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ファイターズは西川遥輝を手放すべきだったのか 前編

 2021年11月16日、ファイターズは西川遥輝、大田泰示、秋吉亮の3選手に対し、来季の契約を提示せず、チームの保留名簿から3選手を外した。この中でも、今シーズンもレギュラーとして130試合に出場した西川が事実上の自由契約となったことは格別大きな衝撃を与えた。ファンも多く名実ともにチームの顔だった西川を、球団はなぜ手放したのか。今回は前編と後編に分けて、その真意に迫っていく。

 西川遥輝の最大の特徴と言われて思い浮かべるものはなんだろうか。盗塁王を4度獲得したスピードや盗塁技術、その足を生かした守備範囲の広さなど魅力はたくさんある。

 一つの大きなストロングポイントは、選手としての耐久性の高さと安定した成績を叩き出し続ける継続性にある。

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西川遥輝 年度別成績(2011-2021)

 怪我の多かった高校時代とはうって変わって、レギュラーに定着した2014年以降8年連続で規定打席をクリア、その間合計4731打席に立った。また、8年連続で100安打を記録、2015年以降では7年連続で出塁率が.360を超える。怪我をせず結果を出し続けることはプロ野球選手として第一線で戦い続けるために最も重要な要素だろう、何より計算が立つ選手なのだ。そして、これがどんなに地位を確立しようと若手に負けない圧倒的な練習量をキープし常に確認作業を怠らないこと、並外れた自制心による自己管理によって積み重ねられた実績であることを忘れてはならない。

 もう一つのストロングポイントは、ゾーン管理能力だ。ボール球を振らない、この能力こそ西川遥輝がプロ野球選手となって11年で磨き上げてきた唯一無二の特徴だろう。4年ぶりの打率3割、キャリアハイとなる出塁率.430、OPS.825を達成した昨季から一転して苦しいシーズンとなった今季にあっても、2018年、2020年と二度リーグトップの四球数を叩き出したその選球眼は健在だった。

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2021年ボール球スイング% NPBトップ10(300打席以上)

 ボール球スイング%(ボール球を振った数÷ボール球の総数)はNPB全体でトップの11.44%、このボール球に手を出さない打席内での自律があったからこそ打率が.233と低く長打も無くても(本塁打 3本)、四球を89個(NPB全体で村上宗隆、浅村栄斗、島内宏明に次ぐ4位)も獲ることができたといえる。これは他の記事でも何度も言っていることではあるが、長打が少ないバッターが四球を稼ぐことは非常に難しい。このような性能を持つ打者は、ホームランバッターよりも希少となってきている(どちらが優秀という話ではない)。

 そんな西川も初めから選球眼が良かったわけではない。初めて規定打席に到達した2014年においては、四球の数は三振の数の半分にも及ばず、むしろ荒く振り回すようなイメージのある打者だった。そこから、徐々に改善を続け、今では日本で最もボール球を振らない選手に成長した。

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西川遥輝 K%とBB%の年度別推移(2014-2021)

 今季も苦しんだ印象が強い中で、BB%は昨季に次ぐ数字を叩き出している。ここまでの変貌ぶりは他者が真似しようとしても難しい。研究熱心で、改善したい点があれば納得がいくまで練習を続ける、そんな選手でなければこのような進化を遂げることはない。

 毎年怪我をせず、ボール球に手を出さず高出塁率をコンスタントに残す。こんなにも素晴らしい選手を、フロントはなぜ手放すことにしたのか。この決断の理由については、後編で探っていくことにしよう。

サムネイル:西川遥輝(北海道日本ハム)©THE DIGEST

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