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前半戦レビュー① AT砲の夜明け

0 はじめに

 今日から前半戦レビュー企画がスタート

 毎回選手を1-3名ほどピックアップし、個人にフォーカスして前半戦を振り返っていきます。

 初回となる今回は、それぞれ苦難を乗り越え入団7年目の今季ついに大輪の花を咲かせつつある横浜高校の同級生コンビ。

1 どん底からの大逆転劇

 記念すべき一人目の選手は髙濱祐仁。前半戦を振り返ったときに野手で最も輝きを放ったのは髙濱だろう。しかし、そこに至るまでの苦労は人一倍のものだったはずだ。

 髙濱は2014年ドラフト7位で指名を受け入団。1年目からファームで着実に力をつけ、3年目にはイースタンリーグの首位打者を獲得するなどゆるやかながらしっかりと成長を続けていた。しかし同世代の淺間や清水、石川直、太田(現・東京ヤクルト)が早いうちからどんどん一軍に呼ばれる中で髙濱にはなかなかチャンスが巡って来なかった。そんな中、2019年オフには戦力外通告を受け、育成選手として再契約。まさにゼロからの再出発となった。

 それでも昨季すぐに支配下登録に復帰し、今季は3番を任されるなどついにそのポテンシャルが花開きつつある。

2021年前半戦打撃成績

Run Value チーム2位、NPB全体36位
前半戦 95

2020年打撃成績

 今季の髙濱が打者として魅力的な理由は、安定したコンタクト能力もさることながら長打の多さにある。その秘訣は強い打球がゴロにならずライナー性もしくはフライで飛んでいく点にあるだろう。
 GO/AO(ゴロアウト÷(フライアウト+ライナーアウト))が0.74(チーム内最小(81打席以上)、近い選手として鈴木(広島東洋) 0.73や岡本(読売) 0.68)とゴロアウトが少ないことからもわかるように、スイング自体がライナーやフライを打つことに適した形になっている。そのため、捉えた打球が外野の正面をつかない限り長打になる可能性が高い。
 昨季からのストレート対応の改善と長打数の急増をみると、昨年の秋から今季にかけての間に打撃改造に成功したと考えられる。

 中田が負傷離脱していなければ髙濱が日の目を見ることもなかったかもしれない。後半戦ではその中田が戻ってくることが考えられ、ファーストのポジションを争うことになる。しかし前半戦の髙濱の出来からすれば相手が中田とはいえ、そう簡単にポジションを譲ることはなさそうだ。

2 ようやく掴んだセンターへの挑戦状

 二人目に紹介するのは淺間大基。彼のプロ野球選手としてのキャリアも決して順風満帆とは言えなかった。

 6年前、高卒1年目だった淺間は140打席で打率.285、OPS.683、クライマックスシリーズで高卒ルーキーとしてパ・リーグ初のスタメン出場をするなど鮮烈なデビューを果たした。
 しかしそこからの5年間は思うように野球のできない日々が続いた。慢性的な腰痛、骨挫傷、肉離れ、骨折などとにかく怪我に悩まされ、1年目に見せた天才的なバッティングはすっかり鳴りを潜めた。

 今季は開幕から怪我なく好調を維持。送球の弱さに課題を抱えている不動のレギュラー西川をセンターからレフトへと押し退け、センターでのレギュラーへの挑戦状を自ら掴んだ。途中コロナウィルス陽性反応が出て離脱することもあったが、交流戦の後半から再び調子を上げ、今季は一味違うというところを見せている。

2021年前半戦打撃成績

Run Value チーム9位、NPB全体123位
前半戦 80

2020年打撃成績

 淺間の課題は速いストレートへの対応と左投手への対応にあった。その課題が完全に解消したとは言えないものの昨季と比べれば大幅な改善が見られる。
 ストレートをある程度捉えられるようになったことで早いカウントで決着をつけることができ、成績が向上した。

 上の図は、淺間のストライクカウント別の打席数をグラフで示したもの。明らかに0ストライク、1ストライクで決着のついた打席の割合が増えている。

 気になるのは対左投手時のストレートのボール球スイング%が33.3%と高いこと。ストレートは基本的に最もボール球スイング%が低い球種であり、20%を超えるのは珍しい。他方で左打者が左投手と対峙したときに最も厄介なのが外へ逃げていくスライダーだが、曲がり球のボール球スイング%は16.7%と好成績。変化球を意識するあまりストレートに間合いが取れていないのかもしれない。ここさえクリアすれば、左投手に対する成績も向上し、シーズン打率.300オーバーも視野に入ってくるはずだ。

サムネイル:淺間大基 髙濱祐仁©報知新聞社

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