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ピークハンターを追いかけて

「おじさんは、ピークハンターだからね。」祖母は、おじさんに意地悪にそう言った。

当時10歳になりたての僕は、その言葉の意味をうまく理解できなかったが、祖母の表情を見て、その言葉が少し意地悪な言葉だということを察した。


僕の親族には"山好き"が多く、小さい頃から山に連れて行ってもらうことがよくあった。特に父方の祖母と、母方の祖母の弟(通称:ひげのおじさん) はとても山が好きで。よく考えてみれば、二人は血縁的には遠い関係なのだけれど、山の話をしている二人の姿を幼い頃からよく覗いていた記憶がある。

そんな二人の会話にこんなワンシーンがあった。

髭「じゃっくくんも今度一緒に山に登りにいこうね。」

祖母「いいわね、いってきなさい。でも、おじさんは、ピークハンターだから...」

20代になってようやく理解したのだけれど、山好きというのにも種類があって、山草や地域の花々を楽しむタイプの人や、純粋な登山(スポーツ的な意味)を楽しむ人、そして、まるでコレクターのように百名山の頂上をいかに制覇するかということをポイントにしている人...etcがいるらしい。

その最後のタイプこそ、祖母の言っていたピークハンターだ。


姿勢

ピークハンター
元々の意味は、アルプス黄金時代(1860年代)に次々に初登の記録を作った人を言う。現在では、一番簡単なルートをとりあえず頂上にだけ登って、降りてくる人。または、頂上に行くことが目的の人。「百名山ピークハンター」が有名。  - 山岳用語辞典より -

山岳用語辞典には、一番簡単なルートをとりあえず頂上にだけ登って、降りてくる人。頂上に行くことが目的の人。とある。山草や花が好きな祖母からしてみればこの姿勢は「山を楽しんでいない。・山の良さをわかっていない。」と映るのかもしれない。意地悪な表情をしたのもうなずける。

だけど、この山岳辞典の語釈を読んで。僕は純粋に「いいな。」と思った。
大きな目標に向かって、それを達成するための小さな目的をいかに早い手順でこなしていくか。とても合理的。ひげのおじさんには、今登っている山の頂上じゃなくて、100名山制覇の頂が見えているんだと思うと、その遠くを見据える姿勢に男らしい力強さを感じた。

「僕は、今、何を見据えて、この道を登っているんだろう。」

少しキャリア形成で迷っている今の僕にとってひげのおじさんが見せてくれたピークハンターという姿勢は、とてもカッコよく誇らしげに写っている。


では、また。

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