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節税と資金拘束の危ない関係


はじめに

増税、物価上昇で将来に不安を感じる世の中、節税して少しでもお金を守りたいとお考えの方は多いと思います。私もその中の一員です。
その節税を考えるときに切っても切り離せないのが「資金拘束」です。ここでは「節税のためにお金を拠出したらそのお金を一定期間引き出せなくなる状態」を資金拘束と定義します。
資金拘束を受けると緊急でお金が必要になったときに使えない、他に魅力的な投資先が見つかったときに投資にまわせないなどの不都合が生じます。
一昔前と比べて確実に世の中の変化のスピードは速いです。その変化に対応するためには資金の流動性(柔軟性)という視点からも節税を考える必要があります。特に中小企業経営は資金がショートしたら倒産に直結しますし、意思決定の速さこそが中小企業の強みであったりするのでなおさら。
今回の記事ではド定番の節税3つを資金拘束という視点から考えていきます。

おすすめド定番節税

①NISA

NISAはご存知のとおり一定金額までは非課税で株式や投資信託などに投資できるという制度です。
NISA口座での投資はいつでも換金できるという意味では資金拘束をされない節税です。
しかし、NISA口座での節税は投資で運用益が出て初めて実現します。NISA口座で含み損をかかえている状態で換金して損を確定してしまうとそれは「ただの損」です。
ちなみにNISA口座ではなく特定口座や一般口座で出した損は、その後3年間で出した利益と相殺できるので、リベンジのチャンスが残される「使える損」です。
NISA口座に資金拘束はありませんが、使うからには利益が出るタイミングまで待てる余裕資金の範囲内が良いでしょう。

②iDeCo

iDeCoは掛金が所得控除となるため、掛金を拠出するだけで節税が実現します。そして高所得者(適用される税率が高い人)ほど節税の恩恵が大きくなる制度です。
しかし典型的な資金拘束を受ける節税です。拠出した掛金は原則として60歳まで引き出すことができません。
老後資金に不安を抱える中所得者層こそ活用したい制度ですが、それなりの資金額が長期間拘束される点が中所得者層に優しくありません。
公務員の方や大企業にお勤めの方など将来にわたり安定した収入が見込める方や十分な資産を築いていらっしゃる富裕層の方には使いやすい制度です。

③小規模企業共済

小規模企業共済は個人事業主や中小企業の役員などが加入することができます。
節税と資金流動性のバランスがとれていますが、運用の予定利率が1%と若干低めです。
小規模企業共済はiDeCoと同じく掛金が所得控除となるため、掛金を拠出すれば節税ができます。
資金拘束という点からは、急な資金需要には解約して解約手当金を受け取ることができる(多くの場合は元本割れする)ほか、低利率で貸付けを受けることもできるので安心感があります。資金需要が一時的な場合は解約するより貸付けを受けた方が良いかもしれません。
このようにバランスのとれている小規模企業共済ですが、掛金の減額には注意が必要です。毎月の掛金を1,000円から70,000円の範囲で増減させることができるという点はありがたいのですが、掛金を減額してしまうと減額部分の運用がストップしてしまうため、受給額に不利な影響を与えます。
将来的に減額しなくても良い程度の掛金に抑えておく方が無難です。

おわりに

投資や資金拘束にはリスクがありますが、何もせず老後を迎えることもまたリスクをはらんでいます。
どうせ投資をするなら節税効果のある方法が良いです。しかし節税のメリットを享受するためにはその裏にあるデメリットも理解して受け入れなければなりません。今回はデメリットのうち資金拘束に着目しました。
どの節税策も共通するのは、当たり前ですが「無理のない範囲内」です。しかし、税金を払いたくないがために、または投資しなくてはという強迫観念から過剰なリスクを背負ってしまう方もいらっしゃいます。
将来のために用意しなければいけない資金量も許容できるリスクも人それぞれ違います。メリットとデメリットを正しく理解し、冷静に自分に合った節税策を実行しましょう。


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