見出し画像

【FIDFF2020特別プログラム】中村哲医師 追悼上映会レポート

2019年12月4日、長らくパキスタン・アフガニスタンで診療所の運営や用水路建設などの活動を行っていた医師・中村哲さんが不意の襲撃によって亡くなりました。

中村医師が福岡出身であること。映画祭の開催期間が一周忌に近いこと。そして長年に渡り、日本電波ニュース社の谷津賢二さんによって多くの映像記録が残されていること。中村医師の活動が、国や国連の事業とは異なり、多くの民間人の支持と協力をベースに行われた「インディペンデント」なものであったこと…

などを鑑みて、福岡インディペンデント映画祭は谷津賢二さんによる映像作品『アフガニスタン 用水路が運ぶ恵みと平和』を上映し、中村医師と関わりのある方を招いてトークセッションを行う追悼上映会を11月21日(土)に企画しました。

ペシャワール会(以下、PMS)、そして実際にアフガニスタン現地で働かれていた川口拓真さんのご協力によって、この企画は実現できました。重ねて感謝申し上げます。

画像1

折しもこの日は、熊本の川辺川ダムの建設再開が決まり、九州では大きなニュースとなったタイミング。作中、現地の事情をよく考慮して、福岡の人々が持つ伝統工法を取り入れつつ困難な治水・用水路建設を進める中で出てきた中村医師の「欲望と安全は両立しない」という言葉が、より一層重く響きました。

上映後は、情勢が最も厳しかった2002年から2005年にかけてパキスタン、アフガニスタン両国でワーカーとして活動に参加していた川口拓真さんのお話へ。今年フジテレビ系列で放映されたドキュメンタリー『カカ・ムラド~中村哲の信念~』にも出演されています。

2001年のアメリカ同時多発テロ後、アメリカを中心に「対テロ戦争」が叫ばれていた時に中村医師の言葉、著作に触れたことで、ワーカーになることを決意した川口さん。実際に現地で行動を共にしていた時も、中村医師は年下のワーカーたちにも敬語で接し、決して強く命令するような事はせず、常に一緒に考える姿勢だったそうです。

画像5

常に真っ直ぐな眼で、落ち着いて真摯に話される川口さんの言葉と雰囲気に、会場も普段の上映とは異なる張り詰めた雰囲気に。

画像3

「中村医師が亡き今、私たちにはどのような事ができるでしょうか?」という問いに、川口さんは「まずは著作などを通じて、中村先生の言葉に触れて、何かを感じて考えてください」と…。

画像5

質疑応答では佃尚能監督(『万置き姉弟』)が挙手してくださるなど、今まで中村医師やPMSの名前は知っていても活動を詳しく知らなかった…という方にとっては、新たに知る事が多く有意義な時間だったという感想も聞かれました。

画像5

FIDFFでは今後も、福岡・九州にゆかりのある人や作品にスポットを当てる企画を継続する予定です。中村医師に関するドキュメンタリーの上映や放映も各所で続いているので、今回参加できなかった…という方も、ぜひ機会を見つけて中村医師の思いと行動力にぜひ触れてみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?