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打者をアプローチでタイプ分けしてみる

 交流戦4連勝フィニッシュを飾ってから意識を失っていました。それ以降の記憶が一切ありません。そろそろAクラスが見えてきた頃でしょうか。

 さて、今回は打席結果がどうやって生じるかを分解し、打者のタイプや課題を可視化することができないか考えてみます。

1 打席結果とアプローチ

 優秀な打者とは、どんな打者でしょうか。

 プロスポーツは結果が全てと言われます。
 打率3割、ホームラン30本、OPS8割超など、一般的に優秀な打者の基準とされているのは打席結果の積み重ねに区切りの良い線引きをしたものです。

 しかし、結果が生じるまでの過程からも打者を評価ができるのではないでしょうか。

 そこで、打席で結果が生じるまでの過程を分解してみましょう。

2 投球後の打席で起こること

 投球後の打者の結果を以下のようにまとめました。

0ストライクor1ストライク時結果
2ストライク時結果

 カウントに関わらず、打者の共通の目的はアウトにならないことです(バントというアウトと引き換えに走者を進塁させる作戦がありますが、この話をし始めると紛糾するので割愛します。)。

 まず、前提として、四球というルールがある以上、ボール球を見極められるかはカウントを問わず重要なポイントとなります。

 次に、野球のルール上、0,1ストライクと2ストライクでは、ファウルがストライクカウントを進行させるかという点で大きく異なります。
 端的に言うと、0,1ストライクにおいては空振りとファウルは同価値であり、反対に2ストライク後においては空振りとファウルでは打席が継続できるかという点で雲泥の差があります。

 そして、フェアゾーンに打球を飛ばさなければ、ヒットが生まれる可能性はゼロです。
 最終的には、フェアゾーンに打球を飛ばした上で、フェンスオーバーorノーバウンドで野手に捕球されず打者走者を含めた走者が進塁義務を果たさなければ安打は記録されません。

 そこで、ストライクボールの見極め、コンタクト能力、フェアゾーンに打球を飛ばす能力、打球の質という4つの評価基準を持つことで、打者ごとにどのようなアプローチをしているのか、そしてどこに課題を抱えているかが見えてくると考えました。

3 ファイターズの打者への当てはめ

  0,1ストライクと2ストライクに分けて上記の評価基準でファイターズの打者たちを見てみましょう。

 以下、出てくる数字の説明を先にします。
①Chase%
 ボール球をスイングした割合
②Z-swing%
 ストライクゾーン内のボールをスイングした割合
③ZoneC/F
 ストライクゾーンへのボールにはスイングをかけ、ボール球は見逃すことを正解とする正誤率
 ①と②を総合した指標
④Contact%
 スイング時にバットをボールに当てた割合
 0,1ストライクでは空振りとファウルは同価値であると考えるため、2ストライク時のみ活用。
⑤Fair-ball%
 スイング時に打球をフェアゾーンに飛ばした割合
⑥BAFair
 打球をフェアゾーンに飛ばした場合を分母とする打率
⑦SLGFair
 打球をフェアゾーンに飛ばした場合を分母とする長打率
 打球の質をより正確に測るデータを持っていないため、打率・長打率の指標を用いる。

0,1ストライク時
2ストライク時

①万波、野村、奈良間、今川
 彼らは浅いカウントでは狙った球が来たと思ったら長打を狙いスイングをかけていきます。その結果、ボール球を振ることも多いですが強いスイングで速い打球を飛ばすことができるため長打も多いのが彼らの特徴です。速い打球速度で角度のついた打球を打てる打者だからこそこのアプローチが許されるとも言えるでしょう。
 ただし、追い込まれて空振りが許されなくなったときに、自分のスイングをしつつボールを見極めることが苦手なため、三振が多く、ファウルで逃れることができてもボールカウントを進められないケースが多いです。

②上川畑、石井、谷内、郡司
 彼らは浅いカウントでも積極的に打ちにいくことはせず、自身の有利なカウントを作ってから勝負するタイプです。石井を除いてスイングした際にフェアゾーンへ打球を飛ばす割合が高くコンタクトを心掛けていることが見えてきますが、郡司を除いた3選手はフェアゾーンへ飛ぶ打球の質が良くないようです。
 これは、打ってもあまりいい結果が残せていないから自身の役割をわきまえて積極的にスイングをしていないのか、積極的に打ちにいかないスタイルが影響して思い切りのよいスイングができず打球の質が上がらないのか、判断が分かれるところでしょう。
 郡司が優秀だと言われる理由は、狙い球を絞るため余計なボール球に手を出さないこと、その上で狙い球を捉える割合が高いこと、この2点に尽きるでしょう。

③マルティネス、清宮
 彼らは理想的なアプローチに近いといえるでしょう。カウントに関係なくボール球は見逃し、ストライクゾーンに来た球にはスイングをかける。そして、それでいて打球の質も良い。投手としては細心の注意を要します。
 特にマルティネスについては、追い込まれてからの方がフェアゾーンへ打球を飛ばした場合の成績が良く、ボール球を見逃しながら適切なボールを自分のスイングで捉えられている証拠でしょう。

④加藤豪、ハンソン
 彼らは、0,1ストライク時に比べ、2ストライクになると著しく選球眼が良くなります。すなわち、いわゆる2ストライクアプローチが確立しているといえるでしょう。
 両者ともに打球の質が上がらず成績自体は低迷していますが、来日1年目であることを考慮すれば、今後さらなる順応を見せ、一気に好打者となる可能性を秘めているといえるでしょう。

⑤江越、アルカンタラ
 
とにかく前に飛ばすことが出来れば、強い打球が生まれ長打を期待できるタイプです。ボールの見極めは専ら読みに頼っている部分が大きいため、浅いカウントでもなんでも振りに行くわけではありません。
 追い込まれると変化球を振らないことへの意識が強いあまり、ストレートを通されるケースが多いです。
 スイング自体は十分打線のコアを担う素質があるため、あとはいかにボールにしっかりアジャストするかに尽きます。

 その他にも選手はいますが、特徴的な5タイプを紹介してみました。
 ③のマルティネスと清宮は打撃成績からもそうですが、アプローチの観点からもコアに据えるべきであることは間違いないでしょう。

 最後に共通して言えるのは、浅いカウントでフェアゾーンに打球を飛ばす割合の高い選手ほど打席がもらえる傾向にあるということ。何も起こらないことが確定している三振から逆算して考えれば、自然な帰結でしょう。
 松本や上川畑といった昨季と比べて成績を落としている選手たちも、アプローチ自体は崩れておらず、フェアゾーンに打球を飛ばすことでヒットを記録する試行回数を稼げる形はできています。
 反対に、五十幡や江越らはセンターで辛抱強く起用されていましたが、やはり打球を前に飛ばせなければフェア打球という母数が少なくなるため、なかなか起用しづらいと思います。

 アプローチというのは一朝一夕では改善できませんが、これから若い選手たちが多く③のグループに入ることができれば自ずと打線は強力になっていくはずです。

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