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吹上御所に設置された、ソニーの隠れた開発品 〜 天皇陛下の 『トランジスタ・インターフォン』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (49)

宮内庁とソニーの関係は古く、ソニーが東京通信工業の時代から国産初、または世界初の製品が開発されると昭和天皇皇后両陛下、皇太子殿下、皇族の方々が会社を訪問され、見学をされていかれることが多々ありました。

こういった背景から、1961 (昭和36) 年、東京通信工業 (現ソニー、以下 東通工)の技術者・木原信敏は、宮内庁から

「天皇皇后両陛下と侍従、女官を結ぶ使いやすいインターフォンを」

との依頼を受け制作を開始します。

ソニーは世界で最も新しい機械を作ることができるのだからということで、宮内庁から、天皇皇后両陛下と侍従と女官を結ぶ使いやすいインターホンを作ってほしいと依頼がありました。

ソニー技術の秘密』第3章より

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トランジスタ活用の一つとして3ヶ月程度で完成。同年6月に自ら吹上御所に向かい、両陛下の寝所に自身の手で設置します。

インターフォンはハウリングを起こしやすく、ハウリング防止のため、
ボタンを押す間通話可能なプッシュトーク方式になっていました。

木原の開発した製品はいくつか献上されており、日本初のテープレコーダー『G型』は1950 (昭和25) 年5月に、同様に1957 (昭和32) 年には皇太子殿下に『TC-552』ステレオレコーダーが献上されています。

1955 (昭和30) 年にはソニー創業者の一人・井深大が海外視察より持ち帰り、木原の手により開発された「ステレオ音響」機器の素晴らしさを体験されたいと、三笠宮両殿下、高松宮両殿下も東通工の試聴室まで訪問されていました。

木原はその後も、毎年晴海で開催されていた「エレクトロニクス・ショー」で10年近くに渡り、皇太子殿下に最新の開発製品の説明をおこなう役目を務めていました。

テープレコーダーやVTRといった大きな成果を残した機器が話題にはなりますが、木原の開発した機器には、製品化にはならなかったものも多数あり、木原はこうした隠れた製品の開発があったからこそ日本初や世界初の製品を誕生させられたと、若きエンジニアたちによく語っていました。
この「トランジスタ・インターフォン」もその一つだったのです。

文:黒川 (FieldArchive)


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