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お金が無い ~撮影旅行よもやま話集~

 馴染みのカメラ店が開催した観光バスでの撮影旅行、まだ携帯電話が普及していなかった頃のお話となります。

 今回の撮影旅行は、前回の撮影旅行で、バスが途中で故障したことを懲りたのか、レンタカーのおんぼろマイクロバスではなく、しっかり旅行社でツアーを組んでもらい、大型の観光バスで一泊撮影旅行として、北陸方面に出かけました。

 前回、三河の渓谷に行った日帰りの撮影旅行では、レンタカーのおんぼろマイクロバスが、ブレーキが掛かりっぱなしになる故障で、ブレーキが過熱して煙が出て来て、大変な騒動となったのですよ。

 「何故北陸?」って聞いてみたら、「自分が越前ガニが食べたいから、撮影旅行の行先を北陸にした」ってカメラ店の社長が言っていたので、現実には撮影旅行とは名ばかりの、越前ガニが目当ての、飲酒・飲食・お買い物ツアーだったのかも・・・

 カメラ店の社長が旅行初日に、旅行代金名目の『参加費』を参加者から集金して、袋に入れて大切に持っていたはずだったのですが、何故かお金が無い。

 バスの中を大騒ぎで探してみたが、見つかんない。

 参加者に聞いてみても、全員が全員、当然の如く誰も知らない。

 そうです、カメラ店の社長が、何処かに忘れてきちゃったのです。

 その額約100万円、気持ちよく酔っていたのに、酔いも醒めちゃいますよね。

 昼食のために立ち寄ったツアー向けの飲食店で、参加者の皆さんと一緒になって、気持ちよ~くお酒を飲んでしまいました。

 そして、集金したお金入りの袋を、そのまま店に置き忘れてきたことがやっと判明したときには、随分と時間が経っていました。

 飲食店に問い合わせの電話を入れたら、忘れ物がしっかり残っていることが判明したものの、もう簡単には引き返せないであろう距離を、バスは走っていました。

 誰かが別行動で、お金を回収しに戻るしかありませんが、こればかりはカメラ店の社長が行くしかありません。当然、当たり前です。

 これ以外に方法も無いのでと、少しバスの走るルートを変更して、カメラ店の社長一人を最寄の駅で降ろし、その他全員を乗せたバスは帰途につきました。

 そのあとカメラ店の社長は、列車やタクシーを乗り継ぎ、飲食店に行き、忘れ物の約100万円を回収して帰るというクエストで、さびしいさびしい一人旅をすることとなりました。

 こんなふうに、置き忘れたり落としたりしたお金入りの袋が、中身が無くなることもなく、減ることもなく、無事に手元に戻るなんて国は、世界中で唯一『日本』だけのようですね。

 本当に、日本人は民度が高くて、嬉しい有難いことです。

福井県の東尋坊は険しい断崖絶壁のある、荒々しい海岸でした

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