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「小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本」

「小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本」(小杉拓也 ダイヤモンド社)

塾講師の著者による、2桁×2桁の掛け算を簡単に暗算するための本。ひと言で言えば、「さくらんぼ計算とおみやげ算のドリル」である。どちらも、50年前に小学生だった(父)には馴染みのない計算法であり、興味深かった。

さくらんぼ計算とは、繰り上がりのあるたし算をするときに、足す数を分解して、足される数の1桁目とで10のまとまりができるようにして計算する方法である。例えば8 + 5 = 8 + (2 + 3) = 10 + 3 = 13というように計算する方法である。

おみやげ算は、例えば16 x 13を計算するときに、右の「13の一の位の3」をおみやげとして、左の16に渡して掛け算する。つまり(16 + 3) x (13 - 3) = 19 x 10 = 190となる。さらにその190に、「16の一の位の6」と「おみやげの3」をかけた18を足して 190 + 18 = 208となり、これがもとの16 x 13の答えになっているというものである。まとめると、16 x 13 = (16 + 3) x (13 - 3) + 6 x 3 = 190 + 18 = 208となる。

これで正しく計算できることの種明かし(証明)が、この本の80-83ページに面積図を使って説明してある。ただ数式を使ってきちんと考えると、例えば十の位がaで一の位がbの数と、十の位がcで一の位がdの数との掛け算 (a x 10 + b) x (c x 10 + d)では、dがおみやげとなるので、
(a x 10 + b) x (c x 10 + d)
= (a x 10 + b) x c x 10 + (a x 10 + b) x d
= (a x 10 + b + d) x c x 10 - d x c x 10 + (a x 10 + b) x d
= (a x 10 + b + d) x c x 10 + ((a - c) x 10 + b) x d
となるので、もし二つの数の十の位が同じ(a = c)ならばa - c = 0となるので
= (a x 10 + b + d) x c x 10 + b x d
となり、上の計算方法で正しく求められることがわかる。
ただし「十の位が同じでない」二つの数の掛け算では、a - cが0にならないので、この計算方法ではうまくいかないはずである。例えば23 x 14の正解は322だが、おみやげ算では(23 + 4) x 10 + 3 x 4 = 282となってしまって正しくない。

「おみやげ算は、十の位が同じ2桁の数どうしの掛け算でしか使えない」ということをきちんとわかった上で、使う必要がある。このような条件を本の中できちんと書いておいた方がいいと思うが、どこにも書いていなかった。上の数式を使わずに、なぜ使えないかを小学生に納得させるのはかなりの難題だが。

この本が、今年2023年に一番売れた本だそうである。

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