと喧伝し投与して病気で苦しむ患者さんからお金をむしり取るのもいかがなものかと思います。
保険診療医も自由診療医もお互いに目の前の患者さんに謙虚に向き合うことが大切だと思います。
私個人としてはお金に困って闇落ち時には、反ワクチン活動するくらいならプレミアムエクソソームをこっそりやろうかと思ってます笑

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