見出し画像

「高学歴難民」

「高学歴難民」(阿部恭子 講談社現代新書)

NPO法人理事長の著者による、高学歴でありながら孤立したり犯罪に手を染めたりする「難民」についての本。著者が、日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立した方ということもあり、「高学歴難民」というのは面白い切り口だと思った。ただ何というか、読んでいてつらくなる本だった。特に後半の高学歴難民の家族の話は、なかなかしんどいだろうなと思った。学歴は、その人のたくさんの属性の中の一つにすぎないはずだが、本人も周りもそれを重視しすぎてしまうのが全ての問題の原因なのかも知れない。

 これまで私が関わった高学歴難民による事件を見ていく限り、難民生活の長期化で疲弊した末、追い詰められて犯行に及ぶ「困窮型」と、満たされない社会的承認欲求を他人を支配することで満たそうとする「支配型」に分けられると考えています。(29ページ)

 高学歴難民が社会的に孤立する要因として、連帯することの難しさがあると思われます。とりわけ、男性難民は学歴のプライドに加え、男としてのプライドの高さが連帯を妨げ、孤立を招いていると感じます。プライドが高いというのは、裏を返せば自己肯定感が低いのです。現状を周囲に知られたくないゆえに、遠方にまで移住する人も少なくなかったのです。元々、集団生活に馴染まない人も多く、他のマイノリティのように、連帯を呼び掛けたり、高学歴難民としてアクションを起こしたりする人はなかなか出てこないのかもしれません。(168ページ)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?