「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」
「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」(麻布競馬場 集英社)
1991年生まれの著者による、twitter文学と呼ぶべきショートストーリーの本。この辺のネット記事を見て、前から読んでみたいと思っていた。
売れているだけあって、非常に面白かった。ただ20のストーリーを読んでいるうちに、お腹いっぱいという感じがしてきたのも確かである。学歴、職業、住所などのネームバリューへのこだわりがすごく強いことや、(著者の年齢に近い)30歳という年齢の焦燥などが形を変えて何度も押し寄せてくる感じの本だった。ただ、登場人物にどうしようもない貧困や絶望があるわけではなく、物質的には十分恵まれている中での変な焦燥のようなものが描かれている感じだった。
この著者が、50代に本を書いたら、どんな内容になるだろうと考えたりした。まったく別の意味での「虚無と諦念のショートストーリー集」になるような気もする。
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