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「ターゲット-ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか」

「ターゲット-ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか」(ジェローム・シュシャン 髙橋書店)

フランス人で、ゴディバジャパン社長の著者による、弓道の考え方に則ったビジネス論の本。正しい姿勢で仕事に臨めば、結果は必ずついてくるという話は、やや理想主義過ぎる感じはあるが、日々の仕事でつい忘れがちなメッセージである。読みやすく、勉強になった。

 ゴディバジャパンは、この5年間で2倍の売り上げ増を達成しました。
 今の時代、どんなビジネス戦略を立てれば、このような結果が出せるのか?皆様の関心の的はここにあると思います。
 その答えは、結果を出せるビジネスの正しい姿勢を、長年続けている弓道から学んでいたからだと私は考えています。弓道には「正射必中」(正しく射られた矢は、必ず的に当たる)という考え方があります。ビジネスの世界に置き換えると、「お客様のことを本当に考えてよい商品を作れば、結果は必ずついてくる」という意味になります。(6ページ)

 成長するためには、自分のコンフォートゾーンの外に出なければならない。
 新しいことにチャレンジするとき、誰もがこれでよいのかという不安に陥ります。そして、自分の「居心地のよい場所」であるコンフォートゾーンに戻ろうとします。しかし、そこに戻ってはいけないのです。新しい試みが、快適でないとしても、それはステップアップをするためには必要なことです。弓道でも、確実に的に当てることばかり考えていると、新しいことを教えられても実践しょうとしなくなります。それは、コンフォートゾーンから出て、慣れないことに挑戦し、ミスが出るのを嫌うからです。(54ページ)

 落ち続けている私に、一人の年老いた弓道の先生がおっしゃいました。
 「弓道の審査は、合格するために受けるのではなく、修練し、学ぶために受けなさい」
 この言葉は、今までの私の価値観を大きく変えました。(82ページ)

 弓道が教えてくれた重要なことの一つは、人生は決して自分の思うようにならないということです。弓道にも人生にも百発百中はあり得ないのです。
(中略)
 では、私はなぜ弓道を続け、仕事を続けているのか? それは、弓道もビジネスも、自分を向上させてくれるからです。そしてときに、自分が射た矢が見事に的を射て、気持ちのよい喜びの瞬間を私に与えてくれるからです。(86ページ)

 しかし、そのままヘネシーで働くことにも魅力を感じていなかったのです。
 そんなとき、妻がこんなことを言いました。
 「問題はどこで暮らすとか、どこの会社で働くとかではなく、仕事の内容で選ぶべきじゃないかしら」
 その言葉は、悩んでいた私の目を覚ましてくれました。私はこのとき確信したのです。社長という責任あるポジションに興味があるなら、その仕事を選ぶべきだ。人生で何かを選択しなければならないときに悩んだら、「自分の本当にやりたいことを純粋に選ぶ」。それが一番正しい選択の方法だと思いました。(112-113ページ)

 弓道場では、中国の古典「礼記(らいき)」から、弓道の教えを抜き出した「礼記射義(らいきしゃぎ)」
という一節がよく唱和されます。その「礼記射義」には次のような言葉があります。
 内志正しく、外体直くして、然る後に弓矢を持ること審固なり。
 「矢を的に当てるためには、自分の内側を正しくして、外側を整え、丁寧に弓矢を持つという行為が先ず必要だ」という教えです。
 それは会社でいえば、外側にいるお客様を喜ばせるためには、内側である社内が明るく、社員が幸せであるように心がけなければいけない、ということなのです。このような内側と外側のバランスの大切さを、私は弓道から学びました。(132-133ページ)

 ゴディバには「Our Way」と名づけられた世界共通の企業理念があります。この企業理念は、インスパイア、エンブレス、ディライト、デリバーの四つの言葉に集約されています。私はこの理念を身につけることがとても大切だと考えています。
 インスパイアは「お互いに情熱を鼓舞しながら、信頼し、助け合い、ともに成長しましょう」、エンブレスは「フレッシュなアイデア、進取性、独創性を取り入れて、アクションを起こしましょう」、ディライトは「お客様を喜ばせ、社内も社外も明るくしましょう」ということです。そして、デリバーは「結果を出しましょう」という意味で使われています。(141-142ページ)

 「第二の人生をどうするか。これを考えなければならない」とは、経営学者として世界的に有名なピーター・ドラッカーの言葉です。「知的職業に就いた人は、その仕事に飽きがくるときがある。そのときのために、もう一つの仕事を準備しておきなさい」というのです。たとえ、仕事に飽きがこないとしても、会社を退職しなければならない時期が、いつかは訪れます。芸術家や自営業など、年齢に関係なく続けられる職業以外には、必ず引退の時期があります。それなのに、仕事を辞めた後どう生きるか、あまり考えていない方が多いのです。
 日本人の多くは、仕事を辞めてのんびりできる、子会社に入ってもう少し働きたい、そんな漠然とした感じでしかセカンドライフについてイメージしていないようです。やはり、残りの人生と考える方が多いのかもしれません。
 しかし、60歳で引退し、仮に90歳まで生きたと考えると、残りの人生は30年もあります。赤ちゃんから30歳までといえば、相当長い年月です。これを余りの人生、残りの人生と考えるか、第二の新しい人生と考えるかでまったく違うものとなるでしょう。早くから仕事以外の別のコミュニティーに参加していれば、60代の頃には大ベテランです。ちょうど定年で会社を引退する頃に、別の世界でお役に立てるベテランになっているのは理想的ではないでしょうか。(149-150ページ)

 私たちは、ものごとがうまくいかないと、いろいろな場面で言い訳を探してしまいます。
 ビジネスの局面でいえば、競争相手や上司、職場の環境や市場の状況、景気など、材料はたくさんあります。
 しかし、弓道を続けていると、段々そういうことを言わない癖がつきます。
 自分自身に目を向けるようになり、自分の所作を点検するようになります。失敗の原因を相手や環境に求めなくなる。これは、弓道を学んで得ることのできる、大きなメリットだと思います。
 失敗の原因を相手や環境に求める考え方は、自分の上達や向上を妨げるだけです。人のせいにするよりも、自分自身の向上にこそ集中すべきなのです。(158ページ)

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