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「メンタル脳」

「メンタル脳」(アンデシュ・ハンセン マッツ・ヴェンブラード 久山葉子 新潮社)

「スマホ脳」で有名な精神科医の著者による、中高生向けの心の取扱い説明の本。はるか昔の狩猟採取の時代に適合した脳で、変化の激しい現代を生きているために生じるさまざまな不具合を、わかりやすく説明している。内容的には「スマホ脳」と重なる部分は多いが、何度読んでもいい内容である。

 感情というのは「自分の周りで起きていることへの反応」だと思うかもしれませんが、そうではありません。すでに説明した通り、感情は周囲の情報と身体の中の情報を、脳が「説明」し、「まとめ」たものです。感情が生まれる場所があるとしたら、各情報が溶け合う島皮質なのです。(39ページ)

 脳の1番大事な仕事は「生きのびさせること」だというのは覚えているでしょう。脳はそのためにあらゆる道具(感情)を駆使します。脳にとっては、私たちが良い気分でいられるかどうかなどどうでもいいのです。良い気持ちを短くした方が効果的なら、脳はそれを利用するというわけです。(53ページ)

 「心配」が何かはよく知っていると思いますが、「不安」とはそもそもどんなものでしょうか。根本的には心配と同じ感情ですが、不安の方がもっと強く、長く続きます。
 不安は「事前のストレス」という表現が的確でしょう。(56ページ)

 意外かもしれませんが、記憶というのは決まった内容で固まったものではないのです。脳にとって記憶は過去を正確に映像化するものではなく、あくまでも今この瞬間にその人をコントロールするための道具です。必要ならば記憶を変化させたり、ある部分だけ大げさにしたりトーンダウンしたりすることもいといません。(78-79ページ)

 つらい記憶が何度も浮かぶなら、2度と起きないように脳があなたを守ろうとしているのだと考えてみてください。少々過保護な親のような感じでしょうが、思い出したことで心がつらくなるのは、脳が次も私たちを生きのびさせようとする代償なのです。(87ページ)

 ある実験で、子供たちに楽しくなる動画や音楽、別の子供たちには悲しくなる動画や音楽を観せたり聴かせたりしました。そのあとに、絵の中からできるだけ早くパターンを見つけるテストをさせます。そのテストは細かい点に注目する能力を必要とするのですが、楽しんでいる子供と悲しんでいる子供のどちらが成績優秀だったでしょうか。そう、悲しんでいる子供の方です。(108ページ)

 実際、運動はうつを防ぐために出来る1番重要なことの1つです。(120ページ)

 まるで脳が常に「人生の物語」を自分に語って聞かせているようなものです。うまく出来た物語では、1つの出来事がちゃんと次の出来事につながり、突拍子もないことが唐突に起きたりはしません。そう、私たちは脳から作り話を聞かせられながら生きているのです。そうでなければ人生が複雑になり過ぎてしまうからです。(126ページ)

 つまり、「あなたが孤独だと感じるなら孤独」なのです。孤独だと思わないなら孤独ではありません。
 孤独を感じているせいで身体が病気になることもありますし、うつにつながることもあります。孤独な人はそうでない人よりも寿命が短いことも証明されています。ですが、あわてないでください。病気の確率が上がるのは長い期間、何年も孤独でいた場合です。それにあくまで「確率が上がる」だけです。孤独な人全員が病気になるという意味ではありません。(148ページ)

 様々な調査で、1日に4~5時間SNSをやっている若者は「自分に不満を持っている」「不安や気分の落ち込みを感じている」ことが示されています。とりわけ10代の女子にそれが顕著なのは、女子の方がスマホを見ている時間の多くをSNSに費やしているからかもしれません。平均的に言うと、同世代の男子はもっとゲームをしています。(155ページ)

 よく、メンタルの不調から私たちを守ってくれる要素は「運動」「質の良い睡眠」「友人」の3つだと言われます。狩猟採取民の生活は「運動」と「友人」の2つを満たしていて、不眠も非常に少ないのですが、それも「運動」と「友人」のおかげかもしれません。(183ページ)

 すでに書いた通り、幸せを目標にがんばっても意味がありません。幸福感は長く続かない感情ですし、追おうとしても逃げて隠れてしまうものです。努力を傾ける先はゴールではなく、そこまでの道のり---ですから幸せのレシピは(そんなものがあるならですが)このような感じになります。
 1 一緒にいて快適で、信用出来る人たちに囲まれる。
 2 夢中になれて、意味を感じられることをする(他の人に対しても意味を感じられるようなこと)。
 3 1と2を繰り返す。(191-192ページ)

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