マガジンのカバー画像

「ソニー技術の秘密」にまつわる話

61
ここでは、ソニー株式会社の研究技術開発の要を果たし、「ソニー創成期の基礎技術」を確立させた 木原信敏 (きはら のぶとし) の著書『ソニー技術の秘密』に記された研究開発の歴史を振…
運営しているクリエイター

#NHK

ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者が残した名著 〜 『ソニー技術の秘密』 にまつわる話を

■ ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者1946年 (昭和21)年に井深大、盛田昭夫により創設され、現在では世界的な大企業としてその名を世界に轟かせている ソニー株式会社(Sony Corporation) その創業期より数々の「世界初」「日本初」の製品を誕生させ、ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者がかつて存在していました。 1950 (昭和25) 年に発売された、国産初のテープレコーダー『G型テープコーダー』。 1955 (昭和30)年に、ト

ソニー創業者井深大の欧米土産、感激を味わったステレオ録音 ~ 日本初の2chステレオの生録のお話

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (20) 今では当たり前のように私たちの生活に浸透している技術も、半世紀以上前の日本ではそのほとんどが存在していませんでした。例えば、ステレオ。今では音響と名の付くものでステレオでないものはありませんが、日本で初めてステレオ録音が実施されたのは1952 (昭和27) 年のことでした。 1952 (昭和27) 年4月、 東通工 (現ソニー)で開発していたテープレコーダーの輸出に伴い、欧米の新しい技術情報を視察調査するため、同年3月より約1カ

世界初! NHKによる立体放送番組スタート 〜 全国一斉二元立体(ステレオ)ラジオ試験放送

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (23) NHKが1952(昭和27)年に放送した世界初全国一斉の『二元立体 (ステレオ) ラジオ試験放送』は、同年12月4日〜6日の深夜12時35分から、NHKの第1、第2放送の2つのチャンネルを使用した放送を、同時に聴くことで立体 (ステレオ) 録音を体験するというもので、「ステレオ音響」が一般に浸透するきっかけとなった放送でした。 この放送に使用されたのが、アメリカ視察旅行中だったソニー創業者の一人井深大から依頼され、東通工 (現ソ

足踏みを余儀なくされた "時期尚早?" なVTR開発 〜 日本初のVTR試作実験

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (25) 1950 (昭和25) 年頃、NHKではテレビジョンの研究が進められており、定期実験放送として試験電波が発射され、国内の愛好家たちは自作のテレビを作り、この試験電波を受信して楽しんでいました。 国産初のテープレコーダーを完成させた、東通工 (現ソニー)の技術者・木原信敏もその一人でした。 そんな木原が、VTRの開発を思い立ったとしても、不思議なことではありませんでした。 テープで音が記録できるんだから、 映像だって記録できな

自作の受像機 (テレビ) で試験電波を受信 〜 トランジスタ開発の進歩で実現したマイクロテレビ 『TV-8-301』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (26) ソニーの一時代を築いたテレビといえば、まず1967年に誕生した『トリニトロン(Trinitron) 』。そしてその30年後には『WEGA (ベガ)』の愛称で販売された平面ブラウン管『FDトリニトロン』などがありました。 現在も大きなシェアを持つ、ソニーのテレビ製品開発のスタートは、東京通信工業 (現 ソニー、以下 東通工) の技術者・木原信敏の手による自作の受像機 (テレビ) がきっかけでした。 1950 (昭和25)年頃、N

NHK『私の秘密』に出演、回答者を悩ませた音響学会の常識を破る不思議な耳

「ソニー技術の秘密」にまつわる話 (33) 国産初のテープレコーダー『G型』の開発をはじめ、ステレオ音響の実験、そして日本初のトランジスタラジオ『TR-55』の開発と、東京通信工業 (現 ソニー、以下 東通工) で様々な研究開発を続けていた技術者・木原信敏は、実は変わった耳の持ち主でした。 1955 (昭和30) 12月6日、木原の聴覚が、 「音響学会の常識を破る不思議な耳」 として、産経時事新聞夕刊に掲載されます。 これは、木原の聴覚が通常の普通の人とは異なり、超音

放送局用大型VTRの概念を覆し、東京オリンピックでも活躍! 〜 世界初オールトランジスタ小型VTR 『PV-100』

「ソニー技術の秘密」にまつわる話 (38) 世界初、世界最小のオールトランジスタVTR『SV-201』を完成させたソニーの技術者・木原信敏は、ヘリカルスキャン (ヘッドが、らせん状に走行しながら記録/再生する方式) が、これからのVTRの記録には最適であると『SV-201』の開発から確信した木原は、『1.5ヘッド記録』を考案します。 VTRの回転ヘッド方式は既に諸外国で様々な特許が存在しており、テレフンケン社の「アルファ巻きシングルヘッド方式」は東芝でも採用され非常に優れ