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「死ぬ瞬間の5つの後悔」

「死ぬ瞬間の5つの後悔」(ブロニー・ウェア 仁木めぐみ 新潮社)

オーストラリア生まれで、多くの患者を看取った著者による、死ぬときに後悔することについての本。波乱万丈の著者の人生と重ね合わせる形で、多くの患者の最期についての経験談を述べている。ときどき足を止めて、自分の人生にとって大切なことを思い出すのも大事だと思った。
著者のブログサイトにアクセスしたが、本の出版が12年前であり、残念ながら見ることができなかった。

今年の2月の時点ではまだ見ることができたようだが。

https://web.archive.org/web/20240211135614/http://www.inspirationandchai.com/

 本当の自分を探し求めて長年の旅をした末にここにたどり着いたのに、このときはあっさりと決断できた。付き添いの仕事を選んだ理由は単純だった。創造的な仕事を目指すのに役立つこと、心から打ち込める仕事であること、そして何よりも家賃なしで暮らせること。心をこめて仕事をしたいという思いがここまでかなうとは予想していなかったし、それから先の数年間が自分の人生やキャリアにおいて、こんなにも重要な時間になるとは思ってもいなかった。(29ページ)

 西欧文化の社会では日常から死を閉め出し、死の存在自体を否定しているのに近い状態だ。そのせいで、死を迎える本人もその家族や友人も、誰しも避けられないものである死に実際に直面するとき、まったく覚悟ができていない。人間はみないつか死ぬ。それなのに死の存在を認めるどころか隠そうとしている。まるで本当に「見えないものは忘れられる」とでも思い込もうとしているみたいに。もちろん忘れることなどできない。私たちは目に見えるもので人生の価値を判断しているから、いつも不安なのだ。
 死が迫ってくる前に、誰もが避けられない死に正面から向き合い、受け止めることができたなら、手遅れにならないうちに、人生で大切なものの優先順位を変えることができる。自分にとって本当に大切な事柄にエネルギーを注げる。残された時間が限られていることを意識すれば、たとえそれが何年間か、何週間か、何時間かわからなくても、他人の評価や過大な自意識にそれほど振り回されなくなるだろう。そんなものでなく、自分の心からの望みに従って行動できるはずだ。死は刻々と近づいていて、絶対に避けられないという事実を認識すると、残された時間の中でより大きな目標を達成し、より大きな満足を得るための努力をするようになるのだ。(33ページ)

 そう、ヘザーがあの家を去ったのは、恐怖のせいなどではなく、母への愛のためだった。その後、私はこれと同じような状況を何度も経験することになる。死を迎える人の中には、家族に看取ってほしいとは思わない人もいる。そういう人たちは、意識があるうちにお別れを言って、家族には他の記憶を心に残してもらい、臨終のときはヘルパーに見送られたいと望む。(36-37ページ)

 私はこれを忘れていたなと思い、小さな声で笑ってしまった。これは前回学んだことではないか。もう限界で、本当にだめだというぎりぎりの状態になったときには、流れに身を任せ、そのときの状況を見つめるべきだ。そして今、また身を任せるときがやってきたのだ。
 身を任せることはあきらめることではない。まったく違う。身を任せるにはとても大きな勇気がいる。結果をコントロールしようという努力がつらくなると、身を任せられるようになることが多い。こうなると解放されたのと同じだ。うれしい状態ではないけれど。自分にできることは大きな力にすべてをゆだねること以外に何もないという事実を認めると、それがきっかけになって、滞っていた流れがどっとほとばしるのだ。(50ページ)

 病気になると、確実に自尊心のどこかが崩壊する。そして不治の病にかかったら、威厳などどこかに消え失せて、過去のものになる。自分が置かれた状況も、誰かにお尻をふかれるという事態も受け入れざるを得ないし、すぐに病気が重くなって、そんなことをかまっていられなくなるのだ。(57-58ページ)

 そしてこうして死に直面し、もう他人にどう思われるかなど気にしていない今、どうしてもっと早くこういう気持ちになれなかったのかと後悔し、激しく苦しんでいる。世間体を気にして、他人に期待される通りに生きてきたが、今になってすべて自分が選んだことであり、自分は先をおそれて何もできなかったのだと気づいたのだ。私は彼女をなぐさめ、自分を許す助けになろうとしたが、彼女はすべてがもう遅いという事実に打ちのめされたままだった。(59ページ)

