見出し画像

スターへの登竜門【F】

 これまで打順に流動性を持たせ、様々なパターンの打線を組んできたBIGBOSSが、5月10日から当面の間、ファイターズの近未来の核を担うプロスペクトトリオ
3番・清宮幸太郎(22歳)
4番・野村佑希(21歳)
5番・万波中正(22歳)

を固定して起用することを明言した。
 "スター"候補筆頭の3人について、データから成長と課題を見ていこう。

1 清宮幸太郎、5年目の進化

画像1

 開幕前から理想のスイングデザインを追求し、打撃改造に取り組んできた清宮。打率こそプロ入り後の過去4年と同水準の.203と低く、メディアからの批判も多い。しかし、全15安打のうち、長打はその3分の2を超える11本。長打率昨季から.150アップの.473と大幅に向上しており、OPSで見れば.810、NPBであれば多くの球団でクリーンナップを打てる水準にまで高まっている。
 元々ホームランを量産するだけのパワーはあったが、芯に当て、角度をつけるというところに非常に苦労していた。今季は打撃改造の効果もあり、ゴロの打球が激減。GB/FBは昨季の1.09から0.27にまで低下した。これにより、芯に当たっても強烈なライト前ヒットというような場面が減り、外野の頭を越す長打、ひいてはホームランが増加したというわけだ。

 もう一つの大きな成長、それは選球眼の向上だ。現在ボール球スイング%は15.2、水準打席((試合数×2.1)打席)に到達する選手の中で、近藤や福田(オリックス)らに次いでNPB4位の好成績を残している。
 特に右投手に対しては球種を問わず見極めることができており、逃げていく球を追いかけないことで、カウント有利を作り、甘い球なら長打、ボールが続けば四球といったような打者主導の打席を作るケースが非常に多い。そこでの打ち損じが多いのは課題だが、それさえ解消すれば、あっという間にリーグを代表する打者になってもおかしくない。
 この点は残りの2人(野村、万波)とは大きく違う部分だと言える。その分、ストライクゾーンに来た球を見逃す割合もやや高いが、これは打者としての個性の一つにすぎず、いわば狙い球を絞るか、反応で打つかというような話だろう。

2 苦難のジェームス

画像2

 2年前の2020年シーズン、彗星のごとく現れた野村は、開幕直後の札幌ドームで強烈な印象を残し、一気にファンのハートを掴んだ。デビュー当初からの大きな課題であった守備に関しては、守備範囲、エラーの頻度ともに申し分ないところまで来ており、著しい成長を見せている。

 だが、そんな野村にどこか物足りなさを感じる。
 最大の魅力である打撃面がやや芳しくないからだ。もちろん高卒4年目の野手で打率.258、長打率.392という数字を当たり前のように残しているのは並大抵のことではない。しかし、2年前に想像していた完成形の野村佑希とはやや違った方向に進みつつあるのではないかと危惧している。
 ここまで127打席でホームランは3本、シーズンを通して出ても10から15本に収まる。野村は初球からどんどん振ってはいるが、こすったファウルが多く、前に飛んだ打球も清宮とは反対にゴロの打球が増加しているのは気がかりの点だ。

 それでも昨季苦手としていた左ピッチャーに対する成績は大きく向上しており、打席内でのアプローチに関する指標についても少しずつ良化している。デビューが鮮烈だっただけに期待が過剰だったのかもしれない。野村はゆっくりだが着実に一歩ずつ成長している。

 長打を量産することを第一目標とする清宮や万波とは違って、打率と長打の両立を目指す野村。打率と長打の両立は非常に難しいが、成長曲線がやや緩やかな今、この苦しい時期を乗り越えた先には、大きな栄光が待っているはずだ。

3 ザ・ポテンシャル、万波中正

画像3

 90打席で四球は0、コンタクト%はNPBワースト、それでもホームランは5本、長打も10本。ポテンシャルという言葉がここまで似合う選手は他にはいない。

 ホームラン5本中3本は右投手の抜けてきたカットボールを捉えたもの。カットボールやツーシームなどの速球系が得意なのは、まだ速いストレートに対するスイングが未完成で、そこから少し球速帯の落ちる球が来たときにバッチリ合うからだろう。これからストレートを捉え始めたときにはアンタッチャブルな打者になることは容易に想像ができる。
 それでも0-0、チーム無安打で迎えた延長10回に決勝ホームランを放ったり、千賀のストレートを弾き返し決勝タイムリーを放ったりと要所で活躍するのは、ある意味での割り切りが上手いからだろう。なんでもかんでも対応しようとするのではなく、ある程度「捨てる」部分があるからこそ、相手にとって不気味な存在のはずだ。

 守備に関しては、レーザービームを見せるなど既に一軍で十分やれるレベルであり、近藤の怪我も重なるなど、我慢して万波を使う環境は整っている。一打席でどうこうできるタイプではないため、スタメン起用が続く今、自分のスタイルを貫きながら一軍の厳しさを経験し、個性を生かしつつ順応していってほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?