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6月国会を振り返って

今国会では、人権やより脆弱な立場に置かれた当事者を軽視する法案審議がなされました。ジェンダー平等、人権が守られる社会を目指すFIFTYS PROJECTとして、これらに反対の意を表明するため、運営メンバーもみんなで反対デモに参加したりしていましたが、このタイミングで改めて私たちの意志を表明したいと思います。

LGBT理解増進法について

これまで性的マイノリティ当事者も中心にLGBT差別禁止法の制定を目指してきましたが、政治の場では特に東京オリンピックを機にその妥協案として「LGBT理解増進法」が議論されてきました。今年2月荒井元首相秘書官の「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」といった発言等を受け、その実現に向けた動きが再度活発化し、今回「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」が制定されました。しかしこの、維新・国民提出の法案をベースに、自民・公明との協議で決まった本法律は、特に当事者から大きく批判されています。中でも「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意するものとする」「この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする」という条文はいわゆる「多数派への配慮」であり、理解増進どころか、包括的性教育の推進を含むジェンダーマイノリティの権利に関する取り組みを阻害する可能性が示唆されています。すでに、2000年代男女共同参画や性教育バッシングを率いた議員や櫻井よしこ氏等を中心に、新たな議連「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性を守る議員連盟」も立ち上がっており、この法律を皮切りにジェンダー平等に向けた動きがさらに鈍化するのでは懸念がされています。FIFTYS PROJECTとしてもこの法律がジェンダー平等にマイナスをもたらさないよう、注視していきたいと思います。

入管法改正について

6月9日、国会では「入管法改正案」が強行採決されました。今回の改正によって、例えば、3回目の難民申請以降は、難民認定すべき相当の理由がなければ強制送還できるようになりました。その場合、迫害などで母国に帰ったら殺されるかもしれない人や、日本で育ち日本語しかわからない子供たちを危険な場所に送り返す可能性があり、これは日本も加盟する難民条約の違反でもあります。今回は、そもそも、難民審査参与員が、難民認定されずに不服申し立てをした人たちの中に「難民をほとんど見つけることが出来ない」としたことが、法改正の根拠となっていました。しかし、他は年に数件担当という参与員がいる中で、この参与員は、きちんと精査していたら物理的に不可能と思われるほど多い、全体の4分の1に当たる1231件の審査を担当、主に「不認定」を出していたという偏りが判明し、法改正の根拠すら揺らぐ杜撰な状態でした。他にも、飲酒した医師による診療や医師の不在といった入管における医療の手薄さ、入管職員による暴力といった問題も露呈しましたが、そういった点への改正もなく、今回の法改正はブラックボックスと化し人権を尊重しない入管をさらに強大化するものと言われています。ウィシュマ・サンダマリさんも、本来は入管収容ではなくDV被害者として保護されるべき状態にありましたが、その訴えは無視されました。この社会に存在するジェンダー不平等の現実は、より脆弱な立場にある人に皺寄せのように表れ、命をも奪う結果を生んでしまいます。私たちは、性別に基づく差別だけでなく、あらゆる差別への反対する立場を取り、この本改正案に抗議するとともに、地方自治体の立場からできることの模索も続けていきたいです。

ジェンダー平等とは、一部の女性が男性と同じように扱われるようになることを求めるものではありません。誰かが性に基づく差別を受けているのであれば、公正な社会のために声を上げる、共に寄り添うのがフェミニズムだと思っています。
今回、この法案の制定に関わった多くのマジョリティは、この法律ができてもできなくても、明日からの生活に全く影響がないでしょう。一方で、今回の決定でこの社会で生きていくことに絶望的な気持ちになる人、実際に精神的、物理的に日本やコミュニティから追い出される人がいます。


不同意性交等罪について

また、一点追加するとすれば、今国会では、性暴力被害当事者が求め続けてきた不同意性交等罪が成立しました。大変喜ばしいことです。しかし、その成立が国会会期の最後に回されることで、入管法やLGBT理解増進法についてどんなにおかしいと思い、最後に残る解散の切り札を切りたいと思っても、不同意性交等罪がいわば人質に取られたような状態で解散も強く求められない、という政治的駆け引きが展開されました。そのような国会運営を疑問に思います。

その上で過激化するトランスヘイト、トランスジェンダーバッシングに対して、私たちは毅然として反対し続けたいと思います。そして、より公正で、人権が守られる社会を求める声の輪を広げ、そのための道を切り拓いていきたいです。

そして、新しい道を切り拓く一つのアクションが、FIFTYS PROJECTの取り組む地方議会からジェンダー平等に取り組むことだと思っています。
絶望的な気持ちになったり、もう政治は嫌だなって思った人も多いでしょう。休みたい時は休んで、それでもここに仲間がいるということが伝わればいいなと思いこの文章を発表します。しぶとく、ひとつずつ、これからも一緒にやってきましょう!


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