 時が経つにつれ、彼の輝きは鈍ってきた。外界からの刺激がなくなって頭を使うことが減り、知性が麻痺していった。「人はその環境に染まる」という言葉通りになったのだ。
 人間は非常に周囲に影響されやすく、染まりやすい生き物だ。考えることができ、選択できる自由意思を持っている間は、自分の心で行動を決められるが、誰もが周囲の環境に多大な影響を受ける。自分の人生を顧みて、選択しようと意識していないかぎり。(72-73ページ)

 アンソニーが自分の人生に失敗したと思っていたことに私は衝撃を受け、それをきっかけにさらに前進した。アンソニーはまったく努力をしなかったから、向上や変化のチャンスを得られなかった。失敗というのは、成功するかどうかで決まるわけでも、何に挑戦するかで決まるわけでもない。何かをはじめれば、それでもう成功なのだ。アンソニーの最大の失敗は、環境に飲み込まれてしまったことであり、何かに挑戦し、それによって人生をよくしようという意欲をまったく持てなかったことが問題だった。彼のように知的ですばらしい人をこんなふうに失くしたのは大きな損失だし、彼が生まれ持った才能が活かされなかったことも残念だ。
 私を含めて人間はみな環境に染められるのだとしたら、自分にできる最良のことは、これからは正しい環境、つまり自分が向かっていきたいと望む方向に合った環境を選んで身を置くことだ。自分の夢に向かって生きるのには、まだ意志の力がひつようだけれど、こうして周囲の環境に自分がどれだけ影響を受けるかを認識できたので、道は少し進みやすくなった。
 そして私は、この自覚とあらためてわいてきた意志を持って、どんな人生にしていくのかを考えて意識的に選択し、自分の意志で選ぶことがどれだけ大切かを心に留めるようになった。(81-82ページ)

 ステージでの緊張を克服するために、別の手段も使った。練習は確実な手だった。自分を出すことが、演奏にも歌にも自信を持つことにいつも役立った。けれど特に役に立ったことが二つあった。どちらも自意識から自由になるための手段で、ステージの上だけでなく、どんな場面にも応用でき、役に立っている。
 不安になったり、「どうしてできるなんて思ったんだろう?」などという否定的な考えが浮かんできたりした時は、歌の途中でも瞑想をはじめるのだ。歌うのをやめたり、ステージに座り込んで蓮のポーズをしたりするわけではない。歌もギターも続ける。ただ自分の呼吸に意識を集中し、吸って、吐いてというリズムを感じる。その間、歌詞が途切れずに出てくるだろうかとか、ギターのどこを抑えるかを自分の身体が覚えているだろうかという心配をしてはいけない。自分を信じ、呼吸に集中するのだ。これはとてもうまくいく。この方法を採ると、私は落ち着いて前より表現力豊かに、存在感を持って歌えるようになる。
 もう一つ、私の考え方を変え、不安を克服させてくれた方法は、エゴを捨て、今は聴いてくれている人たちを楽しませることに専念する時だと考えることだった。演奏の前に、音楽が降りてきて、ここにいる人たちに喜びをもたらせることを感謝する簡単なお祈りの言葉を口にするのだ。こうして私は緊張から解放され、聴衆と同じぐらい思いきり音楽を楽しめるようになった。(94ページ)

 人は往々にして、将来の計画を立てることに時間をかけすぎる。幸せはずっと先になってから手にすればいいと考え、この世の時間はすべて自由になると思っていることが多い。明日があるのかどうか、本当は誰にもわからないというのに。(103ページ)

 「より良い暮らしを求めるのは悪い事ではない。誤解しないでほしい」彼は続けた。「でもさらに上を求めつづけることになるし、自分を業績や持っているもので判断したいという気持ちの表れだから、結果的に愛情とか、自分が本当に好きなことをする時間とか、自分の人生のバランスなど、本当に大事なものから離れていってしまう。きっと大事なのはバランスだ。そうじゃないかな?」(104ページ)

