社会心理とパーソナリティ研究の違いは?
vol.0001
■今日は下記の論文から
木下冨雄.社会心理学から見たパーソナリティ研究:Person,situation,and behavior.The social psychological perspective .日本パーソナリティ心理学会、2004、第13巻、第1号、120−125
▶︎社会心理学とパーソナリティ心理学はもともと近い関係にある。
が、両者の概念構成や方法論の間には、若干の隔たりがあるのも事実。
なので、社会心理学から見た、パーソナリティ心理学への関わり方と問題提起を以下の大きく二つの論点から行う。
・認識論から見た問題提起
(1〜2、7〜8(パーソナリティ概念そのものを問い直す))
・測定論的に見た問題提起(3〜6)
▶︎1)社会心理学的認識とパーソナリティ心理学的認識
・異なる刺激を統一的な反応に纏める変換装置が心の中にあって、そこで考えだされた構成概念がパーソナリティであり、具体的には「内向性」という概念が登場することになる。
・個体要因は全て異なり、しかもその相関関係は限りなくゼロに近いのに、状況への反応は全て同じだった。とすれば、そこに異なる個体要因を超えて、同一の反応に導く変換装置があるに違いない。そこで考えだされた構成概念が「集団規範」なのだ。
・つまり問題は、pz~ソナリティを一貫性か状況依存かという1/0的発想で捉えるのではなく、対象となる個体が置かれた状況との関係において、共変動する両者の関係を多元的に構造化することではないか。
・社会心理学で扱う、対人関係、集団、組織、群衆といった相互作用を含む複合的な人間行動に関しては、社会心理学とパーソナリティ心理学の認識構造感に明確な差がある。しかし、自己、態度、価値観などといった個体レベルの社会行動に関しては、両者の差は大幅に縮まる。そして、パーソナリティ特性のどの部分が状況を超えて相対的な一貫性を保ち、どの部分が状況に依存するじゅうなんせいをもつのか、その二重構造を明らかにすることこ喫緊の課題ではないだろうか。
▶︎2)セルフ、自我、自己をめぐる概念
セルフから派生する様々な心的機能はパーソナリティ心理学、社会心理学の両領域に広く及んでいる。
セルフは、遺伝形質によって作られた中核的脂質を内部に秘めつつも。その外側は、社会の文化、制度、政治、経済、宗教、そのほかの諸所の状況要因の影響を色濃く受けて、個体の成長過程で作られたものである。
両分野が扱う概念の共通項と異質高を分離した上で、遺伝形質としての自我が、社会状況や文化によって、どの側面にどの程度変化が生じるのか、その発生的機序を説明する必要がある
▶︎3)パーソナリティのタイプ分け
パーソナリティの本質を考えるなrあ、もっと立体的に構造化を図るべきではないか。立体化とは、パーソナリティの基礎をなす下部構造と、後天的に形成された上部構造の関係を明らかにすることである。
▶︎4)動作系を用いたパーソナリティ測定の可能性
認知形に表出されたパーソナリティと、行動形に表出されたパーソナリティの関係を明らかにすることが、個体の理解にとってより重要ではないか。
▶︎5)感情形と認知形の相互作用から見たパーソナリティ測定
社会心理学や認知心理がで扱う感情形と認知形の相互作用の面から、パーソナリティの再構成を試みる必要がある。
EQや「社会的かしこさ」の研究もその一つの試みであろう(Bar-On,1997;Goleman,1995;木下,2000b;木村,1997)
▶︎6)多元的なレベルからパーソナリティを測定する可能性
パーソナリティの測定に際して、自己評定、他者評定など単一レベルの評価を行うだけでなく、複合させた評価方を開発すると面白いと思う。
社会心理学では、例えばリーダーシップの測定方として360度リーダーシップ測定と称してる。
パーソナリティの「ゆらぎ」をもとに診断する
▶︎7)パーソナリティが消えるとき
個体が集積されると、そこには個体を超えた隠れた秩序系が形成されるわkで、これは、典型的なミクロ・マクロ問題であろう。個体差以上に大きな状況の力が働いている。この分析を通じて、パーソナリティ概念の効用と限界を知る手掛かりが得られるのではないか。
▶︎8)行動主体、ないし個体特性としてみたパーソナリティ概念
パーソナリティ研究は、狭義の性格や自我だけを扱うのではなく、認識構造とそれを賦活させる感情構造の特性、それに動作系の特性、さらにはそこから派生するさまざまな機能特性も含めた、トータルな個体特性を表す概念として発展させるべきではないか。それがパーソナリティ心理学に属する概念あのか、それとも社会心理学のそれなのかはどうでも良いことである。
いづれにしても絶対に重要だと思うのは、パーソナリティを固定した性的なものとして捉えるのはなく、「ゆらぎ」を持ったどう的な存在として捉える必要性である。
類型論の是非を巡る論争は、このように「動きの中で相対的に安定している」部分をどのように捉えて概念化することだと思う。
今日の私の面白Point:自由に動くことで動かない部分がわかる!
「似顔絵を描くためにはモデルの特徴の本質を見極める必要があるが、そこには相手に自由に動いてもらうことが大切で、そうすることによって初めて動かない部分が浮かび上がるそうだ。動かなければ動かない部分がわからないらしい」と著者が著名な似顔絵画家から聞いた話があり、パーソナリティ心理学の「ゆらぎ」の話と通じているのだが、ここが一番面白かった。
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