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「87歳、古い団地で愉しむひとりの暮らし」

「87歳、古い団地で愉しむひとりの暮らし」(多良美智子 すばる舎)

87歳の著者による、ひとり暮らしの日常を綴った本。お孫さんがその日常を動画にしてYouTube番組にして、多くの人に広まったらしい。

長崎で8人兄弟の7番目として生まれ、原爆で被爆し、結婚して子どもが成長して独立し、夫が亡くなって、ひとり暮らし。悲壮感はなく、ひとりを愉しむ姿勢が読んでいて楽しかった。80歳でピアスを開けたり、イギリス旅行のツアーに一人で参加したり、いろいろ積極的である。写真が多く、見るだけでも楽しい本である。

日々少しずつ、当たり前にできていたことができなくなっているのを実感します。でも、それは仕方のないこと。できないことはあきらめます。そして、まだできることを楽しめばいいのです。(39-40ページ)

いろいろあった人生ですが、恵まれた87年だと思います。私は、マイペースであまりがんばらないのです。どんなときでも、「楽しまないと損」と思い、つらいときでも楽しみを見つけることができるのかもしれません。だから、振り返ってみると、いつでも今が幸せと思ってきました。(42ページ)

花が大好きですが、お店で買うことはありません。値段が高いこともあるけれど、野山に咲いているような、さりげない草花が好きなのです。団地の私の花壇、朝のウォーキング途中の道端などで草花を摘んできたり、ベランダで育てている野菜の花や葉を活用したり、そういうものを家の中に飾っています。(130ページ)

「自分以外の人はみな先生」と思っています。年齢は関係ありません。同年代は少なくなってきましたので、今は、8歳下の妹世代の人と仲良くなることが多いです。年下ですが、みなさんしっかりしていて、学ぶことがいっぱいあります。先輩風を吹かすなんて、とんでもない。(168ページ)

私は「すぐやる課」なのです。気持ちが熱いうちに、電話をかけるなどして、とにかく行動を起こしてしまいます。(171ページ)

とはいえ、自分から嫌うことはなくても、「私のこと、嫌いなのかな」という人には、ときに出会います。万人に好かれないのが当たり前です。何事も完璧はありません。5~6割うまくいけばいい方です。人間関係も同様。そう思っています。(175ページ)

子どもたちが結婚してからは、こちらから口出しすることはありません。とくに息子2人は、「お嫁さんにあげた」と思いました。孫はかわいいけれど、こちらから連絡することはなく、子どもの側から「運動会だから見に来る?」と呼んでくれたときは、喜んで行っていました。(181ページ)

夫も亡くなり、ひとりの暮らしです。お金は節約しなくちゃと思い、年金の中で生活するようにしてきました。貯金には手をだしませんでした。でも80代も半ばを過ぎ、近頃はむしろ「お金を使わなくちゃ」と思うようになりました。あの世にお金を持っていくことはできません。きっちり使って死にたい。生きているうちに、もっと楽しまなければ、残すのは葬式代だけで十分。そんなふうに考えるようになっています。(200ページ)

幸せな人生だったと思っています。あらためて振り返ってみれば、戦争を経験し、大変なことはいろいろありました。平坦な人生ではありませんでした。でも、私は基本的に、あまりくよくよ悩まないのです。物事は良い方に考えるようにしています。人間関係も、嫌なことがあれば、それは他の人にしないようにしよう、勉強になったと考えます。どんなことも、どうせやるなら嫌々ではなく、楽しんでやろうとおもってきました。だから、これまでの人生で、嫌な思いをしたことがありません。「嫌だと思わない」ということでしょう。(207-208ページ)

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