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あったかいの正体

「えー、でも、暖かくなるご飯がいいなぁ」

今日は、ビーフフォーでも食べに行こうか。
たしか僕はそう提案したはずで、予想外の回答にキョントンとしてしまった。

どうやら「そういうことではない」らしい。
ちゃんと聞き返せなかったのだけど、たぶん"手作り"とか
”誰かへの思いがこもった”とかそういうニュアンスの話だった。

「あったかいか・・・」と思考を巡らせているうちに、二人で暮らし始める前に、小腹が空いた深夜の台所で、とってもあったかい食べ物を作ってもらったことを思い出した。


それが「梅汁」だ。

最初に説明しておくと、梅汁とは、梅干し、切り干し大根、塩昆布、ほんだし少々に沸かしたお湯をかけ、溶いただけの味噌汁より簡単にできる汁物である。

でも、この「どのご家庭の台所でも揃う様な4種類の材料」をお湯で溶かした、これが、僕の中で妙に記憶に残っていた。

当時恋人の住んでいる場所が駅から少し離れた郊外の住宅街で、仕事が終わるのを待って、夕飯を食べてから帰ると22時過ぎていることが珍しくなかった。お互い帰ったらすぐ疲れ果てて寝る日々の中で、何度か「あ、なんかまたお腹空いた。。」なタイミングがあった。大体23時30分

すると、恋人は、トコトコとキッチンに行き、電子ケトルにさーっと水をいれ、お湯を沸かし始める。

それを待つ間に、シンク下の収納から、切り干し大根をひとつまみ、冷蔵庫を開け、塩昆布もまたひとつまみ、そして、梅干しを一つとって、それ用に買ったの? と言わんばかりの小さなまな板の上で梅肉を叩き、それぞれ器に入れてゆく。最後に顆粒のほんだしをさっと降って、、るころには カチッ
っとお湯が沸くので、溶きながら注ぐ。これで「はい、出来上がり。」

まだ自炊もまともにしていなかった当時の僕でも、これなら作れそうと思うくらい簡単なのに、この梅汁がびっくりするほどあったかかった。

切り干し大根と塩昆布・ほんだしで、出汁のベースが出来て、梅の酸味がアクセントになり舌も満たしてくれるので、実は味もかなりいける。うまい。

おさらいです。切り干し大根、塩昆布、梅干し、顆粒ほんだし、これだけ。ぜひ今から試してみてください。

以降、僕の夜中の空腹は、しばらくこの梅汁で満たされ続けた。


改めて考えてみると、僕の自炊のきっかけはここかもしれない。。誰かの気持ちに答えるためにとっさに思いついたアイデアを食材を使って行動に起こして、相手を満たしてあげるって、あったかくて、すごくカッコいい。

明日の晩ご飯は新玉を使ったあったかいポトフにしようかな〜


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