 ジョンは悲しげに微笑みながら私を見た。「家族以外に、この世に何かよいものを遺せるとしたら、この言葉を遺すよ。働きすぎるな。バランスを失わないようにすること。仕事だけが人生にならないようにしろ」私は優しく微笑み返し、彼の手を持ち上げて、手の甲にキスをした。(109ページ)

 私たちはどんな困難でも、乗り越えれば必ず何かを得られると話し合った。パールは言う。「運命に裏切られたという態度を取りつづける人も多いけれど、それで何になるというの?自分で自分を不幸にしているだけよ。全然運命のせいなんかじゃない。誰のせいでもないわ。自分の人生に責任を持てるのは自分だけ。人生を精一杯生きるには、自分に与えられたものをありがたいと思い、不幸だと思い込まないことね」(112ページ)

 「お金は本当に誤解されている。好きなことはお金にならないと思い込んで、ずっと自分に合わない仕事をつづける人たちがいる。その反対かもしれないのにね。本当に好きなことだったら、他の仕事より集中できるからお金がもっと入ってきてもっと幸せになれるかもしれない。もちろん、考え方を変えて、どうやったらお金がはいってくるかばかりを考えないようにするのには少し時間がかかるけれど」
 以前ある友人が、このことをうまく表現していたので、私はそれをパールに話した。我々はお金を重視しすぎている。必要なのは、やりたいことやプロジェクト、自分に合う仕事を見つけ、それに集中し、決意と信念を持ってやることだ。お金のために働いてはいけない。プロジェクトのために働くのだ。そうすればお金は後からついてくる。予想外のところから入ってくることも多い。(114-115ページ)

 「お金で大事なのはね、使い道よ」彼女はだしぬけにいった。私は彼女の考えに喜んで耳を傾けながら椅子をソファの方に引き寄せた。「立派な目的があるときが一番お金が集まってくるわ。私たちのプロジェクトが資金を集めることができたのは、人助けが目的だったからよ。もちろん私たちは毎日、意義のあることをしているという充実感を味わいながら、自分が本当にやりたいことをして、お金を得ていたのよ」
 パールは、だからこそ仕事の意義が大切なのだと語った。仕事に意義を見いだせれば、自然に、正しい目的意識を持ってそれにあたることができる。意義のある仕事はどんなものでも、何らかの形で他の誰かのためになる。その意義を実現するためにお金は集まってくる。我々はできる限りのことをするとともに、不安によってその流れをさまたげないようにしなくてはならない。とくに、中年になると、人生や世の中に様々な疑問がわいてくるだろうし、仕事で世の中とつながっていたいという気持ちが強くなるものだ。これがパールの言う意義を求める自然な気持ちだ。(119-120ページ)

 「私が後悔していることがあるとしたらね、ブロニー、それはあんなに長い年月をありきたりの仕事に費やすんじゃなかったっていうことよ。人生は本当にあっという間に過ぎていくわ。家族を失って、それがわかったの。けれど残念ながら、人はなにかがわかっても、それを実行できるとは限らない。だから以前は後悔していたとしても、今はもうしていない。そのかわりに、自分に優しくなることにしたの。早く前の仕事を辞めなかったことや、わかりきった事実になかなか気づかなかった自分を許すことにしたのよ」自分を許した方が後悔しつづけるよりも健全だ、と私はパールに同意し、これまで患者からどれだけ学んできたかを話した。(121ページ)

 パールの友人たちがお別れを言いにやってきて、その中にはコミュニティプロジェクト時代の同僚たちもいた。彼らは彼女のおかげで自分たちの人生がどれだけ変わったか、彼女の業績は消えない足跡となって、今もたくさんの人を助けていることなどを話してくれた。けれど人生の意義は立派な仕事である必要はない。何千人もの人を救う人もいる。一人か二人だけを助ける人もいる。どちらの仕事も同じように重要なのだ。(122ページ)

 自分の思いを口に出せないジョセフの苦しみを見たことで、私はこれからはいつも勇気を持って自分の気持ちを伝えていこうと決めた。私の心の壁は崩れ落ち、そしてどうして人はみな正直で素直になることをおそれるのだろうと思った。もちろん、正直さが痛みを伴うかもしれないからだ。けれどこうして壁を作るせいで、自分の本当の姿を知ってもらえなくなり、よけいにつらくなる。あの年老いた優しいジョセフが自分をわかってほしいと流した涙を見て、私は変わった。(152ページ)

