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「日本循環器学会」が 『日本で最高の”学習する組織” の1つ』 だと知った

コミュニティマネージャーの経験値を増やすために活動しているときに、ヒデ(@hide__tokyo)さんに教えて持った。
「日本循環器学会」は調べてみると面白いよ!と教えてもらったので、がっつり調べてみました。

知れば知るほど、高度な「学習する組織」でした

まず学習する組織とは

「学習する組織」とは、システム思考を基盤としながら、個人とチームが効果的に変化をつくりだす力を継続的に開発する組織のことで、ピーター・センゲが世に広めました。
組織学習の基本単位はチームであり、学習する組織を行うチームでは、すべての構成員が自律性と協調性を持ち、環境に適応する強さと将来の変化に対応する柔軟性を理解し実践することにより、組織全体が学習する能力を備えているといえます。
センゲ氏は、学習する組織を実現するための方法論として「自己マスタリー」「メンタルモデル」「共有ビジョン」「チーム学習」「システムシンキング」という5つのディシプリン(学習領域)を提示しています。
5つのディシプリンは相互に影響し合い成り立っており、一つの集合体として機能することを重視しています。

日本循環器学会とは

京都大学真下俊一教授の呼びかけで1935年(昭和10年)に設立。歴代理事長・代表理事は、現在18代目(2016- 小室 一成(東京大学))。85年間の運営されて続けている。
1978年9月、東京に於いて第8回世界心臓学会が開催された。計17会場で特別講演12、シンポジウム45、一般演題1300の他、学術展示、教育セッション、サテライト・シンポジウムなど世界でも最大規模の学術討論会が7日間にわたり開催された。
2001年、第65回総会では、第二公用語として英語を採用した。抄録は全て英語となり、口頭発表の約4割が英語で行われた。
日本循環器学会は、日本における循環器病の研究・診療において先導的な役割を果たして来た。特筆すべき点として、ガイドライン作成や1999年の心臓移植再開に向けた移植対象者の判定など、社会的使命についても組織を挙げて取り組み、国内の医療レベル向上にも多大の貢献を果たしつつある。

日本循環器学会の事業計画を見ると、2018年度より委員会、部会間の情報共有を可能とし、効率的な活動委員会組織運営を目的として5つのセクションを設けている。

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事業計画を読み解いてみると、継続的に下記の9項目を中心に運営している。

①学術集会 - 地方会
②学会学術誌
・国際編集会議
・地方会抄録
 地方会抄録オンライン検索システム「症例くん」に、開催された地方会のデータを登録
・循環器学用語の検討
・学会ニュースメールの配信
③学術研究助成事業
・循環器疾患診療実態調査
・医療の質評価事業
・学術研究班
 複数のガイドライン作成班に分かれる
④ガイドライン作成
・セッションを開催する
⑤ガイドラインダイジェスト版の英訳化
⑥大規模臨床試験の後援
⑦レジストリ
⑧留学支援助成
⑨国内交流に関する事業
(日本循環器学会|報告事項1.2016年度事業報告)

現実的に個々の技術・知識の底上げを行いながらも、下記のビジョンを掲げ、現実とビジョンの張力である「創造的緊張感」を高めることを学ぶことによって、よりよい選択をするような能力を伸ばし、自ら望んだ結果をより多く生み出している。

【日本循環器学会の持つ使命】
学会報告や論文発表だけでなく、若い人たちの士気の高揚(助成)、循環器病に関する研究の推進、およびその予防に努めることが挙げられている。さらに、新しい情報を一般の臨床医に伝達することの重要性が強調された。最後はこれらの使命を達成することは一人循環器を専攻する医師に利するだけのものではなく、社会全体に幸福がもたらされることになると結ばれている。(日本循環器学会|設立理念)

立ち戻って、学習する組織の要素で観察してみる

学習する個人がいる個々の医師は、継続的に内省し、話し、再考することによって、行動や意思決定において自らコントロールする能力を高めることができるようになります。態度と認知への気づきの状態を広げ、発達させることができる。

共有ビジョンを掲げる
【日本循環器学会の持つ使命】を掲げ、個々の医師がのビジョンをつくり出すようにメンバーをたえず励ましています。個々の医師が、自らコミットメントを高め、相互に影響しあっている。

固定観念に気付く
「内省」と「探究」を繰り返し、自分たちが「どんなメンタモデルを持っているのか」を自覚することが「学習する組織」には、求められている。

チーム学習、フィードバックループ(システム思考)が継続的にされる
チームが学習し、組織のいたるところに学習に対する縮図ができる。えられた洞察は行動に移される。また開発された技術は、他のチームに普及される。

システム思考という土台がある
人間の身体は「複雑なシステム」ですが、どんな病にどんな治療が効くのか、どんな予防で防げるのか、そのパターンを学習することで「構造」が明らかになる。
「どうすれば、症状を取り除くことができるのか?」を「構造」的に見抜くことで、問題解決をシンプルにすることができるようになる。

このように「学習する組織」を提唱した概念(1970年代にハーバード大学教授クリス・アージリス)の解説も照らし合わせると、日本循環器学会は、

”学習と成長の意思を有する人(医師)に成長のチャンスを与え、自らも学習して進化する組織

である。


興味深いのは
85年間、運営されて続けている
・現在18代目の代表理事
・代表理事が交代しても熱量は変わらず、広がり続けている
・学術集会の発表形式は「口述」または「ポスター」があり、ポスターは若手でも採択されやすい。ポスター→口述と段階があるため、口述の狭き門に戦闘力のレベルが明らかに違う人と同じ戦場で戦う必要もない。きちんと仮想戦闘ができる。(とはいえ、フォロワーシップが高い組織でもあるので、戦闘にはなりにくい)
・学会の公用語は英語。だが、組織的なフォローアップもある。
学会は、学術集会で行われる演題の大半を、ディスカッションも含めて英語で進行するように求めている
・地方会も学会と同等レベル(学会をピラミッドの頂点と置いたヒエラルキーをあまり感じない)

若手も熱量が高い(コミュニティにコミットしている)

これほど古くから運営されている「学習する組織」のコミュニティは珍しく思い、引き続き調査をしてこうと思います。


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