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人類学とは何か(ティム・インゴルド)を読んで

人類学というテーマに初めて触れたことに加え、内容が私にとって難しく、なかなか内容が頭に入らなかったこともあり読了できなかった1冊。

しかしながら本書を翻訳された奥野克巳さんの解説がとても分かり易かったため、また再読をしたいと思った1冊。

人類学とは何か?

人類学の問いである「私たちはどのように生きるべきか?」に対して、世界中に住む人々の経験と知恵を生かすことが人類学であると著者は述べている。奥野さんは以下のように解説されています。

人類学とは、人々についての研究ではなく、人々と共に研究することである。

(人類学とは何か ティム・インゴルド P.152)

人類学の仕事とは、知識に、経験と想像力の溶け合った知恵を調和させることである。

(人類学とは何か ティム・インゴルド P.155)

そしてこの「調和」を行うには「他者を受け入れる寛容さ」が一つのキーワードになるのだと著者は示して降りました。

例えば私たちは自分と異なる属性を「見下す」「偏見を持つ」「距離を置く」などしがちではないでしょうか?かつての人類学でもどこかの民族の人と生活する一方、インタビューを気づかれないよう盗撮をすることでその人たちの自然な動きを捉えていたようです。

著者が述べている「他者を受け入れる寛容さ」は現代に生きる私たちにとっても必要な学びの姿勢なのだと思います。

知識から知恵へ

この本の中で考えさせられたことは、現代の私たちは「知識偏重」になっていないかということです。例えばYoutubeで知識人と呼ばれている人の動画が人気を集めていたり、ハウツー本を読み漁ったり…

確かに知識は必要ですが、それに留まらず「自分自身の経験」や「自分の頭で考える思考力」を活かした「知恵」が変化が激しく答えのない世の中を生きる上で大切なのかもしれません。

本書が難解な理由

私にとってこの本はとても読みにくい1冊でした。恐らく著者の詩的な表現や、これまでの人類学の流れが複雑だったことに加え、どこか私自身がシンプルな「人類学」という答えを期待しすぎていたことが原因だと思われます。

奥野さんの解説で以下のような記載もあり、あぁ読みにくかった理由はこれか!と解説で腹落ちする1冊でありました。

本書の流れとしては、途中で枝葉が生じ、繰り返しや論理の飛躍があるだけでなく、扱っている領域も、生物学や環境科学、政治経済学などにわたっていて、必ずしも読みやすいものとはなっていない。

(人類学とは何か ティム・インゴルド P.153)

次に読みたい本

この本を通じて次は以下を読もうかなと。

  • 人生の短さについて(セネカ)
    「人類学とは何か」のテーマが「生き方」であったため、そもそも自分の人生って短いよな…と思ったため。

  • ソクラテスの弁明(プラトン)
    知識と知恵は異なるというところから「無知の知」で有名な本書を読みたくなりました。よく声のでかいコメンテーターがテレビに出ているけれども、彼らは恐らく無知の知がない人たちだよね。


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