 私たちは何時間も包み隠さず、本音で語り合った。若くして死を迎えるということについても話し合った。人は誰でも、自分はずっと生きていると思いたい。けれどそんなことはあり得ない。人生の嵐の中で、若いうちに亡くなる人は必ずいる。つぼみが花開き、まだ果実にならないうちに、自分にどんな可能性があったのかを知ることもなく逝ってしまう。大半の人は盛りを過ぎても生き続け、ゆっくりと長い年月をかけて衰えていくというのに。(156ページ)

 「人は生活に追われて、家族でも友人でも、大事な人たちと十分に過ごせなくなりがちだわ。けれど絶対に、大事な人との関係を取り戻し、素直にならなくては。みんな自分が死に直面するか、誰かを亡くして、罪悪感を抱えて生きるようになるまで、どれほど大事なことなのかわからないのよ」
 自分の気持ちを精一杯表現し、大切な人たちとできる限りの時間を過ごしていたら、罪悪感を持つことなどない、と彼女は語る。けれど愛する人がずっとそばにいてくれると思っていてはいけない。時間はあっという間に過ぎてしまう、自分にはお別れを言う時間があってよかったと感謝しているが、最期のときにこういう時間をもらえる人ばかりではない、と。じっさい、何百万人もの人が、不慮の死を遂げている。(159ページ)

 「そうよ、勇気が必要なのよ、ブロニー」ジュードが続けた。「それを言いたかったの。自分の気持ちを表現するには勇気が必要よ。特に自分が大変な状況にあって、助けが必要だったり、愛する人に正直な気持ちを伝えたことがなくて、どういう反応が返ってくるかわからなかったりするときはね。けれどどんな気持ちでもいいから、誰かと気持ちを共有する経験をすれば、だんだんやりやすくなっていくわ。プライドなんて時間の浪費よ。(161ページ)

 「もう娘には娘の生活があるし、長年の間に、私は手放さなきゃいけないと学んだの。私があの子をこの世に誕生させたけど、子どもは親の所有物ではないわ。親は子どもが自分で飛び立てるようになるまで導く役を与えてもらっただけ。そしてあの子は飛び立っていったのよ」(184ページ)

 死を迎えた人に関われるのは名誉なことでもある。彼らが話してくれた思い出話や身の上話を通して、私の人生は大きく変わった。この年齢で、死を迎えた人々が自分を振り返って考えたことを聞かせてもらえたのは非常に貴重な経験だ。私は死の床に就いてからみなと同じ後悔をするのではなく、患者から聞いた教訓を既に自分の人生に活かしている。新しい患者の家にやってきたときはいつもまた新たな教訓を得るチャンスのはじまりなのだ。それぞれの家はみな教室で、新たな教訓を与えてくれたり、以前に学んだ教訓を違う視点から見せてくれたりする場だった。とにかく私はたくさんのことを吸収していた。(194-195ページ)

 「よい友人関係は刺激になる。友達がすばらしいのは、ありのままの姿や、お互いの共通点で判断してもらえるからだ。大事なのは家族や配偶者みたいに相手の期待する姿を投影されるのではなく、ありのままの姿で受け入れてもらえることだ。友達づきあいは続けなければいけないんだよ」(210-211ページ)

 「自分で幸せを感じるようにしているんですよ。そう、私は毎日幸せになろうとしています。そうできない日もあります。あなただけじゃなくて、私も毎日大変な思いをしているんです。全然違うことでだけど、つらいのは同じです。けれど何かが間違っているとか、そのせいでどれだけつらかったかとかをずっと考えるのではなくて、毎日できるかぎり、こんないいことがあったと考えて、自分がそれをまさに経験していることに感謝しているんですよ」(225ページ)

