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映画『ガンパウダー・ミルクシェイク』

男はルールが好だ。
ダイナーでは銃は使用出来ない。しかしその他の武器使用は許される、といった殺し屋たちの暗黙の掟が存在するのは映画『ジョン・ウィック』へのオマージュだろうか。
そもそもそんな掟なんてものをつくるのは男だろうが。最後にそんなルールやマナーを「めんどくさい」と言わんばかりにキングスマンよろしく吹っ飛ばしてくれた彼女たちが実に気持ち良い。

映画『ガンパウダー・ミルクシェイク』はイスラエル出身・ナヴォット・パプシャド監督のお気に入り映画のお気に入りシーンの総集編、言ってみればマイプレイリストだ。ジャンル映画のサンプリングで知られるクエンティン・タランティーノも彼の才能を絶賛しているのも頷ける。本作は胸躍るアイデアが随所に詰め込まれ、観るものを飽きさせない。

物語は至ってシンプルだ。女が悪い男を成敗する勧善懲悪の物語。それ以上でも以下でもない。その対立構造に深い意図がある訳でもなく、ジェンダーギャップに対する怒り叫ぶ訳でもない。虐げられた女の復讐劇でもないのだ。だから後味は爽快で、ウェットな感じはない。わたしたちは監督のプレイリストに何も考えずにただ身を委ねていれば良いのだ。

ナヴォット・パプシャド監督のプレイリストは、一つの体験としては確かに面白い。クラシック、ロック、ジャズ、ヒップホップ、ポップスなどの名曲が詰め込まれたアルバムをノンストップで聴くような体験だ。個人的にはジャンルの配分、楽曲の音量や曲間がバラバラで、全体としてのバランスを欠いた印象を持ったことは否めないが。
しかしながら、全曲シングルカットのダンスフロアでかかるプレイリストとしては最高だろう。そしてこれこそが、ナヴォット・パプシャド監督の映画作りのルールなのかも知れない。

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