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【一人暮らしの徒然】白菜と鯖の水煮缶をコトコト

 朝起きた結衣子は、そろそろ洗ってしまおうかと思っていた厚手のパーカーともこもこのニットカーディガンを重ね着した。三寒四温というのは本当だ。寒い日と暖かい日が入れ替わり立ち替わりする早春。それでも、暖房の設定温度は一つずつ下がっている。
 冷たい水道水に耐えて給湯器に頼らず数日過ごしたら、明らかに手荒れが減った。やっぱりお湯は手指の脂を奪うものらしい。一旦洗濯してピンチに揺れている保湿用の綿の薄い手袋の行き先がわからない。
 鯖の水煮缶と白菜をごま油と料理酒でコトコト煮る間、英語の勉強をする。テキストの見開き二ページを解き終えて目を上げると、コンロの火が消えているので結衣子は驚いた。二、三十分の煮込みのつもりが放置とみなされ安全装置が動いたようだった。蓋を取るとすっかり水分が飛んでいる。
 ご飯をよそい、白菜と鯖の煮物はポン酢で味付けして食べた。お弁当に持っていって、夜に食べてもまだ余りそうだ。おかずのストックは心のゆとりを象徴する。
 食べ終えて食器を洗い、お弁当の用意をして、水筒を作る。時間が余るので、再度机に向かって四月のイベントに出す原稿をいくらか進めた。出勤前になんとか一本まとめたが、やや強引かなという感触を残したままタブレットを閉じる。夜にもう一度読み返そう。
 月曜日だ。憂鬱な朝ほど、焦ると惨めなので余裕を持って動く。歯を磨いて着替えて、丁寧に化粧をした。マスクをしてハンドクリームを塗って、コートを着込んで。遥かなる週末を目指して、とにかく今日は行ってきます。

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