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#読書感想文 私の仕事 国連難民高等弁務官の10年と平和の構築

昨年亡くなった緒方貞子さんの日記、講演録、エッセイなどをまとめた一冊。緒方貞子さんに憧れる女性は多いのではないか。私もその一人だ。

何が彼女を突き動かしたのか

「ジュネーブ忙中日記」の1993年5月から1994年8月までの日記を読むと、日々各所に移動しながら、世界の難民のために奔走している活動の様子がわかる。移動と言っても、世界中を移動している。1927年生まれだから、その頃すでに65歳過ぎ。自分がその年になったときに活動できるよう、知を磨いておかねばとも思った。

ルールは変えて良い、基本原則は変えない

基本原則(プリンシプル)を守るために、私は行動規範(ルール)を変えることにした。(13ページ)

これは仕事をするものとして、いや人生誰でもこういう局面ってあるのではないか。ビジネスではよく理念(ミッション)と言われるけれど、基本原則は守り抜かないとならない。そこがぶれていると見苦しくなり、信頼を築くのも難しい。判断が難しいときに大切にしたい。ルールは変えてもよいのだ。

問題解決を図るために大切なこと

体系的に理解するというのは、答えを持っているということではなく、何が問題なのか質問ができる、ということではないでしょうか。(中略)実務というのも、いったい次の課題は何かといろいろな要素を総合的に見ながら、どういう答えを求めるかというプロセスですから、問題提起と解答というのは実務のうえでも役に立つ思考方法だと思っています。(258ページ)

問題を提起(発見)し、その答えを見つけていく。我々は、解を出すことに目が行き、答えを出すことを急いでしまうけれど、そこに至るプロセスを大事に俯瞰してみることの重要性を説いている。深く深く考えられているか、小手先の知識や経験で始末してしまっていないか。答えというのは出すものではなく、導き出すものなのだ。

仕事を通じて得られるもの

人間は仕事を通して成長していかなければなりません。その鍵となるのは好奇心です。常に問題を求め、積極的に疑問を出していく心と頭が必要なのです。(373ページ)

なぜこんなにも忙しく仕事ができるのだろう。続けられるのだろう。原動力は何なのだろう。この本を読み進めていくうちに、そう思った。

仕事というのは、人によってその定義は様々だ。多くの人は年齢的なものや給料を得て生計を立てるためにしている。昇進し地位向上を目指すものも名誉や自己承認欲求を満たすためということも多い。しかし、緒方貞子さんはやらされている感はまったくないし、ただ社会に存在する問題に真摯に向き合って解決を図ろうと行動しているのだ。好奇心、問題探究心。そして、情熱。この人の魅力はこういうものから形成されているのだろう。

緒方貞子さんは情熱と行動のバランス感覚に優れた方だったことをうかがい知ることができた。最後に付いていた解説は、生い立ちや素顔なども描かれこれも客観性があり面白い。解説から読んで中身を読んだほうが理解が深まったように思う。

分野は違っても、自分の仕事で活かせるような内容が豊富な本であった。緒方貞子さんのような偉大な方は、基本的なことがものすごくできるのだ。基本をおろそかにせずに仕事をしていこう。

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