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ソニー創成期を辿る史料

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世界的企業となったソニー創成期を辿る、おすすめの史料をご紹介。
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2020年11月の記事一覧

日本の磁気記録技術の開発史の決定版! 〜 『日本の磁気記録開発 - オーディオとビデオに賭けた男たち』 中川靖造 著(ダイヤモンド社 1984)

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (56) 企業戦略の視点から、日本における磁気記録技術の進歩の歩みを辿ったドキュメンタリー作品。 著者は、週刊誌や月刊紙の取材記者として活躍しフリーライターとなった中川靖造 (なかがわ やすぞう) 。 本書の他にも『次世代ビデオ戦争』、『日本の半導体開発』や『海軍技術研究所』といった日本の科学技術関連の著書をいくつか残されています。 「裾野の広い磁気記録開発史からみれば、ほんの一側面でしかない」 と、著者本人が語っているとはいえ、お

SF作家 星新一によって描かれたVTR普及後の未来の話 - 『ビデオコーダーがいっぱい』 星新一著(SONYニューズ 1965)

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (50) 一般家庭にビデオを普及させていくという思いからコンシューマ・ビデオ(Consumer video) の略から「CV」と名付けられ、数々のコストダウンのアイディアと、それらを組み合わせた努力により、ソニーより世界初として誕生した家庭用ビデオテープレコーダー『CV-2000』。 このVTRが発売された翌年1965 (昭和40) 年1月に、ソニーの社内向け冊子『SONYニューズ』No.85にこの『CV-2000』をテーマにした「ち

日本を代表する企業の創業者・経営者達の原点に触れ「真の教育」を問う 〜 『情熱の気風 - 鈴渓義塾と知多偉人伝』 二宮隆雄 著 (中部経済新聞社 2004)

平成15 (2003) 年から平成16 (2004) 年にかけて、335回にわたって中部経済新聞に連載され大きな反響を得た、歴史小説家、時代小説家の二宮隆雄 (にのみや たかお、1946 - 2007) による『情熱の気風 ~鈴渓義塾と知多偉人伝~』では、多くの知多半島出身の企業創業者や経営者、経済人、教育者などの偉人たちの物語が紹介されていますが、中でも特に注目される箇所は、トヨタ自動車、ソニー、敷島製パン (Pasco) の創業期を探り、この三大企業の切っても切れない深い

ソニーフロンティア精神の象徴〜「モルモットの精神」を持つ「金の卵を産むニワトリ」が産んだ 『ビデオムービー』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (43) 1958年 (昭和33) 年8月17日の『週刊朝日』に、ソニーの後から出発したが、今ではトップのトランジスタメーカーとなっていると、東芝のトランジスタ工場を紹介する際、 「なんのことはない、ソニーは東芝のためにモルモット的役割を果たしたことになる」 『週刊朝日』1958年 (昭和33) 年8月17日号より と、「初めてトランジスタをラジオに使用する冒険、それに伴う犠牲はソニーに任せて、成果の方は大資本の方で頂戴する」という意

技術立国日本の基盤を作った技術者たちの開発物語 〜 『電子の世紀』 林芳典 著 (毎日新聞社 1966)

「ソニー技術の秘密」にまつわる話 (41) 1965 (昭和40) 年11月より、100回に渡り毎日新聞紙上で連載された『電子の世紀』は、技術立国日本の基盤を作った技術者たちの開発物語を紹介し、1966 (昭和41) 年5月に書籍として発刊されました。 著者の林芳典 (はやし よしのり) は、毎日新聞経済部の財界担当記者で、自身でも「科学技術には縁遠い」と語っていますが、この本については「技術上の記述が正確なのには感心した」と専門家からお墨付きをもらったエピソードが残って

「遠慮のない批評」で綴られたソニー経営史研究のバイブル 〜『S社の秘密』 田口憲一 著 (新潮社 1962)

「ソニー技術の秘密」にまつわる話 (37) 1962 (昭和37)年10月に発売された書籍『S社の秘密』 は、おそらく最初のソニー経営史研究本で、その後ソニーについて語られる多くの関連書籍の「参考文献」には、必ずというほどリストされている本でもあります。 著者は、産業経済新聞の論説委員を務めた、経営評論家の 田口憲一(たぐち けんいち)。 あとがきに自身で書かれているように、「遠慮のない批評」でやや辛口な印象を受けますが、とてもニュートラルな視線でソニーの販売面での分析