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THE MODSと福山雅治

 福山さんの曲を、新しい視点で聴くシリーズ3

 有名な話ですが、中学生の福山雅治さんが、友人のお兄ちゃんの部屋から聴こえてきたあるバンドの曲に衝撃を受けました。THE MODSです。

 今回は福山さんが自らの「原点」と語るTHE MODSと福山さんの接点を書いてみます。モッズはめんたいロックの代表格です。途中メンバー交代もありましたが、現在は森山達也さん(vo、g)、苣木寛之さん(g)、北里晃一さん(b)、佐々木周さん(ds)の4人で活動しています。


 福山さんは『不良少年の詩』に衝撃を受け、アルバムを聴きまくり、曲をコピーし、ライブにも足を運んでいたそうです。初ライブは1983年の「Gang Tour」だそうです。

 その後、福山さんは1992年に憧れの森山さんとテレビで対談をします。この際はお互いに九州出身であることや、福山さんが見たモッズのライブエピソードで盛り上がり、緊張する福山さんに優しく語りかける森山さんの姿が印象的でした。


 それ以降は、『バラッドをお前に』をラジオでカバーしたり、テレビ番組など様々な媒体でモッズ愛を伝えています。2017年にはモッズのデビュー35年記念の雑誌にインタビューも掲載されました。


 楽曲でのつながりで言えば、福山さんの『逃げられない』のタイトルは『TWO PUNKS』のフレーズからインスパイアされたと感じますし、『Gang★』は『GANG ROCKER』を連想します。


 歌詞で言えば『もっとそばにきて』の「パパとママはもうお休み 窓から抜け出して」は『LET'S GO GARAGE』の「ママはもうお休み 窓から抜け出しガレージロック」というフレーズをオマージュしているように感じます。『LET'S GO GARAGE』は福山さんもお気に入りの曲としてあげていましたし、その背景を浮かべながら聴くとまた違う景色が見えて楽しいです。


 福山さんがモッズへのリスペクトを多く語っていたのが2014年のこと。初の男性限定ライブ「男の、男による、男のための聖夜にして野郎夜(やろうや)!!」の開催時です。ドラマ出演などをきっかけに女性ファンの多かった福山さんは、モッズのような男らしいロックライブに憧れていました。当然このライブ開催のきっかけにモッズはありましたし、その際のインタビューでもモッズへの言及は多くありました。このライブのアンコールで披露された弾き語りの『Good Luck』は男性ファンには語り草となっています。デビュー曲のロックナンバー『追憶の雨の中』と共にベストアルバム『福の音』でその音源が聴けます。

 
 ただ、ここでひとつ疑問が浮かぶ方もいるかもしれません。「福山さんはモッズみたいな曲は作ってないんじゃないんじゃないの?」という意見です。つまり、音楽性が違うのではないかということですね。確かに福山さんでイメージする曲は『HELLO』『桜坂』『家族になろうよ』など、エレキよりアコギ、ロックよりポップスやバラードの印象があるかもしれません。


 でも実は、全く違うわけではないんです。福山さんが今の音楽スタイルになるまでにはいくつかの流れがありました。


 福山さんはデビューアルバム『伝言』のプロデュースをARBの白浜久さん(デビュー前のモッズにも在籍)に依頼していたほど、ロック志向でした。むしろ、ギタリストになりたくて東京に出てきたくらいですから、なりたい姿には当然モッズのステージがあったと思います。

 
 しかし、福山さんが発表した初期のロックを意識した作品は、発売当時はセールスが振いませんでした。現代であれば、YouTubeなどの様々な活動手段があるため、好きなことをやり続けることもできますが、当時は売れないと音楽を続けられない時代です。福山さんは自分自身の音楽性をどうするべきか探していました。


 そんな中、1992年に福山さんの転換期になるシングル『Good night』が生まれます。この曲はドラマの挿入歌となったスローバラードです。当時の福山さんが「こんなのロックじゃねぇ」と避けていたパターンの曲だったそうですが、結果的に30万枚を売り上げる初ヒットとなりました。


 そこからの福山さんは、自分のルーツとなるロックを意識した曲も発表しつつ、自らの個性を活かす音楽作りに取り組みます。食わず嫌いをせず、様々なチャレンジをし、良い作品作りにつなげました。


 アーティストにはそれぞれの個性があります。たとえば、THE MODSとThe Roostersはめんたいロックで同じようなジャンルにカテゴリーされますが、歌詞や演奏スタイルも全く違います。


 福山さんの個性は、弾き語りを中心とし、「生と死」からつながれていくものの美しさを歌う。そして幅広い年代に愛される親しみやすいメロディも特徴です。実はモッズの曲も激しいだけでなく、弾き語りにしても1曲1曲がとてもいいメロディです。なので、たとえば『バラッドをお前に』のように、長く歌い継がれるソングライティングの芯の部分を福山さんは継承したのではないでしょうか。


 そしてヒットチャートの常連となる1993年頃には「ロックは自分自身の中でマインドとして、またスピリットとして存在していればいいと思えるようになっていた」と後のインタビュー(シングルコレクションのライナーノーツ)で明かしています。これはロックを諦めるのではなく、これまで受けた影響を活かしながら、新たな音楽性にチャレンジしていく宣言とも取れます。


 とはいえ福山さんは初期に多くのロックナンバーを産み出しました。中でも私が一番めんたいロックを感じたのは『風をさがしてる(TV Special/'95 style)』です。これは『MAGNUM COLLECTION 1999 Dear』というベスト盤にのみ収録されている音源ですが初期の福山流めんたいロックの集大成ではないでしょうか。




 THE MODSを初めて聴く方へのおすすめ作ですが、1stアルバム『FIGHT OR FRIGHT』を聴けばまさに福山さんが初めてモッズを聴いた衝撃を味わうことができます。そしてこの作品には2006年に『FIGHT OR FRIGHT -WASING-』という再録音盤も出ていて、これもまた良いです。さらに福山さんが実際は行ってはいないのに「現実と幻想の間みたいな感覚で残ってます」と表現した伝説の雨の野音がDVDとして付属してします。これを見れば、福山さんが野郎夜で表現したかった世界観が理解できると思います。


 福山さんと森山達也さんの共通点ですが、私はファンへのリスペクトだと感じます。「ファンと作り上げるライブ」といいますか、ファンと一緒に歩いてきたという印象を強く感じます。音楽をやる以上、評価だったり様々な葛藤もあるかもしれませんが、「結局誰のために歌うの?」となったときに、やはりファンのためにというイメージがあります。


 若き日に、森山さんのエネルギッシュなパフォーマンスを生で見て憧れた福山さんに、そのスピリットが宿っているのは間違いありません。『TWO PUNKS』でモッズファンが大合唱する姿、それこそが福山さんが憧れ継承してきたものではないでしょうか。


 今回書かせていただいたのは、福山さんの実際の発言にプラスして、私の思考も多く入っています。なので、「THE MODS 福山雅治」で検索すると、福山さん本人の熱い思いがいろいろと出てくると思いますので、気になる方はぜひそちらで調べてみてください。これを機にロックへの興味が少しでもわいていただければ幸いです。読んでいただいてありがとうございました。



 

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