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「埋没コスト」は無視せよ

12年前に日本の家電業界を代表する世界的なS社が破綻して結局他国の同業他社の傘下に入りました。技術力もブランド力もある企業が短時間にして崩壊したのです。乱暴に一言で理由を述べると「失敗しつつあることが明白な大型工場建設を経営幹部が途中で中止する勇気を持たなかったこと」に尽きます。世界的に供給過剰の傾向が見えていたにもかかわらず、あり得ないような規模の行政の補助金(=税金)まで「地元での雇用創出」に繋がると県知事自らも旗を振って提供する始末で、典型的な官民協調の悪しき例になりました。結局、販売は伸び悩み設備投資は殆ど無駄になりました。その後の地元経済の凋落ぶりと官民幹部の責任逃れは見苦しいほどでした。

ここでの教訓は「投資や人員投入を続けても、もはや期待した結果は得られない場合は損切りをなるべく迅速に行う」ということです。「もったいない」「せっかく頑張ってここまでやったのだから」、そのような感情は横にどかして、「支払ったコストと将来発生するコストと収益を比較して続行か否か」を冷静に判断することです。一旦発生してしまったコストは利益を通してのみ回収できます。回収の見込みが大きいなら損失が発生しても一時的なものと見做して事業を継続する選択肢はあり得ます。回収する可能性が無い、或いは非常に不確実な場合は既に投入してしまったコストは「埋没コスト」として無視するのが正しい経営判断です。「埋没コスト」として割り切れば、投入している経営資源を他の分野やプロジェクトに振り分けられて新たな活路が見つけられる可能性が出てきます。

ビジネスは見栄や政治的判断に囚われると結局火傷をします。

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