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「ひとりっ子の学力の伸ばし方」

「ひとりっ子の学力の伸ばし方」(富永雄輔 ダイヤモンド社)

進学塾VAMOS代表の著者による、ひとりっ子の教育法の本。ひとりっ子ならではの特徴を生かして育てていくためのヒントがたくさんあった。進学塾の人の本なので、多少割り引いて考えた方がいいにしても、早くから塾に行かせないと手遅れになるというようなことが書いてあって、親としてはやや気が滅入った。

 ちなみに、「大学受験の結果は中2までに決まってしまう」と、有名進学校の教師が言っています。もし、中学受験して失敗したとしても、最終的にはいい大学に合格すればいいわけですが、それでも中2までが勝負だということです。中学と高校の学習は連動しているので「高校で頑張ろう」では遅いのです。(78ページ)

 親はどうしても「急に成績をアップしてくれる魔法のようなもの」を塾に求めます。しかし、そんなものはないし、本当に成績をアップしたいなら、基礎の徹底はマストです。(100ページ)

 だから、子どもがなにかに夢中になっている時間を大事にしてください。この時間は、子どもの将来への大きな投資だと考えましょう。
 もちろん、メリハリは必要です。学校の宿題や、学力を伸ばすための基礎学習の反復はやった上での話ですが、できれば子どもがどんなことに夢中になりやすいのかを把握した上で、一人で好きなことに集中できる時間帯を親が確保してあげましょう。(107ページ)

 ひとりっ子は、独り言をよく呟きます。VAMOSにも、ブツブツ言っているひとりっ子がいます。それに気づいた親の多くが「変な子になっちゃった」というネガティブな評価をしますが、とんでもない間違いです。独り言の多さは、蓄えた知識を整理している証拠で、子どもの独創性が伸びる瞬間です。(108ページ)

 わが子について客観的に理解するには、比較対象を持つことに尽きます。その比較対象とは、立派な子育て本に書いてある内容ではなく、生身の子どもたちです。
 2人目以降の子どもなら、何事につけ「お兄ちゃんより遅い」「お姉ちゃんより早い」ということがわかります。そういう経験を持たないひとりっ子の親は、外にどんどん比較対象を探してください。
 大げさなことをしなくて大丈夫です。早い時期から習い事をさせたり、公園で遊ばせたりするのでもいいでしょう。軽い気持ちで子どもをあちこちに連れて行き、そこにいる同年代の子どもたちと比べてみましょう。(113ページ)

 これはひとりっ子に限りませんが、中学受験をさせるなら10歳くらいまではひたすら褒めて自己肯定感を高めてあげたほうがいいでしょう。(154ページ)

 そして、算数の原理原則は「比」にあります。すべての算数の問題は比に行き着くと言ってもいいくらいです。当然、ここを深く学ぶ必要があります。(173ページ)

 2%の食塩水80gに違う濃さの食塩水280gを加えたら9%の食塩水ができました。加えた食塩水の濃さは何%ですか?
 80 x 7 = 280 x □
 □ = 2
 よって9 + 2 = 11% (175ページ)

 子どもたちは、その写真を「見て」状況はわかってはいるけれど、「〇〇が、××をしている」という主語と述語を用いて書くことができないのです。(191ページ)

 国語がまったくできない子どもたちに多いのが、この「他人の気持ちがわからない」というケースです。性格的に冷淡だからわからないのではなく、経験がないからわからないのです。(195ページ)

 表やグラフを読み取る入試問題
 2022年渋谷教育学園幕張中学校<1次>
 新型コロナウイルスのRNAを作る4種類の物質の配列などに関する問題 (206-209ページ)

 そうした大雑把な暗記には、歴史漫画、NHKの大河ドラマなど、子どもが楽しんで学びを得られる材料を用意してあげましょう。(210ページ)

 暗記しなければならないことが多い社会では、覚えるために五感をすべて使いましょう。(中略)その子にとって覚えやすければ、どんな突飛なやり方でもいいのです。(213ページ)

 あるいは、博物館でさまざまな展示品を見るだけでも、社会の問題を解くヒントが頭の中に蓄積されます。
 だから、子どもに、現地・現物を見せてあげることは、社会に強くなる上でとても重要なのです。(214ページ)

 そうした状況にあって、子どもに漢字の力をつけてもらうためには、家庭で訓練を重ねるだけでなく、日常的に親が漢字を使っていることが大事です。
 ちょっとしたメモなども、できる限り漢字を使いましょう。(217ページ)

 ニュース番組についても、わが子のレベルに合わせ切り捨てないようにしてください。「うちの子にはミャンマーは難しいわ」と思っても、テストには出るのです。普段から親子でニュース番組を一緒に見て、1分でもいいからその内容について話をしましょう。(219ページ)

 子どもたちにとって「バブル経済」は、親世代にとっての「戦後高度経済成長期」と同じような過去の出来事です。東日本大震災だって、中学受験をする子どもたちは自分事として知りません。こうした、親にとっては「わりと最近のこと」が、立派な歴史問題として出題されるということを知っておいてください。(222ページ)

 まず認識してほしいのが、小学校でも扱うようになったため、どんな子でも親世代よりは英語ができるということです。だから、安易に「この子は英語力に秀でている」と思ったら失敗します。
 兄や姉のときに経験を積んでいないひとりっ子の親は、ずっと勘違いしたままでいる可能性があるので注意が必要です。
 加えて、小学生の英語学習については、まだメソッドが確立していないので、塾や教材選びが重要になります。親は、客観的にわが子を見て、背伸びしすぎず過小評価もせず、最適な環境を整えましょう。基準を持つために、英検を受けてみるのもいいでしょう。(224ページ)

