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万波中正 覚醒の一年

 2023年シーズンも終了し、ファイターズは1974-75年以来約半世紀ぶり2年連続の最下位。勝率こそ昨年を2厘上回ったものの借金22は横ばい。頭を抱えたくなる事実が並んだ。
 皆さんは足早に2023年に別れを告げ、来季を見据えた新戦力の補強に心を躍らせているところでしょう。

 そんな2023年シーズンにも、選手個々にはポジティブな要素がいくつもあった。
 中でも万波 中正は最終盤まで本塁打王争いを繰り広げるなど一気にチームの顔になったといえる。
 今回は、万波の2023年の進化について分析していく。

1 基本スタッツ

 2023年シーズンの基本的な打撃成績は以下のとおり。

 プロ初の規定打席に到達。打席、安打、本塁打等の積み上げ系の数字は軒並みキャリアハイ。
 本塁打はリーグトップまであと1本の25本。
 三振数はリーグワーストだが、三振に関しても大きな改善がみられる(後述)。
 出塁率、三振%、コンタクト%は300打席以上の選手の中でワーストだったが、打撃の確実性と相手からの警戒度が高まり、出塁率は上位50%に。

 【参考】2022年シーズン打撃成績

2 ブレイクダウン

 より詳しく万波の今季の成績を昨季と比較してみる。

 まず特筆すべきは、三振%は35.7→23.7に大きく改善し(100打席あたり12個三振が減少)、全打席に占める三振の割合が低下。
 三振した時点で出塁することはできないが、どんな形であれバットにさえ当ててフェアゾーンに打球を飛ばせば出塁する可能性が出てくる(厳密には振り逃げでも出塁できるが、話を単純にするためにここでは無視する。)。
 すなわち、三振の割合を減らすことは、打率・長打率の向上に直結する。

 三振が減った大きな要因としては、2ストライク時のボール球スイング%の改善(48.6→38.1)が上げられる。
 その分見逃し三振は増えたが、それを補ってあり余るほど空振り三振を減らしている。万波のような長打のある選手に対峙するとき、バッテリーはボールゾーンで空振りを取りたいと考える。追い込んでから見逃し三振を狙いにいくのは、いわゆる"裏"をかく配球であり、ストライク球スイング%が低下したからといってどんどん見逃し三振を狙いにいこうとはならない。

 また、2ストライク後のアプローチが改善したのとともに、0,1sフェア打球の割合も向上(32%→44%)しており、追い込まれる前に勝負を決める打席が増えた。
 元来追い込まれる前の当てに行く必要のない場面で、フェアゾーンに飛んだ打球の期待値が高い選手であるため、追い込まれる前に勝負を決める打席が増えれば、その分大きな成績の向上を見込める。

 さて、次は左右・球種別成績で比較してみる。

 左右球種ともに満遍なく結果を残すことができているといえる。
 結論から言って、万波がここまでのブレイクを果たした最大の理由はストレートを捉えられるようになったことだろう。
 当然だが、ストレートはほとんどの投手の投球の50%近くを占める軸となる球種だ。ストレートの軌道が基本となるし、最も球速の速い球速でもあるため、打者のタイミングもストレートに間に合うようにとる。そんなストレートをなかなか打てなければ勝負にならない。
 万波は、昨季ストレートに対して打率.174、長打率.357だったが、今季はストレートに対して打率.297、長打率.594。一流の数字と言っても差し支えない。
 150キロ以上のストレートに限定しても、昨季は打率.118、長打率.265だったが、今季は打率.295、長打率.525。あのバウアーやオスナのストレートを完璧に捉えたのは記憶に残ってる人も多いだろう。
 ある意味ストレートを必死に打ちにいかなくても弾き返せるようになったことで、浅いカウントでの打ち損じが減ることはもちろん、ボールゾーンに逃げる変化球への対応にも余裕が出たはずだ。

3 総括

 ファイターズが低迷し始めた2019年頃から続いた長打力不足には過去の記事でも散々触れ続けてきた。

 そんなファイターズに25本ホームランを打てる日本人野手が出てきたことはチームにとって紛れもない兆しだ。

 プロ入りから色々な人から様々な指導をされたであろう中でも、自らの長所を信じ、信念を貫いてここまで来た彼は、新時代のスターにふさわしい。

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