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戦力分析と来季に向けて 捕手編【F】

 2年連続の5位に終わった2020年シーズン。ポジション別に戦力の充実度とその課題について話していこうと思う。今回は捕手編。

1. 総評

 絶対的なレギュラーは存在せず、2人で今季の85%の出場機会を埋めた宇佐見と清水はともに打撃で大きなマイナスを作りWARの数値もマイナスに。全体として今季大きくマイナスを作ったポジションの一つだ。早急な改善が求められるだろう。
 昨季も課題のポジションの一つだった以上、打撃と守備の双方を求めるのは都合がよすぎるかもしれない。打てるならある程度守備に目をつぶるし、守れるならある程度の貧打に目をつぶろう。しかし、今季の捕手は双方がままならなかった。

2. オフェンス面の課題

 宇佐見と清水の打撃面について更に掘り下げると、両者のOPSはそれぞれ.450と.546。はっきり言えば、宇佐見については到底一軍レベルになく、清水についても一軍でレギュラーを張るレベルにはない。それほどまでに打力を期待されて入団した両者の打撃は落ち込んでいる。
 もっとも、捕手というポジションは打撃の平均水準が低い。OPSで言えば.700あれば大きな価値を生み出す選手となることができる。そこで両選手の対照的な打撃面の課題について見ていこう。

 宇佐見の課題は速球への対応だ。

右投手のストレートに対しては一定の対応を見せているが、動く速球と左投手のストレートに対しては全く対応できておらず、長打も一本もない。また、捕手は先発投手との関係で起用が決まるため、左右によるプラトーン起用は難しく、左右で苦手を作らないことが重要だ。
 速球、特に左投手の速球への対応を改善しなければ今季から出場機会が大きく減少することは必至だろう。

 一方で、清水の課題は変化球への対応だ。

 清水は、右投手の落ち球(フォーク、チェンジアップ系)と曲がり球(スライダー、カーブ系)、左投手の落ち球にあまりに弱い。特に右投手の変化球に対しては、コンタクト率も低く、3球振れば1球は空振りしてしまうのは深刻だ。
 ストレート対する対応は捕手として十分であるため、変化球への対応を改善すればOPS.700を突破することも夢ではないだろう。

3. ディフェンス面の課題

 ここまで打撃の課題について話してきたが、捕手に求められるのはやはり安定した守備力だ。守備力があることがレギュラーの前提ともいえる。
 しかし、今季のファイターズの捕手陣の守備でのパフォーマンスは満足のいくものではなかった。パスボール数は13で断トツのリーグワースト(清水が7(個人12球団ワーストタイ)、宇佐見が4、石川亮が1、郡が1)、エラー数も清水が8で12球団の捕手でワースト、宇佐見も5を記録している。問題なのは、併用制を敷き出場割合も40%そこそこにとどまる両者が12球団でワーストかそれに近い数のパスボール・エラーを記録していることだ。また、先日の記事で述べた通り、捕手の盗塁阻止能力も宇佐見を除き平均以下。打撃面の課題も深刻に見えたが、守備面の課題の方がより深刻なのかもしれない。

4. 来季に向けて

 先日のドラフト会議でファイターズは大卒捕手の古川 裕大を3位指名した。守備面には課題があるものの打撃に定評があるという触れ込みだ。現在の捕手の状況を考えれば、開幕から一軍も十分あり得るだろう。しかし、ルーキーに過大な期待をするのは危険だ。むしろ、22歳の古川をドラフト上位の枠を使ってまで即戦力として獲得したということから、「捕手の育成が上手くいっていない」という球団の見解を汲み取って、出場機会の多い宇佐見、清水のみならず年齢の近い石川亮や郡らが奮起することに期待したいところだ。

トップ写真 清水 優心(北海道日本ハム)©ベースボールマガジン社

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