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『推定少女』を読んで

 昨年の秋に近くの図書館で桜庭一樹の『推定少女』(角川文庫版)を借りた。読み終えるのにそこまで時間はかからなかったと記憶している。今回はその時の感想を書き記しておこうと思い、筆を執る。

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簡単なあらすじ

 訳あって警察から逃げている中学生、カナは、隠れようとしたダストシュートの中に美少女が先に居たことに気づく。その少女は何故か拳銃を握っていて、自分の事を覚えていなかった。二人は行動を共にすることにし、カナは少女を白雪と呼ぶことにした。
 行くあての無い二人は東京へと出る。そこから二人の道中は思いもよらない方向へと進んで……


白雪とは何だったのか?

 作中の重要人物、白雪とはなんだったのか? この作品には異なる三種類の結末が用意されているが、結末によって白雪の正体は違っている。だが、いずれにしろ、白雪は主人公のカナに何らかの重大な変化を与えている。
 私が思うに、白雪というのは少女という概念そのものなのではないだろうか。少女という概念そのものが、子供と大人の境目にいたカナの前に現れて、変化を与えていく。カナが成長するために必要な存在だったのではないだろうか。


カナが見つけたものとは?

 主人公、カナは自らの環境に居場所を見つけられず、ある事がきっかけで逃げることとなり、そこから様々な出来事に巻き込まれていく。カナは大人と子供の境目に立っている人物だと私は考えている。彼女は、白雪との出会いや多くの出来事を経験し、大人と子供の境目を超えて居場所を見つけていく。      この作品は彼女が何らかの居場所を見つけるまでのお話なのだと思った。


推定少女とは何なのか?

 作品のタイトルである「推定少女」とは何を意味しているのか? 「推定少女」とは子供でも大人でもない境目にいる少女、この作品ではカナや白雪のことを指していることは明白である。だが、私はどうしてもそれ以外の意味があるのではないかと読み終えてから頭の中でずっと考えている。
 それを理解し得るにはまだまだ時間が掛かるとは思うのだが、いつかは理解できる日が私にも訪れるのだと思う。


まとめ

 私がこの作品を読んで感じたことは、大人になるとは何かに折り合いをつけるということ、子供心は何かに折り合いをつける過程で失われていくということである。子供心が失われていくのは悲しいことかもしれない。だが、それは決して悪いことではないのだと、この物語は教えてくれているような気がした。図書館で借りた本を読み終えた後、私は本屋で同じものを購入した。そうする程に私の中では印象に残っている作品である。とても良い読書体験だった。

#読書の秋2021

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