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「22世紀の民主主義」

「22世紀の民主主義」(成田悠輔 SB新書)

成田悠輔氏による本。民主主義の劣化が今世紀に入ってから世界的に進んでいることを指摘し、それに対する闘争や逃走の試みについても言及した上で、民主主義の新たな方向性として「無意識データ民主主義」を提言している。現在の民主主義に対する深い絶望と、それを変える試みの難しさが伝わってくる。政治に限らず、いま動いている仕組みを良い方向に変えていくのは何であっても難しいのだろう。誰もが現在の仕組みを前提に、自分が有利になるように動いているから、たとえ仕組みとして良いものであってもどう現実化するかは別問題である。著者もそのことは十分承知なのだろう。
「無意識データ民主主義」は、現在のように選挙の投票で政治家を選んで、全ての意思決定を託すのではなく、様々な民意データをセンサーやチャンネルから取得し、そのデータをもとに課題ごとに最適な決定を下すようにするものだそうだ。それによって政治家は不要というか、アイドル・マスコット・サンドバック的な役割に変わっていくと述べている。データから民意を集めるというのはもっともらしいが、データはデータであって、それをまとめたり意思決定につなげていくのはAIだけでは無理なのではないだろうか。

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