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パルプ小説:West Side Stream 2

「乗るか!!この波に!」
「どっちの波に?」
私とキャバクラ行きませんか?と聞いた女性は、髪が白くツヤがない。服もヨレヨレになっている。年齢は、40代〜50代に見える。実はもっと若いのか?それとも老いているのか?わからない。
私は金麦を置く。
ドンキの前の交差点では、フィリピン人のおばちゃんが集団で話している。客引きなんかしていない。
「行きますか!面白そうだし!」
タバコを吹かしながら友人は答える。
「ありがとうございます。」
女性は答える。
正直不安でしかない。知らないおばちゃんとキャバクラ。そもそも、キャバクラなんてものは、男が行くもの。女が何しに行くんだ?もしかしてレズか?金はあんのか?俺らが払うんか?
酔ったアタマが高速に動く。ハムスターが滑車を回している。
金麦に口をつける。ぬるく喉を通らない。
「おばちゃん、何ヤってる人なん?」
「…」
おばちゃんは答えない。

キャバクラ前
「いらっしゃいませ、ご指名は?」
「もも子ちゃんいますか?」
道中無言だった、おばちゃんが答える。
「ごめんなさい。もも子ちゃんはいないですね〜。」
もも子なんて芋臭いキャバ嬢いるわけねーだろ。
「めっちゃ可愛い子おるやん。」
友人はおばちゃんとの会話を気にせずに、キャバクラの光に吸い寄せらていていく。夜の街での人は、蛾だ。やかましいネオンに吸い込まれる。
隣のベトナム料理屋から、ベトナム人が集団で出てくる。何人おんねんと心の中でツッコミを入れる。
「そうですか。」
おばちゃんはそのまま、街を歩いて行ってしまう。
遠目には、中国料理屋があった。看板がレインボーで、繁体字で書かれている。さらに光っている。漢字の画数が多いし、光がうるさい。
友人は、キャバクラの中に入っていてしまう。
流石に、友人を優先させる。
路上にたっぷりと残った金麦を置いて、入店する。
【続く】

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