 ローズマリーはその日、幸せになりたいけれど、どうしたらいいのかわからない、と言った。「そう、まずは三〇分だけ、幸せなふりをしたらどうでしょう。きっと楽しくて、本当に幸せになれるかも、微笑むという動作をすることで、実際に気持ちが変わるらしいですよ。だからしかめ面をしたり、文句を言ったり、何か否定的なことを言うのを三〇分でいいので、やめてください。そして代わりに、何か素敵なことを言い、必要なら庭の景色を眺めたりしてください。いつも微笑みを絶やさないようにしてね」と私は指示した。(229-230ページ)

 「幸せになってもいいと思うことです。あなたは素敵な人だし、幸せになっていいんです。自分を許して、積極的に幸せになってください」(230ページ)

 どんな立場の人にとっても、人生の意義を見つけるために働き、社会に貢献するのは、もちろん大事よ。けれど本人の幸せが最後の結果の善し悪しにかかっているのなら、それは間違っている。目標を叶えるまでの毎日をありがたいとおもうことが、今この瞬間の幸せを認識し、楽しむために大切ね。結果が出たときや引退してからじゃなく、その出来事が起こっているそのときにね(243ページ)

 私の患者たちは死の前に心の平安を手に入れたが、最期のときまで待たなくても手に入れることもできる。自分の人生を変える選択をし、自分の心のままに生きる強さを持ち、後悔せずに死ねるよう生きるべきだ。
 それにはまず他人にも自分にも優しくなり、許せるようになるといい。自分を許すことはとても重要だ。自分に優しくなると、人生を変えるために力を見つけやすくなる。いいことには時間がかかるものだから、辛抱強さも必要だ。人はみなすばらしい力を持っているが、自分自身の考え方のせいで、その可能性を狭めている。私たちはみなすばらしい。人は環境や遺伝によって形作られており、さらにはその遺伝子も一人一人違った歴史をもっていることを考えると、自分が特別ですばらしい人に思えてくる。これまでに重ねた人生経験はいいものも悪いものも、その人を地球上の他の誰とも違う人間にするのに貢献している。人はみな既にすばらしい。みな既に特別なのだ。
 それから自分が不幸だからといって他人を責めてしまった過去の自分を許そう。自分の人間らしさや弱さを受け入れよう。自分たちが不幸だからといってこちらを責めた人たちを許そう。みな人間なのだから。こちらが過去に言ったことにもしたことにも、もっと優しいやり方があったかもしれない。
 人生はあっという間に過ぎていく。何も後悔せずに終わりを迎えられる可能性もある。正しい人生を歩み、今の人生を目一杯生きるには勇気が必要だが、選ぶのも報われるのも自分だ。残された時間を大切に生きるには、自分に与えられたすべての幸運に感謝することが大切だ。何よりもすばらしい自分に感謝することが。(301-302ページ)

 ベッドの脇で聞いた、この世から旅立っていったあの愛しい人たちの後悔を繰り返さないためには、勇気と愛情が必要だ。選ぶのは自分自身だ。明るく元気に輝きたいと思っている光と同じように、導かれるままに一つ一つ選択していけば、やりとげられるだろう。
 本当の自分を失わないこと、バランスを取ること、気持ちを正直に伝えること、自分には幸せになる資格があると思うこと。このすべてを実行したら、自分を大切にできるだけでなく、最後の数週間に、もっと早くにそれができる勇気があればよかったと嘆いていたあの患者たちも喜ぶだろう。選ぶのは自分だ。人生は自分だけのものだ。
 困難が訪れて、どうしたら解決できるだろうと途方に暮れたり、誰かとの関係をどうしたらうまくやれるか悩んだり、必要な連絡がいつ来るだろうと待ちわびていたり、なにかを実行するためのお金をどうしたら作れるだろうと頭を悩ませたりしたときは、自分の心が何を望み、自分が何を望んでいるかを思い出すべきだ。運命の邪魔をしない方がいいこともある。できる限りのことをして、その後は運を天に任せるのだ。
 それからこういう状況に陥ったときは、背筋を伸ばし、肩をぐっと後ろに引いて、優しく深呼吸をするといい。今の自分を誇りに思い、自分にはその価値があると自信を持ち、祈りは聞き届けられ、幸運はすでにこちらに向かってきていると信じるのだ。そしてただこの短い言葉を思い出してほしい。
 「微笑みとともに知る」それだけで大丈夫だ。(311-312ページ)

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