 幼いうちは、そもそも机をどういう状態に整えればいいのかわかりません。そのため、勉強を始めるまでに時間がかかり、40分の勉強時間を確保したつもりが、正味20分しかやっていなかったなどということになりがちです。ましてや、兄や姉というマネできる存在がいないひとりっ子の場合、親がお手本を示してあげねばなりません。ただし、毎回やってあげる必要はなく、1回お手本を示したら、次からは子どもにやらせましょう。(233ページ)

 まず、理解しておきたいのは、子どもの集中力は大人ほど続かないということです。子どもは勉強が嫌なのではなく、長い時間、集中できないのです。子どもが集中できる限界は、せいぜい20分くらいだと私は考えています。
 そうした子どもの特性を考え、隙間時間の学習をルール化しましょう。(239ページ)

 しかし、基礎を積み重ねている低学年の頃は、もっと手近なところでモチベーションを喚起する必要があります。
 1つには、親がまめに褒めること。ちゃんと自習したり、隙間時間に計算問題を解いたりしたら褒めてあげましょう。
 もう1つ、「親の手を借りずにできることをやらせる」のも大事です。(241ページ)

 そして、こうした基礎学力は、訓練次第で伸びるということを覚えておいてください。基礎学習については、やっている日数を重ねればそれだけ力がついていきます。と同時に集中力も鍛えられます。
 だからこそ、計測が必要なのです。その計測は、他者と比べるものではなく、その子自身の成長を計るものです。わが子が確実に成長していれば、それでいいのです。(245ページ)

 練習問題について、親は、その子が「やったか、やらなかったか」ではなく、ましてや「どのくらいの時間やったか」ではなく、「できたか、できなかったか」で見ていってください。(248ページ)

 とくに、中学受験をめぐる環境は様変わりしました。親世代の頃は、中学受験にかける準備期間は約2年でした。5年生になってから塾に通い始めれば良かったわけです。
 しかし、今は3年から3年半が必要になっています。つまり、3年生のうちに塾に入ってなんとかギリギリというところです。(255ページ)

 私はよく「今から1個ずつ扉を開けていくことでしか未来にはつながらない」と言っています。まずは、目の前の扉を開けましょう。(259ページ)

 一方、父親が子どもと共依存に陥る場合、たいていが「夢託しパターン」です。
 自分ができなかったことを子どもに期待するわけですが、その覚悟が半端なのです。
 冬季オリンピックで活躍した平野歩夢選手のように、頂点を極めたアスリートには、親が徹底して環境を整えてあげれいるケースが多く見られます。イチローさんの場合もそうですが、父親が率先してそれをやっています。ほとんど「自分のすべてをなげうって」子どもに尽くしているのです。
 それくらいの覚悟があるならいいでしょうが、多くの場合、半端です。
 親は「よかれ」と思ってやっているつもりでも、そこに「共依存」の芽がないかどうか、一度確認してみましょう。(261ページ)

 一緒にテレビを見たり、ニュースに触れたりしながら、子どもとたくさん会話を交わしてください。そのときに、子ども言葉を使わずに、一人の人間として意見のやりとりをしてください。(263ページ)

 自己肯定感は、10歳までは徹底的に高めてあげましょう。(267ページ)

 企業でも学校でも学習塾でも、今一番難しいのが「叱ること」です。すぐにパワハラという指摘がなされてしまうため、怖くて叱れないのです。
(中略)
 ところが、今の10代は、「怒るということ自体がいけないこと」という社会的風潮の中で育っています。そのため、怒られたときに、それが自分のせいだという意識はまず持ちません。怒ったやつが悪いのです。
 だから、「なぜ、あなたが今怒られているのか」ということについて、その意味をちゃんと説明しながら叱る必要があります。
 とくに、ひとりっ子の場合、怒られる経験値が圧倒的に少ないので、いきなり大きな声で叱りつけたりすると、相手が親とはいえ心を閉ざしてしまう可能性があります。
 一方で、ちゃんと説明すればわかる子も多いので、面倒ではあるけれど納得するまで丁寧に伝え、納得させましょう。(268-269ページ)

 ひとりっ子を褒めるとき、男の子の場合は量より質にこだわりましょう。男の子は精神的に幼いので、応援の言葉もそれに合わせて選ぶ必要があります。たとえば、自分が憧れ心酔している人の言うことは非常に響き、素直に聞きます。そういう人に褒められようものなら、どこまででも調子にのって上っていきます。そこで、親だけでなくいろいろな人が、さまざまな角度から褒めてあげるといった褒め技を、上手く使いましょう。(271ページ)

 絶えず競争に晒されているのに、競争心が弱くなっているひとりっ子は、気をつけないと疲弊し折れてしまいます。かといって、「だから競争させない」というのは得策ではありません。それをやっていたら、その子は落ちこぼれてしまいます。
 親は適宜フォローしつつ、勉強やスポーツ以外のことでもいいので、普段から小さな競争を積ませてあげましょう。(274ページ)

 子どもの可能性を探るには、幼い頃からいろいろな習い事をさせたり、あちこちに連れて行ってさまざまな経験を積ませてあげることが大事です。
 そうした場を探すことも、そのためのお金を使うことも、子どもは自分ではできないのだから、親が全面的に頑張るしかありません。
 しかし、「そこからどうしたいか」は、子どもの欲求にしたがって決めさせればいいのであって、親が先回りして道を作る必要はありません。
 まずは、親がサッカー好きならサッカーをやらせてみたらいいでしょう。それで好きなら続けさせ、そうでなければほかのことをやらせましょう。(283ページ)

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