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虎に翼 43話 またしても神回

今週は始めからきつかった。
先週の予告から次々と悲しい出来事が起こるのが見えて、すでに胸を痛めながら見始めた月曜日。
兄の戦死に泣き崩れる花江(森田望智さん)の演技がいきなり突き刺さる。
明らかに身体が弱っていく父直言(岡部たかしさん)の様子には辛い予感しかしなかった。そして42話の最後で、父が隠していた優三(仲野太賀さん)戦病死の知らせを見つけてからの43話。
すでに直言の余命も長くはないことを告げられ、ドラマの空気は重く、悲しみを重ねていく。そして食事中に家族を呼び寄せた直言が花江の将来を思って家族であることを確認すると、寅子は話を止めようとするが、花江が強く責め始める

生きてるうちにお別れできるんだから

夫がどこでどんな風に死んだかも知らされずに死亡の通知だけで失った妻の無念がいかに大きかったことか、そしてたとえそれが怒りであっても、生きているからこそ言葉にできるのだと、、
森田さんは、その柔和な顔立ちと可愛い声でドラマの開始された頃は世間知らずのお嬢さんを思わせていたけれど、実はしっかり人生設計するしたたかさがあり、嫁姑問題を乗り越えるうちに刻々と成長し、戦争を通して強くなっていく女性を見事に演じられている。もう一人の主役とも言える存在感だと思う

さて、花江の言葉で一気に緊張が張り詰めた猪爪家
ああ、なんと辛い、悲しいシーンだろう。これから死亡通知を隠していた父を責め、泣きじゃくる寅子を想像するとまた胸が痛くなると思ったそのとき、直言が話し始める

「寅子が優三くんと結婚するって聞いたとき、正直 ゆうぞうくんかあ〜と思った」
この一言から劇伴も音が変わる
そして、直言は寅子の結婚相手は花岡(岩田剛典さん)だと思って楽しみにしていたこと、花岡の下宿を見に行ったり、身辺調査していたこと、共亜事件の時は寅子はしつこいと思い、直明の頭が良すぎるのは、自分の子じゃないんじゃないか?と疑ったり、花江が強くなってやだなあと思ったり、次々と流れるように続く懺悔とともに音楽は明るい方へ。
悲しいはずだったのに、笑うしかなかった。

でも、寅子が「女子部に行くことを許してくれたのはお父さんだけだった」と、どんな時でも自分を愛し、励ましてくれた父親への感謝と共に映像が甦ると喜びも悲しみも超えた感動が溢れてきた。
岡部さんが1シーン1シーン作り上げてきた繊細な表情は、柔軟で、優しく、革新的な父親像。あのニューシネマパラダイスのシーンを思い出した。

全て話し切ってバタッと倒れる直言に家族全員が驚き。これはもしや?と
「お父さん!お父さん!」と声をかけた時、体に耳を当てたはる(石田ゆり子さん)が
「まだよ」
と言う一言の面白さ、いや、人が死ぬシーンを面白がるのはいかがかと思うけれど、
だからこそのこの匙加減。
悲しみと面白さの黄金比だった。

前回も書いたが、朝ドラと言えば、赤紙→戦死→涙というひながたを見事に裏切ってくれた虎に翼。
今回もまた脚本の吉田さん、出演者の皆さん、制作されている皆さんに拍手を送りたい。
ちなみに今日は3回とも全部見て3回目は録画してしまった。

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