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母の栗饅頭

ハッピーマンデーが導入されたのはいつからだったろう。
昔の休日は日にちが決まっていたのに、経済を動かすために遠出をしやすくしよう
お金を使わせようと休日は月曜日とくっつけて連休になってしまい。そもそもなぜ休みなのか?わからなくなった。

9月15日は敬老の日 だった。
朝、レッスンに行くとテーブルの上に栗饅頭がぎっしり入った密閉容器が置いてあった。

母が秋になると毎年作っている栗饅頭
昔は栗を大量に調達しては茹でて、あの硬い皮を剥くことからはじめていた。
栗だけを甘く煮て潰し洋風な風味の皮に包み、上には潰していない栗をのせて、卵の黄身を塗ってオーブンで焼く。昔の料理本に載っていたレシピ。
もう何十年も作ってくれているのに、一度も作り方を聞いたこともなければ、手伝ったこともない。いつも気がつくと、一人で黙々と楽しそうにたくさん作っては知り合いに振舞っていた。
89歳になった今年は20個。昔に比べれば半分の量だけれども、いつも通りの出来栄えである。今年も食べられた母の栗饅頭。
友人たちは、親の介護をしたり、そうでなくてももうお料理などできなくなった母親もいるというのに、我が母は栗饅頭を作っている。
私と母は運がいい。

でも、コロナ以来のステイホームだったこの猛暑の夏には体力も落ちて来たのか、
出歩くのも以前より負担になって来たようだし、耳もすっかり遠くなって、おそらく私の言っていることも半分くらいは適当に聞いているようだ。
動きもゆっくりになり、話もゆっくり。
薄ーい皮を剥がすように、少しずつ歳をとって来たのがわかる

今日は彼女の大好物のあんみつをおやつに買って行った。
思った通り嬉しそうに、パッケージを開けて食べ始めた。
その姿に、いつの間にこんなに小さく丸まったのかと思う。
「やっぱり うまいもんを食べるって一番大事」
と話す口調こそ変わらないが、姿勢や仕草はかつての祖母にそっくりで
いっそうおばあちゃんになった。

いつまで栗饅頭作れるんだろう
そんな今まで考えなかったようなことを考えるようになった

敬老の日

母の栗饅頭



テーブルに写るあんみつを頬張る母





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