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「キングギドラとはどんな怪獣か」という問いから、大森一樹監督の最高のゴジラ映画「ゴジラVSキングギドラ」の感想を語る

大森一樹監督が2022年11月12日に亡くなりました。謹んでお悔やみ申し上げます。

われわれアラフォー世代のオタクにとって、ゴジラの平成VSシリーズは心の中の大きな芯の一つとなっています。

全ゴジラ映画の中で、というよりも映画として評価が高いのは大森監督のVSビオランテで、それに異論は無いのですが、映画の作りとしてはVSキングギドラの方が完成度が高いのではないか、と思っています(因みに私がVSシリーズで一番好きなのはVSメカゴジラ ですm(_ _)m)

別のSNSでそのことについて書いたのですが、亡くなった大森監督のことを想いながら、「ゴジラVSキングギドラ」が如何に完成度の高い「映画」か、について、改めて書いてみたいと思います。

さて、映画は約120分間、観客にハラハラやドキドキやウルウルを与えて、要は飽きさせず、楽しませて、「有意義な時間だった!」と思わせることが目的のアルテ(技術)で、その内容や手段は、問われていません。つまり基本的に、そのためなら、まるでカエサルのように何をやっても良いということです。

そういう意味でVSキングギドラはVSシリーズで群を抜いていると思います。

さて、少し脱線(と見せかけて本質的な話)をすると、怪獣好きの皆さんは「キングギドラはどんな怪獣?」と聞かれたらなんと答えますか?


何度も地球を襲う宇宙怪獣?


空を飛ぶデカいやつ?


身体が金色?


ゴジラの永遠のライバル?


色々と答えがあって多分、どれも正解でしょうが、上に挙げていない、他の怪獣と決定的に違う要素がキングギドラにはありますよね。そうです!


「首が3つある怪獣」です!



話をVSキングギドラに戻すと、平成に義務教育を受けた皆さんならVSキングギドラの冒頭のシーン覚えていることでしょう。

冒頭は深海。

深海艇らしきモノが映り、海底に泥まみれになって眠る首の長い巨大生物の顔。

深海艇に乗り込んでいるおじさんは巨大生物を見て「あれが?」と同乗者のお姉さんに聞きます。お姉さんは「そう、あれがキングギドラ…」と答えます。

そして、おじさんは驚愕を込めてこう言うのです。

「何という大きさだ…おまけに首が2つも…


ええっ!首が2つ???


映画館の観客席に座る皆さん(俺たち)、インターネットも発達していない時代に生きる皆さん(俺たち)、「ゴジラVS首が3つの怪獣」を観に来ている皆さん(俺たち)、はもうこの時点で、「なんでキングギドラ(首が3つの怪獣)の首が2つなの〜!」と思考が過負荷停止になる暇もなくお姉さんはこう答えます。

「いいえ、本当は3つ…」

3つ?!マジで!ゲロヤバやんけ…)」

因みにこの時、映画館という空間…映画鑑賞者にとっては全宇宙に等しい空間ですが、この全宇宙の中でキングギドラの首が3つという事実にマジでゲロヤバいと驚愕しているのは、恐らく潜水艇に乗ってるおじさんだけです。子供の付き添いのお爺さん、お婆さんでもキングギドラは首が3つと知ってるでしょう。ポスターにも描いてあるし。

「ゴジラとの戦いで、キングギドラは頭を1つ失いました」

「キングギドラが、ゴジラと戦ったというのか?」

「そうです。20世紀の終わりに…」

カッコいい音楽とともに対峙するゴジラとキングギドラに被さる大文字のタイトル。

ゴジラVSキングギドラ

これ以降、この映画はノンストップです。

色々事情はあるんやろけど、凍ってるゴジラザウルスをメカキングギドラで踏み潰したらみんな幸せに終わるよね、とかそういう思考は介在することは出来ません。

潜水艇のおじさんがキングギドラの首が2つでヤバいと言った時点、そして、実は3つとお姉さんが言った時点から、もう観客は思考を停止することを禁じられて「この映画、次に何が起こるかもっと観たい!」の超活性状態となります。

そして、首2つ問題の最終的な決着は、ビジュアル的(カッコよさ)にも、怪獣映画のコンテクスト的(キングギドラはメカになるような存在ではない)にも明らかにマジでゲロヤバい「メカ・キングギドラ」というガジェットの登場で、全宇宙(映画館)がカタストロフィと共に幸福感に包まれつつ終焉を迎えます。そう、ゴジラVSキングギドラは人類補完計画だったのです。

この映画を観終わった後、多分、みんな「タイムマシンあるんやったらあそこで、〇〇しとけば良いよな笑」と語るでしょう。でも、120分間とても楽しく過ごすことが出来ると思います。

だから、この映画は映画としての本質的な目的…つまり、観客に「この120分間は有意義な時間だった」と思わせるという目的を完全に果たしています。ビオランテに比べて、子供っぽいという意見もあるかもしれませんが、とにかく楽しい120分間を過ごさせてくれるVSキングギドラが私は大好きで、見事な映画だと思っています^_^

と、全く大森監督を追悼するような雰囲気の投稿とはなりませんでしたが、監督された素晴らしい映画の中の一つについて、それが如何に素晴らしいか、を語ることで、大森監督を偲ぶ文章とさせてください。

冒頭にも書きましたが、我々アラフォー世代のオタクにとって、VSシリーズは心の深いところにある、大きな芯の一つです。

大森監督の素晴らしい映画を心の奥に持ったまま、これからも生きていけることの幸運と誇りを大切にしていきたいと思います。

大森監督、素晴らしい映画を僕たちに持たせてくれてありがとうございました。

安らかにお眠りください。


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